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3.学園②
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入り口の扉から入ってきた教師が魔法学実践第一教室の教壇に立ち、おもむろに不思議な水晶を取り出した。以前授業で習った判定の水晶だろう。
「では、これから魔法学の授業を始めます」
教師の言葉に、全員が席に座ったまま軽く頭を下げた。
「これから、魔法適性を調べていきます。呼ばれた者は前に出てくること」
教師がそう言うと地味なローブを着てフードで顔を隠した人物がすっと教室の端にある教卓の前に腰掛けて、ファイルを広げた。
(魔法塔の証持ち……)
一番前の席から、ローブの人物の胸につけられた証が見える。それぞれの塔にはそれぞれの証があり、色や石で階級が解るようになっている。あれは、それなりに高位の証だ。
判明した適性を確認し、記録するために居るのだろう。
「では、まず――」
二十人しか居ない教室の最後の席から呼ばれた。成績の逆順で呼ぶのは、成績上位者ほど特殊属性が出やすいという配慮もあるだろう。エリートばかりの通う学園ならではのものだ。
魔力を持つ者が水晶に触れると、強さによって属性の色が濃く現れる。複数属性を持つ者はマーブルのように色が浮かび上がる。判定内容は本人にしかわからないし、学園といえども問いただすことはできない。家ごとの秘匿であったり、身分の低い者が高い者から無理矢理雇用契約を結ばれたりしないようにするための厳しい決まりがあるのだ。だからこそ、決まりの隙を突いて学園側が把握するため、その濃さを専門家が判定するのだ。
時々特殊属性持ちが出て、水晶の上を雷が走ったり、不思議な音楽が流れてきたり、奇妙な香りが漂ったりしたが、概ね順調だった。
「次、ナナ」
「はい」
教師に呼ばれたナナは、ウキウキと教卓へ向かった。
「では、手をかざしなさい」
「はい!」
ぺたりとナナの手がひんやりした水晶に触れた途端、濃い白とどす黒いとも言える赤が現れた。
「……濃いな」
「濃いですねー」
思わず漏れた教師の呟きに、ナナは頷いていた。今まで見た赤よりも濃く、もはや黒に近い。白もペンキのようにもったりとした濃さだ。
ローブの人物が頷いたのを見て、教師はナナを席に戻した。口元が若干引きつっているように見える。フードの人物は猛然と何かをファイルに書き込み、ふうっと息を吐き出して教師を見やった。
「では、最後にイオリティ・カスリットーレ」
「はい」
戻ってきたナナと笑みを交わし、イオは立ち上がって教卓へ向かった。
「では、手をかざしなさい」
「はい」
散々見たやりとりに、特に何も考えず手をぺたりと水晶にのせた途端、見えないエネルギーの波動がぶわりと教室に放たれた。
そして水晶は輝く金に染まる。
目を開けていられない程の輝きに顔を逸らし、ローブの人物を見ると意外と若いその顔は驚愕に染まっていた。
目がこぼれそうなほど開かれ、口はぽかんと開いている。
本来は整った顔立ちなのだろうが、あまりにも間抜けな表情が残念に思われる。
「……えーと」
イオが困ったように声をもらした途端――
『無属性創造魔法と光魔法』
無機質な声が頭に響いた。これが『判定』。本来、自分の属性を判定しなくとも、魔法を使ってみれば解るようになるとは言え、不発や暴発の危険が伴うし、特殊属性は解りづらい。
簡単に属性や強さが解るこの『判定』は非常に便利で安全である。
こほん。
固まっていた教師からわざとらしい咳が聞こえ、席に戻れと言われた。
(何、無属性創造魔法って……)
いや、使い方だとか特徴は判定の声が聞こえたと同時にうっすら理解した。どういう仕組みか判定にはそう言った理解を促すこともできるのだ。問題は、聞いたこともない特殊属性だと言うことだ。特殊と付けども他の属性は前例もあり、塔によって系統立てて研究されている。その研究についても授業で学んだはずだった。
だが、無属性はともかく『創造魔法』など初耳だ。
(なに、どういうこと?転生チートってやつ?いやいやいやいやいや、前世の記憶なんてほとんど覚えてないし。なんとなく、こんなだったなーっていうくらいしか無いのに、唯一まともに固有名詞と内容覚えてたのシンデレラくらいだって言うのに。どういうこと?もともと公爵家は王家や英雄の血筋だから、その遺伝?)
