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それぞれの生活

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「どうしようって心配してたから、上手くいったならよかった。いい人そうだし、次のデートも楽しいといいね」

 千景がそう言ってくれたから、亜純はきっと次回も楽しめると思えた。
 千景との電話を切った後は、悠生とメッセージのやり取りをする。最初の頃よりもお互いレスポンスが早くなった。

『次に亜純ちゃんに会うのが楽しみ』

 いつもの間にか敬語がとれて、名前もちゃん付けになった。なんて呼んだらいいかなって話から亜純は「ゆうくん」なんて呼んだりして。

 依も千景も周りの友人が皆呼び捨てだったものだから、亜純も自然と呼び捨てだった。早くに結婚したから、依以外の男性を名前で呼ぶこともほとんどなかった。

「ゆうくん……」

 名前の呼び方さえ新鮮で呼ぶ度にふふっと笑みがこぼれた。次のデートまであと1週間もあるとカレンダーアプリを何度も見直してはメッセージのやり取りを遡って読み返したりする。
 亜純の仕事中に『休みだったからカフェ行ってきた』と持ち帰り用のポータブルコーヒーカップを持った悠生の自撮り写真が送られてきていた。

 写真で見る悠生は、生で見るのとは少し違うが会えない間のお楽しみだと思うとまたそれを何度も見返した。
 写真フォルダの中にこっそり保存したりして、仕事の休憩中にも開いて見る。
 整った容姿の彼は、亜純に微笑んでいるようにも見えた。

 次のデートはドライブに誘われている。車の写真も送られてきて、亜純が見ても高級車だとわかる。
 やっぱりお金持ちなんだなぁ……と驚きながらもどこかワクワクしている。

 元々は相手の経済力などそんなに興味はなかった。贅沢が好きなわけでもないしブランド物も特に気にならない。
 それなのに自分が知らない景色を知っている人間というのは不思議と魅力的に見えるのだ。
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