139 / 243
想いの矛先
21
しおりを挟む
帰りの電車内で美希は嘆いていた。散々悩んで選り好みした挙句、誰とも連絡先を交換することなくパーティーは終了を迎えたのだ。
亜純が連絡先を交換した新井悠生にも何度か声をかけたが、周りの女性たちに阻まれ、大した会話もできないまま諦めることになったのだ。
「亜純先生は運がいいよ! あんなイケメンの金持ちを捕まえるなんて!」
美希は悔しそうに歯を食いしばった。亜純は苦笑しながら「本当に運といいますか……でも捕まえると言っても連絡先を交換しただけで、この先また会うかどうかもわかりませんし」と顔の前で手を左右に振った。
土曜日の夜とあって電車内は人がたくさんいた。亜純たちの声も走行音で抑えられてはいるが、周りに会話が聞こえているであろうことは間違いなかった。
チラチラと視線を感じながら、亜純は居心地の悪さを感じる。依と付き合ってそのまま結婚した亜純には、恋人探しの経験もなければ婚活の経験もない。
世の女性たちはこんなふうに誰かの視線を気にしながら、恋愛について会話をしなければならないのかと息をつく。
「何言ってるの! 自分から誘わなくてどうするのよ。チャンスはいつでも向こうからやってくるわけじゃないんだからね。自分で掴みにいかなきゃ!」
逞しい美希に圧倒されながらも亜純は思う。考えてみれば真白に薦められるがままに依と付き合い、依主導で恋人関係を続け、依のタイミングで結婚をした。
真白と依によって仕組まれた恋愛だと言いながら、自分からは何1つ行動していなかったことに気付く。
「自分から……ですか」
「だって亜純先生って初めての彼氏が前の旦那さんでしょ? しかも相手からの猛アプローチ。それって、自分から告白したこともないんでしょ? すっごく緊張しながら好きって伝えることも、振られて泣くこともないまま今に至ると」
「まあ……はい」
「それって幸運なことだけどさ、傷つかないし。でも、色々経験不足だよね。まあ、亜純先生はこれからそれらを経験すればいいだけの話だけどさ」
美希に悪気はないが、亜純には少し思うところがあった。運がいい、恵まれている、傷付くことを知らない。そんなふうに他人に言われても、離婚する原因を知った時には誰よりも傷ついた自信があった。
亜純が連絡先を交換した新井悠生にも何度か声をかけたが、周りの女性たちに阻まれ、大した会話もできないまま諦めることになったのだ。
「亜純先生は運がいいよ! あんなイケメンの金持ちを捕まえるなんて!」
美希は悔しそうに歯を食いしばった。亜純は苦笑しながら「本当に運といいますか……でも捕まえると言っても連絡先を交換しただけで、この先また会うかどうかもわかりませんし」と顔の前で手を左右に振った。
土曜日の夜とあって電車内は人がたくさんいた。亜純たちの声も走行音で抑えられてはいるが、周りに会話が聞こえているであろうことは間違いなかった。
チラチラと視線を感じながら、亜純は居心地の悪さを感じる。依と付き合ってそのまま結婚した亜純には、恋人探しの経験もなければ婚活の経験もない。
世の女性たちはこんなふうに誰かの視線を気にしながら、恋愛について会話をしなければならないのかと息をつく。
「何言ってるの! 自分から誘わなくてどうするのよ。チャンスはいつでも向こうからやってくるわけじゃないんだからね。自分で掴みにいかなきゃ!」
逞しい美希に圧倒されながらも亜純は思う。考えてみれば真白に薦められるがままに依と付き合い、依主導で恋人関係を続け、依のタイミングで結婚をした。
真白と依によって仕組まれた恋愛だと言いながら、自分からは何1つ行動していなかったことに気付く。
「自分から……ですか」
「だって亜純先生って初めての彼氏が前の旦那さんでしょ? しかも相手からの猛アプローチ。それって、自分から告白したこともないんでしょ? すっごく緊張しながら好きって伝えることも、振られて泣くこともないまま今に至ると」
「まあ……はい」
「それって幸運なことだけどさ、傷つかないし。でも、色々経験不足だよね。まあ、亜純先生はこれからそれらを経験すればいいだけの話だけどさ」
美希に悪気はないが、亜純には少し思うところがあった。運がいい、恵まれている、傷付くことを知らない。そんなふうに他人に言われても、離婚する原因を知った時には誰よりも傷ついた自信があった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる