漆黒の大魔将軍は勇者に倒されたはずでした!?

武家桜鷹丸

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第六章 亀と兎

そして地図から国は消えた。

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 ーー…と、いうわけで我は三国の一つにやってきた。
 ここは偵察にきた連中が帰っていった国なので追いかけるついでに一番にしてやった。

「き、貴様何者だ!?名を名乗れ!」

 爆煙から姿を現した我にこの国の王が指を差して聞いてきたので堂々と名乗ってあげる。
 大魔将軍の名を聞いた大臣の年配者が短い悲鳴を口に出して恐れるのを見ながら手短に済ませたいので言ってやった。

「お前達は我の領土に押し入り狼藉を働いた。よってこの国を終わらせことにした。」

 我の宣告に王は大いに驚いてから兵を呼ぼうと声を張り上げる。
 だがあいにく衛兵の類いは既にいない。
 いや、今失くしているが正しいかもしれない。
 現在ここから下層の階ではミケラとエルフェンが探索がてら敵兵を蹴散らしている。メイドや使用人として働かされている人間族以外の他種族を城から出す為にだ。

「な、何が望みだ!ここは小さな国だが同盟を結んだ二国がある!すぐに取り返されるだけだぞ!」
「取り返す?さっき言ったのが聞こえなかったのか?我は終わらせてやると言ったのだ。」

 その言葉を告げた後で外から轟音が届く。大臣らが窓の方を見れば都のあちこちで火の手が上がっていた。
 どうやらエイムとゾドラによる奴隷商の店への攻撃を開始したようだ。
 二体にはちゃんと役割を伝えてあるので問題ないだろうと思っていればスマホもどきの通信機から連絡が入ってきたので盾から取り出しその場で話す。

「お電話ありがとうございますこちら大魔将軍です。」
『わっ!?本当に板から声が聞こえる!?』

 渡してあげたエルフェンの驚く声が聞こえてから次に大きく咳き込む声がして報告が入る。
 下の階はほぼ制圧してエルフや獣人を保護したのでこれから地下に向かうということだったので了承し気をつけていきなさいとも伝えて通話を切る。
 その間に大臣の一人がこそこそ廊下へ出ようと試みていたので通信機を盾にしまい代わりに拳銃を取り出し振り向き様に五発撃ち込んで射殺する。
 部屋に響く音と身体に穴を空けて倒れた大臣を見てその場にいる者は悲鳴と共に壁際に逃げる。

「悪いがお前達をこの場から逃がしはしない。それにいくつか聞きたいことがある。」

 壁に張りついて怯える大臣らを見渡しながら言うと国王に振り向いて尋ねた。
 一つ目は何故ロックガーデン国を狙ったかだ。
 プルパからは資源が目当てだろうと聞かされていたが三国でそれを取り合ったらあまり利得がないのではと思ったからだ。
 問いかけに国王は口をつぐんで黙秘しようとしてみせた。
 だから拳銃を大臣らの中で比較的若い者に向けてまた発砲し太ももを撃ち抜く。部屋に響き渡る男性の悲鳴を聞きながら拳銃を国王に向ける。

「つまらない黙りだんまりは不快にすると思え。次はお前の脚だぞ?」

 少し圧をかけた声で言ってあげれば国王はすぐ素直になった。
 三国は聖教皇国シェガヒメの属国でありそこから今度の侵攻の話が親書として届けられた。
 成功した暁には戦果の高い国から利権を多く得られるというが同時に資源の六割を聖教皇国に納めることも入っていたらしい。
 その代わりに聖教皇国から大量の簡易魔法装置等の支援が送られてきたので三国は同盟を結び連合軍としてロックガーデン国に攻め入ったというのが事のあらましである。
 話を聞いて実に卑怯なと思えた。
 兵は出さず物だけ送ってしかも成功したら資源はもらいますなんて随分と身勝手な話だ。
 これで失敗しても聖教皇国には物だけの損失だけで済むしいつでも蜥蜴の尻尾切りが出来る離れた小国なら腹すら痛まない。
 だが、それで同情するほど我は善人ではない。
 今の我は人間族にとっての悪役なのだ。

「そうか、話してくれたことに感謝しよう。」
「で、では私だけでも見逃し…!」

 パンパンパンッという音によって国王の言葉は遮られた。
 額に一発、胸に二発の光弾を受けた国王はうつ伏せに倒れて動かなくなる。射殺された国王に大臣らはまた悲鳴を上げてどうしてという眼差しを向けてくる中で拳銃を盾にしまうと面倒なので機関銃タイプを取り出して銃口を向けると言ってやった。