久々に令嬢らしからぬ口調で脳内を混乱させながら席に着くと、後ろからキラキラとした眼差しを向けられた。
「すごいですね、イオリティ様!めっちゃ金でしたよ」
潜めた声で叫ぶという器用なことをしながらナナが興奮した顔を近づけてきた。
「あなたこそ、ものすごく濃い色だったわね」
「本当にびっくりです。火炎魔法なんて伝説だと思ってましたー」
「!」
さらっと小声で告げられた内容に、心臓が止まるかと思った。回りはそれぞれ興奮して話をしているようで、こちらの会話に耳を澄ませている様子は無い。
火魔法とその上位の炎魔法。そのさらに上位の伝説級の魔法が『火炎魔法』。確か、三百年ほど前に確認されたのが最後で、そのときが四代目だと言われている。
「五代目って呼んでもいいかしら」
からかうように囁き返すと、ナナはにんまりと笑った。
「それなら、イオリティ様は三代目ですね」
どこのスケバンだ、とは突っ込まない。
光魔法も確認されたのが建国初代王家の姫と、五百年ほど前の聖女と呼ばれた存在のみ。どちらも水晶での判定はしておらず、自分が初めてのはずだ。
(この世界、もしかしたらシンデレラの素になったところかと思ってたけど、違う?)
教室内の視線が集まっているのは、気のせいでは無いだろう。金色のおかげで最初の波動――無属性創造魔法は忘れ去られているだろうから、今後のことを考えても切り札として残しておきたい。
そんな物騒なことを考えて、ため息が漏れた。
この結果は王宮にも伝えられるだろう。ごく一部の重鎮にしか伝えられないとはいえ、我が身の行く末にそこはかとなく不安を感じる。
「イオリティ様と雇用契約を結んどいて良かったです」
ナナはそう言うと、にかっと笑った。
仲良くなってからしばらくして、ナナは自分がかなりの魔力持ちだと気づき、さらにイオの身分を知ってからすぐに専属契約を持ちかけた。元々の夢を叶えるためと、もし将来就くのがイオと仲の悪い貴族や疎遠な職場だったら嫌だ、という理由と保身のためだ。
「腕輪を堂々と身につけることにしますねー」
カスリットーレ公爵家所属――さらに、イオリティ専属である印が刻まれた腕輪である。
「あと、一応、炎魔法ってことにしときたいですね」
面倒だから。
「そうね。それがいいわ」
(相変わらず、賢いのね。状況判断が的確だわ)
ナナの呟きに頷いたイオは、改めてその賢さを痛感した。
もし、火炎魔法だと国にばれたら……。そして、自身も明らかな光魔法の使い手で、その自分に火炎魔法の使い手が従っているとなれば、王太子妃候補の天秤はこちらへ一気に傾く。
朝廊下ですれ違ったサンドレッド・コンタスト伯爵令嬢の姿を思い出し、イオはそっと息を吐き出した。
先日、父親が二度目の航海に出たと聞いたが、そのためか少し草臥れた雰囲気を漂わせていた。父親が居なくてさみしいのか、家庭が落ち着かないのか、王太子妃教育が大変なのか、理由ははっきりとわからないけれど無邪気さや可愛らしさに陰りが見えた。
放課後のお茶会を思うと、ずっしりと重い何かがお腹の底に降りてくる。
「さて、今後の授業の進み方だが――」
話し始めた教師の方に鈍い動きで視線を向けた。楽しみだったはずの授業なのにと、がっかりしたのは仕方が無い。
今後の授業は各属性に分かれて自分の能力の確認と、研究テーマを決めて取り組むことになるらしい。特殊属性は指導教師が居ないことがほとんどなので、自己流を確立することからになる。過去に出現した属性で資料が残っていたとしても、個人により発現する能力は異なるため、役に立つかは解らない、とのこと。
また、魔道工学を履修する者は研究テーマを魔道工学と絡めてもかまわない、とのことだ。
