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想いの矛先

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 そんな中、思いがけず連絡先を交換するに至った人物がいた。年齢は亜純よりも2つ年上で、結婚経験のない男だった。
 パッチリとした二重の大きな目が特徴的だった。笑った時の歯並びが綺麗で、笑顔も優しそうに見えた。

 身長も175cmはあるように見えた。スラリとスマートな佇まいから、他の参加女性達が群がっていたが、なぜか亜純の姿を見つけて彼はやってきた。

「話しかけてもいいですか?」

 ちゃんと断りを入れてくるところに好感が持てた。

「はい。でも、いいんですか? 皆さん……」

 群れから抜けてきた様子の彼を恨めしそうに見つめる女性たち。亜純は特に興味はないし、興味がある人同士で話したらいいのに……と冷たい視線を向ける女性たちを見つめた。

「ええ。少し疲れてしまいまして……」

 そう言って男は苦笑する。亜純は、わざわざこんなところにこなくても、彼女くらいいそうなのに。そう思いながら、手に持ったワインを一口飲んだ。

「こういったところは初めてですか?」

「はい。興味はあったんですけど、あまり人が多いところは得意じゃなくて」

「わかります。知らない人がたくさんいると圧倒されてしまうというか」

 亜純も何人かの男性と話して疲れを感じていたため、そう言ってクスリと笑った。

「あなたも初めてですか?」

「はい。職場の先輩に誘われてきたんです」

 そんな話から、相手の参加理由へと移る。職場には既婚者が多く出会いがないことや、今まで仕事ばかりに夢中であまり恋愛をしてこなかったこと、周りがどんどん結婚していってそろそろ恋愛に興味を示し始めたことを話した。

 男は不動産関係の仕事をしていて、経済的にも将来性も安定しているように思えた。話しやすく人柄もよく、亜純には好印象だった。
 だから連絡先を聞かれ、初めて交換する気になったのだ。
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