異世界で予言の巫女になりました

青野滝エリ

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こんにちは知らない世界

4. プロフィティア様の末裔

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「あら、村長。
 お久しぶりね。」

「あぁ、ヘイデン。
 久しいの。」

キリタ村の教会に滞在し始めて少し経った頃、千佳が暮らし始めてから初となる訪問者がやってきた。
教会の階段を直していたヘイデンが訪問者に気づき挨拶をすると、初老の男性は柔かに片手をあげて声をかける。



「そうだ。
 同居人がいるのよ。紹介するわ。
 ちょっと、腰掛けて待っててよ。」

「なんだ。新しい彼女か。それとも彼氏か。」

「違うわよー。
 材料集めにいつもの所行ったら、倒れていたのよ。」

村長と呼んだ、年配の男性をヘイデンは近くにあった椅子に座らせ、千佳を呼びに教会内へと入っていく。



「いつもの所と言えば・・・。
 雷鳴谷ヴロンディ キラーダか。
 そういえば、少し前にいつにもない大きなヴロンディが落ちなかったかのぉ。」

顎に手をやりながら何やら考え込み始めた村長は、ニヤリと笑みを浮かべている。


「あそこから、人をここまで運ぶとは・・・若さだのぉ。
 これは、いい縁が舞い込んだのかもしれん。」

そんな事を呟き、教会を眺めがならヘイデンが戻るのを待っていた。





「紹介するわ。
 この子がさっき言ってた子よ。
 チカちゃんって言うの」

「初めまして。
 ヘイデンさんの所でお世話になっている、千佳と言います。」

「ほぉ。」

ヘイデンに連れられて来た千佳が自己紹介をすると、村長はじっと彼女を見つ思案している。


「あ、あの・・・」

視線に居心地が悪くなったのか、千佳が話しかけようとすると先に村長が口を開いた。


「お嬢さん。」

「はいっ。」

「本当に、ヘイデンの彼女ではないのかい?」

「はいっ?」

「ちょっとーーー、違うっって言っているでしょ!?」

予想外の質問に千佳は何と答えたら良いのかわからず、聞き返してしまう。
すかさず、ヘイデンが会話に割り込んで詳しく事情を説明してくれた。


「冗談じゃ。
 こやつはこんなんだが、悪い人間ではないのでな。
 あぁ、申し遅れた。儂はこの村の村長をしておる。
 周りは爺さんとか、ジジイだとか、
 老ぼれだとか呼んでいるから好きに呼びなさい。」

「えぇっ」

悪びれる様子もなく、ニコニコと笑みを浮かべて話す村長に、千佳は戸惑いを感じていた。

“いや、流石にその呼び方は・・・”

「まったく。このジジイは。
 チカちゃん、この人の事は好きに呼んで大丈夫よ。」

「は、はい。」

千佳の戸惑いを感じていたのかヘイデンは呆れた顔をしながら、村長の方を見て千佳にそう伝える。



「で、改めてお嬢さん。」

「はいっ」

どこか緊張感を漂わせて改まった村長に、千佳も思わずピンと背筋を伸ばして向き合った。


「貴方様は、クラーク家のお嬢様ではございませんか?」

「はい?」

「ちょっと!
 本当に何言ってんのよ。さっき名乗ったでしょ?
 それに、クラーク家なんてプロフィティア様の末裔と言われるイレーネ帝国の公爵家じゃない。」

「・・・すみません。
 ちょーっと、話について行けないです。」

勢いよく食って掛かるヘイデンをよそに、村長はただじっと千佳を見つめている。
この日、2度目となる突然の話に千佳は意味が分からずそう返事をすると、村長は「そうか」とだけ答えヘイデンにお茶を持ってくるように頼んだ。



「ではお嬢さん。
 ちょいと、老ぼれの話を聞いてくれんかの」

渋々、お茶を入れにこの場を去ったヘイデンを見送った村長は、そう言って立ち上がり礼拝堂へと足を進めた。
慌てて千佳もその後を追うように礼拝堂へと足を踏み入れる。


「お嬢さんは、クラーク家と縁のある方に似ていらっしゃる。」

「似ている?」

まだ、座れそうなベンチに2人で腰をおろし、プロフィティア像を眺めていれば、村長は何かを思い出す様に話し始めた。


「クラーク家の方は、この辺りの方ではないと言われていての。
 黒い髪、黒い目をしている。
 儂は、傍系の方にお会いしたことがあるんだが、
 確かにその方も貴方と同じ様な髪色、目の色をしておった。」

「そう、なんですか・・・」

“それって、アジア系みたいな人が居たってことなのかな?”

