【完結】少しでもあなたの力になれたなら

優希

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10 グラナート視点

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 家に戻った俺はベッドに倒れ込んだ。



 ……コンコン

 扉を叩く音がする。

「グラナート様」

 エルツの声だ。

 俺は起きようとしたが瞼が重くて目が開かなかった。

 返事をしないと……

 そう思ったが、俺は再び眠りに落ちてしまった。



 ぐぅっとお腹が鳴る。

 ゆっくりと目を開けると外は明るくなっていた。

 お腹空いたな……

 昨日はあれから起きる事はなく、俺は夕食を食べていなかった。


 食堂に向かう途中でエルツと会った。

「おはようございます」

「おはよう。まだ朝食の時間には早いかな?」

「……いえ」

「そっか。よかった」


 食堂にはすでに父様がいた。

「昨日は何かわかった事はあったか?」

「いや、何もわからなかったよ。……ブラウは?」

「まだ帰ってきていないぞ」

「……そっか」

 俺は朝食を食べ終わると出かける準備をした。

「グラナート様」

 家を出ようとしたところでエルツに話しかけられた。

「なに?」

「昨日はお疲れになっていたようですし、今日は行かない方がいいのでは……」

 そういえば、昨日寝ている時にエルツの声がしたような……

「昨日は部屋に来てくれたのに返事ができなくてごめん。よく寝たおかげで疲れがとれたから大丈夫だよ。行ってきます」

 俺は昨日の場所に向かった。


 見張りを始めて三時間ほど経った時、屋敷の入り口から人が出てきた。

 小太りで派手な服を着ている男だ。

 顔は見えないが、おそらくゴルトだろう。

 ゴルトは一人で屋敷を出ると周りを警戒しながら、街の方向に歩いて行った。

 俺は急いで時間を記録するとゴルトを見失わないように自分も林の中を移動した。


 
 ゴルトが屋敷を出てからずっと林の中から尾行をしていたが、ゴルトは林の中からは見えない場所に行ってしまった。

 林の外に出れば尾行を続ける事ができるが……

 どうしよう……

 悩んでいる間もゴルトとの距離は離れているはずだ。

 早く決めないと……
 

 いや、ここで焦ってはダメだ。

 落ち着け……

 俺は深呼吸をする。

 一番大切なのは気がつかれない事だ。

 ゴルトは屋敷を出る時に周りを警戒していたから、いつ後ろを振り返るかわからない。

 ここで林の外に出て、もしゴルトに姿を見られてしまったら、人通りが少ないこの場所では怪しまれてしまう。
 
 ……尾行はここまでにしよう。

 今日はこのまま家に帰るか、ゴルトが戻ってくる時間を調べるためにさっきの……


 いや、待てよ。この先には街がある。

 街なら人がたくさんいるから、もし姿を見られたとしても怪しまれないはずだ。

 ゴルトとは別の道で街に行って、ゴルトを探した方がいいのでは?

 ……そうしよう。

 俺は遠回りをして街に向かった。


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