「ではもう用済みだ諸君。恨むならシェガヒメを恨め。」

 直後、廊下までけたたましい音が響き渡った。


***


 燃え盛る家屋、逃げ惑う人々、対応に追われる兵士達。
 たかが五十年経った程度でもこの光景は楽しく思える。
 そこへ追い打ちをかけるように火属性魔法を放ってやればさらに悲鳴が木霊して心地よいものになる。
 ホロードラゴンゾンビ時代の私なら味わえなかった感覚だ。
 あの頃は障気と毒しか操れなかったので静かにゆっくりと死滅させていく光景しか自分がする時は見れなかった。
 でも今は爆発で吹き飛ばし、風で切り裂き、雷で焦がし、氷で穴を空けたりと様々な死を演出することが出来る。

(エイムはこの気分を前から味わっていたのでしょうね。)

 なんて思いながらエイムのいる方に視線を送る。
 エイムは今頃奴隷商から救出した多種族を地下に作った坑道もどきへと誘導している。店が燃えているのはもう救出済みという合図でもあった。
 この国崩しも旦那様はしっかり計画してくれておりました。
 国の外からエイムが地下道を城と奴隷商のあるところまで網の目上に作り、捕まっているエルフ、ドワーフ、獣人を救出してから一気に消滅させる。
 その救出にはあのエルフェンの顔を使うことで奴隷達に安心感を与えさせる為に一度城の地下まで移動させ集めさせてから脱出する。
 私の役目はその作業を気づかせない為に街を破壊して混乱を生み出し注目を集めさせること。
 現に下から弓矢と下級魔法が飛んできてはいますが遅くて回避しながら街の建物と人間族を攻撃していけるほどです。
 そうこうしていれば旦那様から連絡が入ってきた。
 城の方は制圧したので奴隷が脱出次第この国を終わらせるので準備に入れということ。
 私は了解の返事をしてから高く飛ぶと外壁の方に向かった。
 出入口のところには既に逃げ出そうとする人間族が密集しておりちょうどよかったのでそこと上の外壁に向けて火の球を放つ。集団を焼き払いさらに爆撃して崩れた外壁が出入口を塞いでしまえば人間族は阿鼻叫喚して中心部へと引き返していった。
 その様を軽く眺めてから私は反対側の出入口も塞ぎに向かう為に反転して向かった。





 ゾドラへの連絡を済ませたしこんな血生臭いところからおさらばして地下に向かうとしよう。

『聞こえるかエイム?進捗は?』
『あ、マスター?多分あと少しで城の地下に到着するよ。助けた人数はざっと五十人くらいかな。』
『そうか、ならば向こうで合流しよう。』

 エイムと連絡してから我はボードを出現させてこの王都の全体マップを立体表示し眷属の位置を確認する。現在エルフェンといるミケラは既に城の地下におり、ゾドラは言われた通り逃げ道を塞いでいる位置にいて、奴隷達を連れているエイムは城まであと数分といったところだろう。
 これなら少しゆっくり向かってもいいかもしれないので我は一階に降りて少し探索する。
 道中ミケラとエルフェンが討ち取った兵士を見かけながら向かったのは食糧庫。
 そこにある食糧を倉庫から出した〔盗賊王の袋〕にポイポイッと投げ入れていく。この食糧は大黒林で今も頑張っているだろうパーサー達の為にだ。
 長らく任せっきりにしているので今度帰る時には手土産を持ち帰ってあげようというわけだ。
 〔強欲の袋〕に入ったものは劣化しないので他の二国でも同様に食糧をいただいておくとしよう。
 片っ端まで食糧を袋に入れてから倉庫に戻すと地下に向かった。
 石造りの階段を降りて地下牢の場所に着けば既に通路でたくさんのエルフ、ドワーフ、獣人族に囲まれたエルフェンとミケラを見つける。
 すると我の存在に気づいたエルフから悲鳴が上がってしまった。どうやらこちらのことはまだ伝えてなかったらしくエルフェンがすぐに弁明してみせるので我も友好的に見せようと歩み寄りながら軽く手を振ってみせた。

「首尾は?」
「ざっと三十人くらいだ。」
「よろしい。あと少しでエイムも来るから全員脱出したらまた連絡してくれ。それでこの国は。」

 短く話を済ませエルフェンが頷くのを見て少し経った頃に突き当たりの壁が崩れ出した。
 昔教えたドリルに手を変形させた工事現場姿のエイムが姿を見せるとこちらへ向けて手を振って呼び掛けてきた。

