したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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新しい風

07

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 千景が亜純とキスをした時、亜純への思いが固まった気がした。ハッキリと亜純のことが好きなのだとようやく気付けた。
 それを痛感した今となってはどうして今まで自分の気持ちに気付かなかったのか不思議でたまらなかった。

 真白に亜純と付き合う気はないかと尋ねられた時、絶対にそんなことはありえないと本気で思ったし、亜純に彼氏ができてもそれが自然なことだと思えた。
 それなのに、思い返してみれば高校時代に背中を押してくれた亜純のことがずっと気になっていたのだ。依の好きな人だからと思って女性として見ないように努めていただけで、きっと自分は随分前から亜純のことが好きだったんだろうと自覚した。

 だから依とのことで悩んでいた亜純に本気で相談に乗ったし、依と亜純をくっつけた真白に憤りを感じたし、悠生のことを嬉しそうに話す亜純の言葉に複雑な感情を抱いた。

 もっと早く自分の気持ちに気付いていたら、亜純が悠生のことを好きになる前にアプローチできたのに。千景はそんなことも思ったが、亜純が自分自身で恋愛をして、こんなふうに失敗しなかったら自分に振り向いてくれなかったかもしれないとも思えた。

 こんな身近で済ますのは嫌だ。そう言いそうな気もするし、依と上手くいかなかったからじゃあ千景でっていうのは違う気がする。そう言いそうでもある。
 
 千景は野菜を刻みながら、ソワソワしている亜純を見て目を細めた。自分を意識してくれていることが伝わってきて嬉しくなったのだ。

 俺は依みたいにしつこく追い回すことはできないし、一度上手くいかなかったら亜純との関係はそこで途切れてたかもしれないな。
 きっと今だから亜純は俺を受け入れてくれたんだよね……これがタイミングってやつなら、気持ちに気付いたのが昨日でよかったのかも。

 千景も亜純と同じことを考えていた。結果的に遠回りになったが、これでよかったのだと双方が思えた瞬間だった。
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