自分なりに考えをまとめようにも、この世界の情報が少なすぎて考えがまとまらない千佳は、ただ村長の話に相槌を打つことしかできずにいた。


「クラーク家は数代前の当主が、結婚もせず子孫も残さずにこの世を去っての。
 今は、傍系の方々しかおらんと聞いておる。
 チカさんのお姿を拝見して、もし、連綿と受け継がれてきたのなら、
 貴方の様な方が居るのではないかと思ったのだ。」

「あの、申し訳ないのですが、
 私はクラーク家の方とは何ら関係ないかと・・・」

「すまぬ。すまぬ。
 歳を取ると、信仰深くなるのか何かに縋りたくなるのか、
 知り合ったばかりのお嬢さんを勝手に、
 プロフィティア様の末裔と思ってしまった。」

「いえ、謝罪をして欲しいわけではなくて。
 この村の方達は、
 プロフィティア様をお祀りしていると聞きましたし。
 とても大切な存在なんですから、
 その様に思ってしまうのも仕方ないのかもしれないですし・・・」

申し訳なさそうに話す村長に、千佳はどう返したら良いか分からず、しどろもどろになりながら思った事を伝えていた。


「ちょっと外に居ないと思えば、勝手に移動してー」

「ヘイデンさんっ」

「あぁ、ヘイデンか」

タイミングよくティーセットを持ったヘイデンが、戻ってきた。
自分だけ席を外された事が気に食わなかったのか、少し怒っている様にも見える。

言葉に詰まっていた千佳はヘイデンに「手伝います」と言ってトレイを受け取り、彼に座るよう促した。

“助かったー。
 でも、アジア系の人がイリーニ帝国にいたんだ。”

2人から少し離れた場所でカップに紅茶を入れる千佳は、
心の中でため息を吐きながら、先ほど言われた事を思い返していた。



・・・・・



「あぁ。
 もし、今後2人が恋仲になるのなら、儂は喜んで応援するぞ。」

紅茶を飲みながら、雑談していると突然思い出した様に村長がそう呟く。


「へっ。」

「だから、違うつってんだろーが。ジジイ。」

思わぬ言葉に紅茶を詰まらせそうになった千佳が彼の方へ顔を向ければ、村長は、いい加減にしろと言わんばかりの表情で言い返すヘイデンを見てニンマリと笑う。


「ヘイデン、素になっておるぞ。」

「あ、そう言えば、さっき口調が違いましたね。」

「・・・ったく」

頭をガシガシ掻きながらそう呟いたヘイデンは、どこかバツが悪そうな顔をしていた。


「チカさん。
 こやつの変な口調は、仕事用じゃ。
 気をつけなさい。
 これでも、狼だからの。」

「・・・狼ですか。
 ヘイデンさんは、 魔術マギアが使えますし、実は、狼なんて事もありえますよね・・・。
 この辺だと、獣が人間になったりすることもあるんですか?」

“魔術が使える世界なら、何でもありよね。ありえる話かもしれない。”

本気に捉えてしまった千佳は真面目な顔をして、村長に「狼が人間になる方法を教えてください」と尋ねている。


「・・・ふむ。それはの。」

「ジジイ。
 頼むから、チカちゃんに馬鹿なこと言わないくれ。」

村長が千佳の質問に答えようとした時、彼の肩をガッシリと掴んだヘイデンが爽やかな笑顔でそう告げた。
心なしか肩を掴む手に力が込められている。


「・・・さて。儂は帰るかの。」

「はいはい。
 しばらく来んな。さっさと、帰れ。
 あ、チカちゃんはゆっくりお茶してていいからねー」

半ば連行される様に、出口まで連れられていく村長を千佳はただ見送ることしかできなかった。



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