「さあ皆!こんな国から外へ出るぞ!私に続け!」

 先導する為にエルフェンが号令をかければ受けた者達は英雄に勇気づけられて走り出した彼女の後を追った。
 途中エルフェンに抱えられたエイムと最後尾に付くミケラを見送ってあげると我はすぐに踵を翻して城を出ることにした。
 外へ出て空を見上げれば太陽はお昼過ぎを指していた。
 この国の住民にとってはきっと最後のお昼となるだろうかと思いつつ空へ上がれば通話でゾドラに呼び掛ける。
 呼んでから秒で戻ってきたゾドラから都の出入口は完全に塞いだことを聞く。これであとはエルフェンからの連絡を待てばいいのでどう消してやろうかを吟味する。
 昔やったあの《特大魔法》を使ってもいいのだが、それだとこの世界ではしばらくは受けた土地が闇属性の影響で草木が生えない状態になってしまう。
 この先植林事業を行う上では絶対なってはいけない状態なので却下するとしてあと他に都一つ消し飛ばすスキルと言えば何かなと思っていたところにゾドラが意見してくれた。

「旦那様。ここは私にお任せくださいませ。試したい龍魔法があるのです。これくらいの都ならば一撃で消せるかと。」
「ほお、それは興味深いな。ならば任せるとしよう。」

 数多の龍魔法を扱えるようになったゾドラからの提案に龍魔法自体に興味のある我は任せてみることに決めた。
 なので彼女には申し訳ないが実験的な意味でそれならと倉庫から赤紫色の液体が入った小瓶を取り出して渡す。

「これは?」
「この世界に存在する魔法攻撃力を高める錬金薬だ。今のゾドラならば効果が出るのではと思ったから試したい。頼んだぞ?」

 冒険の中で手に入ったはいいがあいにく飲めないのでずっと倉庫にあったこの薬。
 それを魔族のしかも上位が使ったらどうなるだろうか?
 という探求心から出た提案であったがゾドラは何故か瞳を輝かせる。まるでプレゼントをもらった子どもみたいな眼差しで小瓶を見つめるゾドラにどうかしたかと尋ねれば彼女は我に帰ってからなんでもございませんと返してくれた。
 するとそこへちょうどよく通信機からエルフェンの連絡が入る。無事に国から脱出したことを伝えられたので我はそのまま山脈の麓の森まで移動するよう指示する。これからゾドラの使う龍魔法の範囲内にエルフェン達が入ってしまわないようにする為の配慮だ。

「では旦那様。上の方で見物を。」
「うむ、しかと見届けさせてもらうぞ。」

 そう言ってから我は邪魔にならないようにこの国の城よりも高く斜め上に上昇し都から離れてからゾドラに視線を向ける。
 一度深呼吸してからゾドラも城の最上部まで上昇してから展開したのは雷属性の魔方陣。
 しかも一つではなくゾドラの足元から下へ四つの魔方陣が縦に間隔を少し開けて並ぶように出現した。
 これは重属魔法と呼ばれるものだ。
 合属魔法が二つの属性を合わせるものならば重属魔法は一つの属性を重ね合わせることによってより強力な威力と属性になる。
 エルフでも高位の魔法使いが三人以上集まれば可能だがそれでも三段重ねが良いところをゾドラは四段重ねを出してきた。
 それだけでも威力と範囲が充分に伺えるところだがだめ押しにゾドラは我が渡した小瓶を一気に飲み干す。
 一瞬ゾドラの全体が赤紫に光ってみせたことに効果があったのだと理解していればゾドラは左手を挙げてみせる。すると上空の雲がみるみる変化して雷雲へと変われば閃光と共になんと一本の雷がゾドラに落ちたのだ。
 しかし落雷を受けたゾドラは身体に紫電を走らせてからその紫電が左手へと収束されていけば紫色の槍へと形を変える。
 そして槍を掴む左手を自分の真下にある四重の魔方陣へと狙いを定めればビキビキと鎧で見れない左腕から音を立てて力を込めると動いた。

