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6 グラナート視点
しおりを挟む「グラナート様、夕食の用意ができました」
エルツの声が聞こえて俺は目を覚ました。
どうやら部屋に戻ってから寝てしまっていたらしい。
ベッドから出て扉を開けたが、そこにエルツの姿はなかった。
返事をしなかったから寝ていると思ったのか?
……いや、今までは声をかけて返事が無かったらノックをしてもう一度声をかけてくれていた。
今回はたまたま忘れただけなのか?
それとも……
俺はエルツの事が気になりながら食堂に向かった。
夕食の時のエルツはいつもと同じ冷静な顔をしていたが、どこか集中していないような、ボーッとしているような気がした。
エルツの事が心配になった俺は、夕食後しばらく食堂に残り、片付けが終わるのを待った。
俺はエルツが厨房から出てきたところで声をかける。
「少し聞きたいことがあるんだけど、今いいかな」
「はい」
「さっきベリル嬢の話をした時に何を考えていたの?」
「……」
エルツは下を向いて黙ってしまった。
「あれからいつもと様子が違ったから気になったんだ」
「……申し訳ありません。二度と失礼のないようにします」
「あ……そういうつもりじゃ——」
「多分グラナートは謝らせたい訳じゃなくて、エルツの事が心配なんだと思うよ」
ブラウが厨房から出てきてエルツに言った。
「……両親は姉を良家に嫁がせたがっていたので、ゴルトと婚約をしたと聞いて驚いたんです」
「ああ、確かにそうだね。ゴルトはお金はたくさん持っているけど良家ってわけではないし、それにゴルトの息子とならまだわかるけどゴルト本人って……あ、でも息子は外国語しか話せないみたいだからベリル嬢と結婚は無理か……」
ブラウは、うーん、と言って腕を組む。
「俺、ゴルトの事は知っているけどベリル嬢の事は何も知らなくてさ……どんな人なの?」
「ボクは直接話した事ないからあまりわからないけど、潜入していた時はいつもニコニコしてご両親の言う事を聞いていたよ。まあ、家族にしか見せない姿があったのかもしれないけどね。……エルツの前ではどんな感じだったの?」
「……私はいつも地下に居ましたし、両親から姉とは必要な事以外は話すなと言われていたので、ほとんど顔を合わせる事はありませんでしたが、たまに会った時は私の前でもずっと笑顔でした」
「そっか……じゃあベリル嬢から意地悪されたりもしなかった?」
「はい」
「そうだったんだね。ボクはエルツとベリル嬢は仲が悪いのかと思ってたよ」
「仲が悪くなるほど姉と関わっていないので……」
そう言ったエルツの顔は少し悲しそうに見えた。
俺は本当はベリル嬢の事をもっと聞きたかったが、今はやめておいたほうがよさそうだ。
「いきなり呼び止めてごめん。色々と話してくれてありがとう」
俺がそう言うとエルツは、いえ、と言って足早に食堂を出て行った。
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