今年度の魔道工学履修者は八名のみ。
「研究テーマ、決まりました?」
教室を移動しながらナナが聞いてきた。
「なんとなく、ざっくりと決まったわ」
研究テーマは、自分の今後の役に立ち且つ国民の生活の向上につながるものにしたい。……本当は、王妃を目指して国の利益になる壮大なものであった方がいいのだろうけれど。
光魔法の研究をしろと圧力がかかってきた場合のことを考えて、父親にも根回しがいるかもしれないと、魔道連絡便を緊急で送ってある。
「ナナはどうするの?」
「前々からエネルギー変換について研究したかったんですよね。せっかくエネルギーの塊みたいな力を手にしたので、これを使いこなせると色々と生活の幅がひろがると思うんです」
ナナは平民の生活を便利にする魔道具の開発を行いたいとの夢があった。イオリティにそのことを相談し、イオが将来王太子妃にならなかった場合は、魔道具工房を立ち上げて経営していくことになっている。王太子妃になった場合は、政策の一つとして魔道具の開発を進めていく予定だったのだ。
「いい活用方法を見つけられて、もっと世界的に潤うといいわね」
「ですよね。簡単なことでも手間がかからないようになれば、できる幅は広がりますよねー」
重厚な教室の扉を開きながら、ナナは答えた。
魔道工学の教室は工房も兼ねているため、蟻の巣のように作りになっている。ここに来るには、渡り廊下をかなり歩かなくてはならない。巨大な平べったい建物だ。教室中央には講義用の半球型の空間があり、天窓から明かりが差し込んでいる。入り口以外の全方位には細い廊下のようなものがたくさん生えている。その廊下からまた通路が生え、その奥が個人用の工房になっている。通路には番号が打たれ、イオリティたちの個人工房は7番目の通路に用意されるとのことだ。この通路には、701号室から720号室まで存在するらしい。危険な取り組みや広さが必要な取り組みは710号以降の番号になる。720号室に至っては、他の工房からかなり遠く、避難しやすいように外の敷地に面している。
授業はあっさりと終わった。再来週までに研究テーマを決めて、提出。その後工房を割り振る、というものだった。
「では、これから魔法学の授業を始めます」
教師の言葉に、全員が席に座ったまま軽く頭を下げた。
「これから、魔法適性を調べていきます。呼ばれた者は前に出てくること」
教師がそう言うと地味なローブを着てフードで顔を隠した人物がすっと教室の端にある教卓の前に腰掛けて、ファイルを広げた。
(魔法塔の証持ち……)
一番前の席から、ローブの人物の胸につけられた証が見える。それぞれの塔にはそれぞれの証があり、色や石で階級が解るようになっている。あれは、それなりに高位の証だ。
判明した適性を確認し、記録するために居るのだろう。
「では、まず――」
二十人しか居ない教室の最後の席から呼ばれた。成績の逆順で呼ぶのは、成績上位者ほど特殊属性が出やすいという配慮もあるだろう。エリートばかりの通う学園ならではのものだ。
魔力を持つ者が水晶に触れると、強さによって属性の色が濃く現れる。複数属性を持つ者はマーブルのように色が浮かび上がる。判定内容は本人にしかわからないし、学園といえども問いただすことはできない。家ごとの秘匿であったり、身分の低い者が高い者から無理矢理雇用契約を結ばれたりしないようにするための厳しい決まりがあるのだ。だからこそ、決まりの隙を突いて学園側が把握するため、その濃さを専門家が判定するのだ。
時々特殊属性持ちが出て、水晶の上を雷が走ったり、不思議な音楽が流れてきたり、奇妙な香りが漂ったりしたが、概ね順調だった。
「次、ナナ」
「はい」
教師に呼ばれたナナは、ウキウキと教卓へ向かった。