「灰塵に帰せよ、【雷龍の激昂げきこう】…!」

 スキルを口に出してゾドラは槍を投げる。
 放たれた槍が魔方陣を一つ通ると一回り大きく雷光を迸らせる。それが残りの三つ全てを通りすぎれば槍はもはや大木に匹敵する太さへと倍加してみせ雷光も激しさを増したものとなって落下していった。
 巨槍はそのまま都の中心部へと落ち着弾した瞬間、夏の太陽すら霞むのではないかというほどの閃光の直後、着弾点から雷属性のドームが発生する。
 紫電のドームが建物と人間族を呑み込んでいきながら拡がっていきついには城も外壁すらも巻き込んでいった。
 あまりに拡がっていったので我は巻き込まれるのではと咄嗟にゾドラのところに向かい彼女を自分のところに抱き寄せれば空高く上昇した。
 紫電のドームは王都全てを呑み込んでから再び眩い閃光の直後に爆音とキノコ雲を生み出すほどの大爆発を起こした。
 その衝撃は凄まじく森に入ったばかりのエルフェン達にまで届き何人か転倒させてしまうほどであったと後から聞いた。
 ううむ、なんという威力であろう。
 これなら確かに我の出番なく小国程度は滅ぼせる。しかしこれは錬金薬の効果がちゃんと効いてくれたからが前提なのかもしれないのでまだ要検証の段階に留めておくとしよう。

「…あ、ああ、あの!旦那様!」

 胸のあたりからゾドラの声がしたことに抱きしめていたことを思い出して我はおっとと離してあげる。
 冷たい鎧に顔を押しつけるようにしてしまったので息苦しい想いをさせてことに我は謝罪する。

「すまんすまん。あまりに凄まじいものだったから巻き込まれないようにと身体が先に動いてしまった。許せ。」
「いえいえ!旦那様に抱きしめられてむしろ幸せというか!今は任務に集中したいといいますか…!」

 赤い頬に両手当てて大いに照れてみせるゾドラ。ここにエイムがいたらきっと呆れてからまた注意していたかもしれないが今はエルフェン達の様子を見ることにしよう。
 通信機を取り出してエルフェンのものに呼び掛ければ彼女から返事がきた。

『おい大魔将軍!お前は味方ごと吹き飛ばす気か!一体どんな魔法を使ったんだ!』

 通信機越しにエルフェンの文句を聞かされる。我はそんな彼女を宥めてから安否を聞けば転倒して擦り傷等の軽い負傷をした者はいたが全員無事だと答えてくれたので良しとすれば倉庫に手を入れてあるものを取り出す。

「あ…半世紀ぶりですと懐かしく思えてしまいますね。」

 取り出したものを見てゾドラがそう言ってきたのに嬉しく思う。何せ我もなんで今まで出さなかったのだろうと少し悔いていたからだ。
 それを今度は我が真下へと投げた。
 舞い上がっていた煙を貫いて何も無くなった地面へと突き刺されれば衝撃波で一帯を晴らしてみせたそれは一本の黒い棒。棒には兜と盾が描かれた同じく黒い軍旗が付いていた。
 今、この場所から一つの名前が消えた。
 つまりここは今日をもって我が土地としていいということでありその証として我が旗を残すのだ。
 この後は保護した者達を一旦〔大地の守り人〕に預けてから残りの二国に向かい同じように潰して旗を立ててやる。
 それが済んだら三国で保護した者らには故郷へ帰らせたりオサカの街に移住させたりするかどうかを聞いたりしよう。
 全てが終わったらエルフェンと一緒に大黒林に帰るのもいいかもしれない。彼女はああ見えて小動物が大好きだからケット・シー達も受け入れてくれるはずだ。
 と、しっかり今後の予定を立てていきながら我はゾドラを連れてエルフェン達の元に向かうのであった。


***


 ーー…一体誰がこんな状況を予想出来ただろうか?
 我が国はただ聖教皇国からの通達に従っただけだ。
 だから同盟を結んで攻めることにした。向こうから大量の物資は与えられたが兵は寄越されなかったことに私はいささか不安を覚えた。
 数と物量で他の二国は余裕だと意気込みを見せていた。だからそれに便乗していけばいいと思っていた。
 しかし結果はどうだ?
 兵も物も失い、今すら失おうとしているこの現実に……。

「最後に聞こう。聖教皇国の技術力はどれくらいある?」

 護衛兵士と大臣の遺体を背に見たことない武器を向け目の前に立つ漆黒の大鎧を纏った者からなげかけられた質問。
 確かに我が国が一番聖教皇国に近いのは確かだがそんなことを聞いてどうしようかと考えてしまうがもしやと思って口に出してみた。

