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しおりを挟む「しまった…」
昨日の夜にモモトセが帰ってきたので朝早く起きてちょっと贅沢な朝食を作ろうと思ったが、完全に寝過ごしてしまった。モモトセはどうやらルーティンの朝のトレーニングを終えてシャワーを浴びているようだった。
とりあえず昨日張り切って作ったおかずを何品か並べて私は食卓でモモトセを待つことにした。
「おはよ、ツヅリ。久しぶりのツヅリとの朝食で嬉しいなぁ~」
シャワーを終えて身だしなみも完璧に済ましてきたモモトセがダイニングの方へやってきていた。出会った頃が懐かしいほど、何でも1人で出来るようになっていた。当たり前の話かもしれないが。
「おはよう、モモトセ。昨日は恥ずかしいところをお見せしました…。昨日の作り置きになっちゃうけど、どうぞ」
モモトセに着席を勧めると美味しそうと言って座った。短髪になり少し印象が変わった。以前のロングも似合っていたがサッパリと短くなっており似合っていた。
「髪似合うね」
「ほんま?アンリ先輩に整えてもらってん。後ろの長さはあんまり変わらんねんけど、前と横だけ切ってもらったんよ」
モモトセは食事をしながら笑顔で話をしてくれた。なんだろう。好きだと自覚してから余計に小さい事で嬉しいと思うようになってしまった。と、いうかあのキス以来なので恥ずかしさで赤面していた。
「ツヅリはこの4日間何してたん?」
「私は就職のこと考えたり、モモトセのこと考えたりしてた」
モモトセが少しむせたがコホンと咳払いをし私の話を続きを聞こうという姿勢に戻った。
「就職は考古学に進もうと思ってて、そこに向かうには大学を受けないといけないんだ。金銭的なことは特待生制度があるからそれを使って入学しようと思ってる」
「そっか、ええことやね。ツヅリがロストテクノロジーの話してる時すごく生き生きしてるから見てて楽しかったんよ。好きな事を頑張ってるのが1番ええよね」
モモトセは朝食をすべて食べ終わりご馳走様と挨拶すると食器を片付けてコーヒーを入れてきてくれた。
「あんな、俺もアルバイトしてみようかと思ってんねん」
「どんなアルバイト?」
「パーツモデルってやつ。アンリ先輩にこの前連れて行かれた後はファッションショーに無理やりだされて、新作メンズ向けジュエリーブランドを立ち上げたから、広告につかう写真を撮らせて欲しいってことやってんよ」
ちなみにファッションショーは例の如く顔は隠されていたようだ。ミラーさんの話だと芸能の仕事に戻ることはないと言っていたが、モモトセはまだそっちの仕事がしてみたいのかもしれない。
「やから、俺芸能区に行くこともあると思うねん。またそのとき1回一緒にお泊まりとかもしてみよ?ロストテクノロジーも楽しいけど最新のテクノロジーも楽しいと思うし、ええかな?」
なんと!居住区から芸能区への出入りは通行証がないと通れないのだ。しかし通話を持っている人の同伴であれば1人のみ許されるのだ。行ってみたい。
「ぜひ、連れて行って!楽しみだ~」
「ツヅリが将来の話してくれたから俺もしようかと思うねんけど、俺はものづくりが好きなんよ」
そう言われてみるとそうだ。モモトセは自分の荷物は少ない方だったが、自分のスペースにミニ飛行機模型の設計図や、完成したミニ風車などが飾ってあった。
「やから、将来はそれを職業にしたいと思ってるからその時のためにお金貯めようと思って、アルバイトはじめたんよ」
モモトセはモジモジしていたが意を決したように言葉を続けた。
「俺はツヅリのことが好き。付き合いたいし、結婚もしたい。でも今のままやと頼りない男のままやねん。やから、約束だけしてもええ?」
『好き』といってもらえた。嬉しくて体が震えた。私も、私も
「好き」
「え?」
「私も好き、モモトセが好き。嬉しい、私も結婚したい。約束だけでいいの?本当にぜんぶしてしまおうよ」
頭がふわふわしていた。モモトセに好きと言われたら嬉しくて嬉しくて震えて止まらなかった。気がつくとモモトセのシャツの袖を掴んでいた。
「な、なに。ツヅリ、どないしたん?」
「約束する。結婚、今すぐしよ?」
グッとモモトセが息を呑んだ。私が掴んでいる手を払い除けて距離を取られた。そのことにすごくショックを受けていた。
「え…なんで」
「俺はもう中途半端はせんって決めた!…ありがとうツヅリ。両思いで心からほんまに嬉しい。でも俺ちゃんとツヅリと付き合っていきたいって思ってるねん。やからちゃんと順序を守ろう!!」
「順序?」
「そう!ツヅリは魅力的すぎるねん。ホンマはもう手を出したいけど、そんなんそれが目的やと思われるのも嫌やし、大切にしたいねん。やから、やからまずお付き合いをしましょう…」
「うん、じゃあ今日から恋人」
嬉しい気持ちが抑えられずモモトセに思わず抱きついてしまった。するとあーもーといいながら抱きしめ返してくれた。
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