「では、手をかざしなさい」
「はい!」
ぺたりとナナの手がひんやりした水晶に触れた途端、濃い白とどす黒いとも言える赤が現れた。
「……濃いな」
「濃いですねー」
思わず漏れた教師の呟きに、ナナは頷いていた。今まで見た赤よりも濃く、もはや黒に近い。白もペンキのようにもったりとした濃さだ。
ローブの人物が頷いたのを見て、教師はナナを席に戻した。口元が若干引きつっているように見える。フードの人物は猛然と何かをファイルに書き込み、ふうっと息を吐き出して教師を見やった。
「では、最後にイオリティ・カスリットーレ」
「はい」
戻ってきたナナと笑みを交わし、イオは立ち上がって教卓へ向かった。
「では、手をかざしなさい」
「はい」
散々見たやりとりに、特に何も考えず手をぺたりと水晶にのせた途端、見えないエネルギーの波動がぶわりと教室に放たれた。
そして水晶は輝く金に染まる。
目を開けていられない程の輝きに顔を逸らし、ローブの人物を見ると意外と若いその顔は驚愕に染まっていた。
目がこぼれそうなほど開かれ、口はぽかんと開いている。
本来は整った顔立ちなのだろうが、あまりにも間抜けな表情が残念に思われる。
「……えーと」
イオが困ったように声をもらした途端――
『無属性創造魔法と光魔法』
無機質な声が頭に響いた。これが『判定』。本来、自分の属性を判定しなくとも、魔法を使ってみれば解るようになるとは言え、不発や暴発の危険が伴うし、特殊属性は解りづらい。
簡単に属性や強さが解るこの『判定』は非常に便利で安全である。
こほん。
固まっていた教師からわざとらしい咳が聞こえ、席に戻れと言われた。
(何、無属性創造魔法って……)
いや、使い方だとか特徴は判定の声が聞こえたと同時にうっすら理解した。どういう仕組みか判定にはそう言った理解を促すこともできるのだ。問題は、聞いたこともない特殊属性だと言うことだ。特殊と付けども他の属性は前例もあり、塔によって系統立てて研究されている。その研究についても授業で学んだはずだった。
だが、無属性はともかく『創造魔法』など初耳だ。
(なに、どういうこと?転生チートってやつ?いやいやいやいやいや、前世の記憶なんてほとんど覚えてないし。なんとなく、こんなだったなーっていうくらいしか無いのに、唯一まともに固有名詞と内容覚えてたのシンデレラくらいだって言うのに。どういうこと?もともと公爵家は王家や英雄の血筋だから、その遺伝?)
久々に令嬢らしからぬ口調で脳内を混乱させながら席に着くと、後ろからキラキラとした眼差しを向けられた。
「すごいですね、イオリティ様!めっちゃ金でしたよ」
潜めた声で叫ぶという器用なことをしながらナナが興奮した顔を近づけてきた。
「あなたこそ、ものすごく濃い色だったわね」
「本当にびっくりです。火炎魔法なんて伝説だと思ってましたー」
「!」
さらっと小声で告げられた内容に、心臓が止まるかと思った。回りはそれぞれ興奮して話をしているようで、こちらの会話に耳を澄ませている様子は無い。
火魔法とその上位の炎魔法。そのさらに上位の伝説級の魔法が『火炎魔法』。確か、三百年ほど前に確認されたのが最後で、そのときが四代目だと言われている。
「五代目って呼んでもいいかしら」
からかうように囁き返すと、ナナはにんまりと笑った。
「それなら、イオリティ様は三代目ですね」
どこのスケバンだ、とは突っ込まない。
光魔法も確認されたのが建国初代王家の姫と、五百年ほど前の聖女と呼ばれた存在のみ。どちらも水晶での判定はしておらず、自分が初めてのはずだ。
(この世界、もしかしたらシンデレラの素になったところかと思ってたけど、違う?)