「まさか、聖教皇国に挑もうというのか!?」
「そのつもりだと言ったら、君は反対するのか?」

 表情は見えないも決して嘘や小国を潰した程度で意気がってはないことを肌で感じた。
 感じたからこそ、最後の王として私は悪あがきすることにした。

「勝てるわけがない。あそこにはかの英雄がいるのだ。」
「英雄だと?先の世界を魔族から救った者達か?」
「そうだ!シェガヒメにはかの天才魔科学者がいる!防備も全て魔導兵器で固められたあの国に攻め入る隙なぞない!」

 話に聞いた程度のことを口に出してみた。
 すると目の前の相手は何っ!?と驚いてみせる。やはりかの英雄がいるとわかれば恐れたかと思ったが相手は手にある武器を私の額に押しつけてきた。

「つまらない嘘を吐くでない。カテジナは獣人族だぞ?人間至上主義のお前らが彼女に従えるのか?」
「お前こそ何を言っている!彼女は魔科学によって種族を超越し人間となったのだ!今の彼女はは聖教皇国の〔大司教〕!教皇の次に高い地位にして大陸一の魔科学者を相手に貴様らなんぞ一捻りだ!」

 もはや生存の望みが無いからと精一杯言ってやった。
 すると相手は軽く他所を向くようにして考える素振りを見せた。
 まるでとても信じられないとばかりに黙考する様子を見せてから再びこちらを見るとまた質問してくる。

「では聖教皇国の細かい地図は持っているか?」
「そ、それならば寝室にあ…!」

 言い終わる前に私は閃光と爆音を感じて視界が暗転した。





 ーー…締めの三つ目の国でとんでもない話を聞いてしまった。
 あの信仰も宗教も否科学的であると豪語していたカテジナが聖教皇国の大司教だと?
 しかも魔科学で種族を超越した存在になったから人間族の仲間入り?
 全く馬鹿げた話だ。
 エルフェンの話を合わせても四十年の間で随分紆余曲折なカテジナの偽物語が出来上がっていたようだ。
 これは三つある大国の何処から侵略してやろうかの一番が決まった気がする。
 今のと他の二国でも得た情報は後で〔大地の守り人〕らとも共有するとしよう。

「大魔将軍様!城の制圧を完了いたしました!」

 そこへ開いた扉の前で敬礼しているミケラから声を掛けられる。
 今回は規模の小さな城だったので彼女一体に任せてみたがどうやら無事に完遂したようだ。
 なので我はミケラを連れて廊下に出ればこの国の王の部屋に向かった。
 部屋の扉を蹴破って入れば中を見回す。すると壁の一部に不可思議な窪みを見つける。窪みを覗き込めば石造りの階段が螺旋を描いて下に伸びていた。
 どうやらあの王は家族を逃がす為に時間稼ぎをしていたようだ。何処まで逃げきれるかは知らないがもうどうでもいいことだ。
 我はミケラと一緒にシェガヒメの詳細な地図を探す為に部屋を物色する。
 そういえば昔、将軍と呼ばれる者が盗賊紛いのことを周りに見せていいのかとオガコに指摘されたことがあったな。
 あの時は確か汚れ仕事だろうと率先してやるのが上に立つ者としての示しであるとか言ってたと思う。
 部屋にある机やらベッドを物色してみたのだが地図らしいものが見つからなかった。
 しかしあそこで今更虚偽の情報を口に出すとも思えない。となればここは前世の知識を生かすとしよう。
 部屋に入った時微かに感じた違和感に部屋を軽く一周するように見回す。そして部屋の壁に飾られた絵画から宗教国家の属国に似つかわしくない悪魔らしいものを描いた絵に目を向ける。
 近づいて額縁に手を掛ければあっさり外れず下から上に動かすと何かに引っ掛かりそこから時計回りに動かしてやれば絵画はくるりと縦になって止まり壁に埋め込むようにあった金庫を見つけた。
 隠された金庫に後ろから見ていたミケラから感嘆の声と拍手をもらいながら我は金庫の取っ手を掴むと強引に開ける。中には折りたたまれた地図と手紙らしいものが複数あったので情報を得る為に全て倉庫に入れた。

「うむ、これでこの国にもう用はない。ミケラよ、我に乗れ。」
「はいです!」

 こちらの指示に返事したミケラはその場で跳躍し宙返りする。するとポンッという音と灰色の煙が出て彼女を隠せば中からケット・シー時代のミケラが現れて我の肩に乗った。
 これはミケラが会得した【転換フュージョン】というスキルで簡単に言うなら化け猫だ。
 肩にミケラが乗ったのを確認すればわざわざ窓から外へ出つつ救出を任せたエイムとゾドラに連絡を取る。
 二体から無事に脱出したことと都の出入口は封鎖したことを報せてもらったので今度は我が締めをやる。
 都から充分離れるよう連絡を済ませてから空高く上昇して止まると右手を挙げ特大の闇属性魔方陣を展開する。

