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想いの矛先

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 またあんなふうに傷付くくらいなら、もう恋愛はしなくていいかもしれない。そう思う一方でそのままにしたら子供を授かる未来はない。それならどうして依と別れたのかと矛盾する。

 仕組まれた恋愛ではなく、自分の力で恋愛がしたい。そう思ったくせに、いざできる環境になったらどうやって進めていいかわからなかった。

 帰宅すると、悠生から連絡が入っていた。

『先程はお話してくださりありがとうございました。今度食事でもどうですか?』

 自分から行動を、と思っていた矢先に彼からの誘いだ。依に初めて2人でのデートに誘われた時のことを思い出した。
 毎回依が行きたいところを決めて、そこへ行った。依は亜純にどこへ行きたいかと尋ねたが、友人と遊ぶ時だって誰かの後についていくことが多くどこへ行きたいという願望がなかったからだ。

 何を食べたい、誰と行きたいは選べてもどこへ行きたいかは中々難しい。そんなふうにいつだって誰かに任せて自分から何かを計画したこともなかった。

『こちらこそ先程はありがとうございました。お食事のお誘い嬉しいです。是非お願いします』

 無難な返答しかできなかった。自分から「それなら○○はどうですか?」などと話を広げるべきだったか……とも考えたが、亜純にはそんなに器用なこともできなかった。

『早速お返事ありがとうございます。では、オススメのお店があるので、亜純さんがよければそこへ行きませんか?』

 亜純の心配をよそに、トントン拍子で話が進む。彼はスマートにデートの日程まで組み、その日の内に後日の約束を取り付けたのだ。

「すごい……デートの約束ができた」

 亜純はカレンダーアプリに日程を入力しながら、少し感動を覚えた。依とどんなふうにデートをしていたのか思い出すのも時間がかかるが、依以外の男性とこんなにも自然と日程が組めるとは思っていなかった。
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