異世界で予言の巫女になりました

青野滝エリ

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こんにちは知らない世界

5. 続け様の訪問者

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「「「「 こんにちわーーーー!! 」」」

「・・・あなた達。一体、何の用。」

村長が訪れた翌日、子供達が教会を訪れていた。
いつもの様に、礼拝堂の修復をしていたヘイデンは、眉間に皺を寄せながら尋ねる。


「お爺さんが、プロフィティア様に似た人が居るって言ってたの。」

「プロフィティア様に、あたしの未来を見てもらいたいの」

「母さんが、プロフィティア様にご挨拶してこいって。」

「村長が言ってたから、見に来たの。」

子供達は同時に思い思いの事を口にして、
「「「「プロフィティア様は何処にいますか?」」」」
と尋ねてきた。



「あんの、クソジジイ・・・」

「「「「・・・・・」」」」

ボソッと呟いたつもりが、子供達には丸聞こえだったらしい。
ヘイデンと少し距離をとり、様子を伺いながら建物内部をキョロキョロ見渡している。


「・・・いーい。よく聞きなさい。あなた達。
 プロフィティア様はいないのよ。
 ここに居るのは、チカちゃんて言う可愛い女の子だからね。
 良い子にしていないと、礼拝堂には来ないわよーーーー」

「「「「・・・・はいっ!」」」」

ヘイデンの顔がよっぽど怖かったのか、体をこわばらせて返事をした子供達は邪魔にならない様にと、ベンチに腰掛けて待つことにした。


「ちゃんと、待ってなさいよーー」

「「「「はーい!」」」」

ヘイデンがそう言い残してその場を去ると、子供達は何やらひそひそと話し始める。


「ヘイデンおじさん、いつもより怖かったね」

「うん。怖かった。プロフィティア様がいるからかなぁ。」

「じゃぁ、おじさんはプロフィティア様を守る 騎士アナヴァーティスなの?」

「プロフィティア様はお綺麗って、村長言ってたよ。」

足をぶらぶらさせながら、それぞれが思った事を口に出す。
村長が言っていた事も気になるし、何よりプロフィティア様の様な見た目の人を見てみたい。
そんな好奇心から、子供達は教会へ足を運んだのだ。



「黒髪、黒目ってこの辺じゃ見ない見た目だね」

「僕の髪色と交換してくれないかな?」

「ティータが黒髪になったって、きっと似合わないわ」

「じゃぁ、僕だったら似合うかもしれない。
 僕はこう見えても、村一番の美男子になるって将来を期待されてるし。」

「「「・・・いや、それはない(わ)」」」

ヘイデンと千佳が礼拝堂へ戻ると、子供達は誰に黒髪が似合うとか、黒い瞳が似合うとかそんな話で盛り上がっている。


「ちょっと、チカちゃん連れて来たわよ」

「こんにちは。千佳って言います。」

「「「「・・・・・・」」」」

数秒前まで、賑やかな話し声が響いていたのに、千佳を見た子供達は静まり返り、まじまじと彼女を見つめていた。


「あら、どーしたの。
 チカちゃんに会いたかったんじゃないの?」

「あの・・・これ、プロフィティア様に似ている貴方にあげるっ。」

茶化す様にヘイデンが言うと、1人の女の子が千佳の前に立ち小さな花を差し出した。目線を合わせる様にしゃがむ千佳は、差し出された花束を両手で受け取り女の子を見つめる。


「貰っていいの?」

「うん!」

「キレイだね」

花を見てそう言った千佳は、花を束ねている紐に気づく。紫色の美しい紐は、陽の光が当たると鮮やかに輝いてみえる。千佳の隣で花を見ていたヘイデンは、紐に気づき女の子に確認する様に尋ねた。