「我が闇よ。この世の理を覆し、我が敵に赤き一撃を落とせ。【漆黒の重力ブラックプレッシャー】…!」

 挙げた右手を振り下ろすように動かせば魔方陣が輝き、空に向かって漆黒の螺旋を出してみせる。
 螺旋は真っ直ぐ空の彼方に伸びていくと魔方陣と共に消えてしまった。
 しんとした静寂が流れてから空に変化が起きる。甲高い音が鳴り響く空が急に赤くなりながらそれは落ちてきた。
 空気との摩擦によって赤く燃えながら我が隕石が姿を見せた。
 大きさはざっとこの国の三分の二くらいだが充分だろうからエイム達の元に向かった。
 国からまあまあ離れたところにいた皆のところに着くとエルフェンが隕石を指差して言ってきた。

「ちょ、ちょっと!あんな魔法昔使ってこなかったじゃない!」
「いや、規模は違うが湖を消し飛ばす時に使ったことがある。それより皆我の後ろに集まれ。巻き込まれたらたまらんからな。」

 簡単に指示をしてから隕石が落ちる国の方に正面を向けばすぐに黒い障壁をドーム状に展開する。
 これは振動と閃光を軽減し遮音と衝撃波と多分飛んでくる破片等を防ぐように構成されている。
 エルフェンの掛け声で我の後方に集まる多種族達の怯える声を聞きながら我は隕石が国に落下するところをしっかり見届けた。
 明るく感じる程度の閃光のみしか肩にいるミケラと後ろの者達は感じれなかったことだろうが隕石は着弾したところから都を全て消し飛ばす大爆発を起こし空へまたキノコ雲を作ってみせた。
 【漆黒の重力ブラックプレッシャー】は闇属性魔法に分類する重力を操る魔法だ。
 我はそれを使いこの世界の空の果て、つまり宇宙から石を一つ引っ張ってきたというわけだ。
 昔、というか半世紀前は聖女の力を高めるとされる秘宝が眠ると言う湖を調査せよと魔王様の命令を受け、短期間で終わらせてあげようと同じく隕石を落として湖の水を吹き飛ばしたことがエルフェンらの記憶には残っていることだろう。
 だが実は秘宝なんてものはそもそもなかったのだ。
 あったのは小さな洞窟で何代か前の聖女のお墓と朽ちた首飾り。しかも首飾りは劣化してステータスすら持ち合わせてなかったという骨折り損だった。
 だからただ湖を吹き飛ばしてしまったという脅威だけが残ってしまう形の残念な思い出話の一つにこちらとしてはなってしまった。
 さて、そんな残念な話はここまでにして振動が治まるのを待ってから障壁を解く。
 煙が消えて更地が見えてくるとエルフェン達多種族は唖然として見てくるのを背中で感じながら二つの国にしたように取り出した軍旗を槍投げの要領で国があった場所に突き刺した。

「これで本作戦は終了した。皆、よくやってくれた。」
「えへへへ、これでまた記録が増えたから僕とぉっても満足だよマスター。」
「半世紀前に比べたら実に貧弱な抵抗ではありましたけれどもまあまあ楽しめました。」

 二体の眷属からの感想を聞いて肩にいるミケラを見れば褒められたことにケット・シー姿で敬礼してありがとうございますみゃ!と返してくれた。
 今回の戦と報復行為によって少なく見積もっても四万以上の人間族は消してみせたことだろう。
 このことが落ち延びたここの元王族らによって広まり聖教皇国に届くには猶予があるはずだ。
 ならばその前に点在する町や村も全て手中に納めてやる。逃げるなら良し、立ち向かうならば殲滅してやりいずれはオサカから西の土地を全て統治し確固たる境界線を敷いてみせる。
 それが済んでからカテジナを騙る輩を狩ってみせよう。
 だがこうも予定が次々と生まれてしまうともう少し人手ならぬが欲しい。
 だからいよいよ彼女のところに赴くとしよう。

「ではマヤト樹海に帰還するぞ!【次元転移ジャンプ】!」

 後にこの惨劇は[黒死こくしの暴虐]として人間族の間で語られることになる。
 三つの国が一月どころか半月もしないで瓦礫も僅かに消えてしまったこの大事件は聖教皇国の属国に衝撃と恐怖を与えることとなった。
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MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

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