教室内の視線が集まっているのは、気のせいでは無いだろう。金色のおかげで最初の波動――無属性創造魔法は忘れ去られているだろうから、今後のことを考えても切り札として残しておきたい。
そんな物騒なことを考えて、ため息が漏れた。
この結果は王宮にも伝えられるだろう。ごく一部の重鎮にしか伝えられないとはいえ、我が身の行く末にそこはかとなく不安を感じる。
「イオリティ様と雇用契約を結んどいて良かったです」
ナナはそう言うと、にかっと笑った。
仲良くなってからしばらくして、ナナは自分がかなりの魔力持ちだと気づき、さらにイオの身分を知ってからすぐに専属契約を持ちかけた。元々の夢を叶えるためと、もし将来就くのがイオと仲の悪い貴族や疎遠な職場だったら嫌だ、という理由と保身のためだ。
「腕輪を堂々と身につけることにしますねー」
カスリットーレ公爵家所属――さらに、イオリティ専属である印が刻まれた腕輪である。
「あと、一応、炎魔法ってことにしときたいですね」
面倒だから。
「そうね。それがいいわ」
(相変わらず、賢いのね。状況判断が的確だわ)
ナナの呟きに頷いたイオは、改めてその賢さを痛感した。
もし、火炎魔法だと国にばれたら……。そして、自身も明らかな光魔法の使い手で、その自分に火炎魔法の使い手が従っているとなれば、王太子妃候補の天秤はこちらへ一気に傾く。
朝廊下ですれ違ったサンドレッド・コンタスト伯爵令嬢の姿を思い出し、イオはそっと息を吐き出した。
先日、父親が二度目の航海に出たと聞いたが、そのためか少し草臥れた雰囲気を漂わせていた。父親が居なくてさみしいのか、家庭が落ち着かないのか、王太子妃教育が大変なのか、理由ははっきりとわからないけれど無邪気さや可愛らしさに陰りが見えた。
放課後のお茶会を思うと、ずっしりと重い何かがお腹の底に降りてくる。
「さて、今後の授業の進み方だが――」
話し始めた教師の方に鈍い動きで視線を向けた。楽しみだったはずの授業なのにと、がっかりしたのは仕方が無い。
今後の授業は各属性に分かれて自分の能力の確認と、研究テーマを決めて取り組むことになるらしい。特殊属性は指導教師が居ないことがほとんどなので、自己流を確立することからになる。過去に出現した属性で資料が残っていたとしても、個人により発現する能力は異なるため、役に立つかは解らない、とのこと。
また、魔道工学を履修する者は研究テーマを魔道工学と絡めてもかまわない、とのことだ。
今年度の魔道工学履修者は八名のみ。
「研究テーマ、決まりました?」
教室を移動しながらナナが聞いてきた。
「なんとなく、ざっくりと決まったわ」
研究テーマは、自分の今後の役に立ち且つ国民の生活の向上につながるものにしたい。……本当は、王妃を目指して国の利益になる壮大なものであった方がいいのだろうけれど。
光魔法の研究をしろと圧力がかかってきた場合のことを考えて、父親にも根回しがいるかもしれないと、魔道連絡便を緊急で送ってある。
「ナナはどうするの?」
「前々からエネルギー変換について研究したかったんですよね。せっかくエネルギーの塊みたいな力を手にしたので、これを使いこなせると色々と生活の幅がひろがると思うんです」
ナナは平民の生活を便利にする魔道具の開発を行いたいとの夢があった。イオリティにそのことを相談し、イオが将来王太子妃にならなかった場合は、魔道具工房を立ち上げて経営していくことになっている。王太子妃になった場合は、政策の一つとして魔道具の開発を進めていく予定だったのだ。
「いい活用方法を見つけられて、もっと世界的に潤うといいわね」
「ですよね。簡単なことでも手間がかからないようになれば、できる幅は広がりますよねー」
重厚な教室の扉を開きながら、ナナは答えた。
魔道工学の教室は工房も兼ねているため、蟻の巣のように作りになっている。ここに来るには、渡り廊下をかなり歩かなくてはならない。巨大な平べったい建物だ。教室中央には講義用の半球型の空間があり、天窓から明かりが差し込んでいる。入り口以外の全方位には細い廊下のようなものがたくさん生えている。その廊下からまた通路が生え、その奥が個人用の工房になっている。通路には番号が打たれ、イオリティたちの個人工房は7番目の通路に用意されるとのことだ。この通路には、701号室から720号室まで存在するらしい。危険な取り組みや広さが必要な取り組みは710号以降の番号になる。720号室に至っては、他の工房からかなり遠く、避難しやすいように外の敷地に面している。
授業はあっさりと終わった。再来週までに研究テーマを決めて、提出。その後工房を割り振る、というものだった。
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