「これ願い紐じゃない。」

「うん。
 昨日、お爺さんの話を聞いて、”会えます様に”って願いを込めて作ったの。」

「わざわざ、編んでくれたんだ。
 願い紐とお花ありがとう。大事にするね。」

「うん!」

わざわざ自分に会うために、紐を編んでくれた女の子に千佳は笑顔でお礼を述べた。
2人のやりとりを見ていた、他の子供達はジッと千佳を見つめている。


「綺麗なお姉さんだね。」

「本当に、黒い髪だね。」

「僕、黒い髪の人、初めて見た。」

千佳と目を合わせるのは恥ずかしいのか、少しもじもじしながら小声で呟いている。そんな子供達の背後に立ったヘイデンは、腕を組み仁王立ちしながら見下ろしていた。



「さて、あんた達。
 用が済んだら、帰りなさい。」

「ヘイデンさん。
 そんな、急に・・・」

和やかな空気を断ち切る様に、ヘイデンはそう言って子供達に退室を促す。


「「「「えーーーー!!」」」」

「来たばっかりだよ」

「まだ、ちゃんとお話してないよ」

「僕もちゃんとお話ししてない」

「ヘイデンおじさん、ばっかりずるよ」

抗議の声を上げる子供達を無視するヘイデンは彼らの背に手をやり、問答無用で外へと追いやる。


「目的は果たしたんだから、
 お家に帰りなさい。」

「「「「 いやだー。まだいるー。」」」」

「はいはい。またねー。あんた達。」

バタンッ

子供達を外に出し、戸を閉めたヘイデンはため息をついて鍵をかけた。


「・・・面倒ごとになったわね。」

「ヘイデンさん。子供達がかわいそうですよ。」

駆け寄ってきた千佳がそう言うと、ヘイデンは頭を抑えながら再度ため息をつく。



「千佳ちゃん。
 多分この後、村中の人が来る気がするわ・・・」

「来る?」

「そのうち分かるわよ。」

意味が分からず疑問符を浮かべていた千佳に、ヘイデンはそう伝えてポンと肩を叩き作業に戻っていった。



・・・・・



「ヘイデン、居るかー」

昼時、ヘイデンを尋ねる声が教会内外に響いていた。
教会の隣にある彼の自宅で昼食をとっていた2人は、慌てて教会へ向かう。


「カディおじさん。一体何の様よ。
 それより、鍵閉めた筈なんだけど。」

「あぁ。ヘイデン。
 鍵なら、もっとちゃんとしたのをつけないと。
 戸が腐ってて、ちゃんと掛かってなかったぞ。」

「・・・」

ヘイデンの知り合いと思われる男性は、数人の人たちと一緒に教会を訪れていた。
鍵の話に手で頭を抑えたヘイデンは、深いため息を共に「それで、何の用」とだけ伝える。


「午前中、子供達がここでプロフィティア様に似た人に会ったと言っていたから気になって。」

「私たちも一目お会いしたいと思ったのよ。」

「ヘイデンちゃんが、 雷鳴谷ヴロンディ キラーダから連れて帰ったって聞いて。
 気になって、見に来たのよ。」

訪れてきた人たちは、口々に千佳に会いに来たと話し、彼の横にいた千佳へ視線を向ける。


「それで、ヘイデン。
 隣の女性がその人なのかい?」

「・・・そうよ。
 チカちゃんって言うのよ。」

「は、初めまして。千佳と言います。」

名を名乗った千佳を見る村人たちは、まるで珍しい物を見る様な視線を向けている。千佳は、居心地の悪さを感じながら笑みを作り立っていた。


「プロフィティア様、私はヘイデンの叔父でカディと申します。
 僅かですが村で取れた野菜です。
 良かったら、お召し上がりください。」

カディと名乗った男性は、一歩前に出て手にしていた袋を千佳に差し出す。受け取ろうか迷っているとヘイデンが代わりに前に立ち、無言で受け取った。


「あの、私はプロフィティア様ではありません。」

「わかっております。
 ですが、なんと言いますか、プロフィティア様が本当に居たらこの様なお姿なのだろうと思いまして・・・」

“ちょっと、狂信的すぎて怖いんですけど・・・”

ヘイデンの後ろに隠れる様に立っていた千佳は、顔を覗かせてそう伝える。
わかっていると言ったカディは、どこか熱狂的な視線を千佳に向けていた。


「ごめんなさいね。
 この人、ちょっとプロフィティア様に傾倒していてね。悪気はないの。」

「・・・い、いえ」

引き攣った笑顔を浮かべていた千佳に、隣にいた女性がそう言ってフォローを入れた。



「・・・ホント、ごめん」

村人達と少し会話をして見送った千佳とヘイデンは教会を後にして昼食を再開した。
申し訳なさそうにするヘイデンに苦笑いを浮かべる千佳は、先程の村人達が自分に対して熱狂的な何かを秘めた視線を向ける事に、不快感と恐怖に似た感情を抱いていた。


“プロフィティア様信仰・・・怖すぎるっ・・・”

次からは、ヘイデンに対応を任せよう。
そう心の中で決め、冷め切った昼食を口にした。




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