したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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愛情は感じるもの

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「私こそ……都合のいい時ばかり頼ってごめん……」

 本来なら全て自分で解決しなければいけなかった。いい大人が騙されたのだから全て自己責任だ。それを美希にも千景にも助けられてしまった。
 自分で責任が取れないことはするべきじゃない。そうわかっていたはずなのに。彼氏ができた途端、千景へ連絡することもパッタリやめてしまっていたのに、自分が困った時ばかりこんなふうに連絡してしまった自分が卑しく感じた。

「そんなこと言わなくていいよ。俺と亜純の仲じゃん。依の時だって相談してくれて嬉しかったし。何の連絡もなしに亜純にもしもの事があったら、その方が悲しい」

 千景の顔は見えないが、声は穏やかで優しかった。怖がる亜純をこれ以上傷付けないよう配慮してくれているのが伝わるようだった。

「ありがとう……。この音声持って警察に行こうと思うの」

「うん。それがいいよ」

「千景……」

「ん?」

「……凄く情けなくてかっこ悪い話なんだけどね」

「うん」

「今日あったこと聞いてくれる?」

 亜純はようやく千景に全てを話す決意ができた。同性の美希に話すのには抵抗のなかったことも、千景には言い難い。それでもこうして今傍にいてくれるのは千景なのだから、亜純が暴力を振るわれた経緯について知る権利はあると思った。

 そして何より、このことを千景に隠し通しておく方が心が窮屈になってしまうような気がした。

「話してくれるの?」

 千景はそう言いながら亜純の背中をゆっくり撫でた。落ち着きを取り戻すため、サポートしてくれているようだった。
 千景は決して無理に何かを聞き出そうとはしない。その優しさが亜純の背中を押した。

 だから亜純は少しずつお金の違和感と、今日の出来事について話すことができた。産科に行こうと思っていることも、車検証と音声データを持って警察に行くことも、他にも被害者がいることを美希から聞いたことも。

 千景は時折相槌を入れたが、質問は後回しにしてとにかく亜純が最後まで話すのを待った。とてもゆっくり流れた時間だったが、亜純にとっても千景にとっても必要な時間だった。
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