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第一章
翔子とハク様の活躍
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あまりの眩しさにその場にいた全員が目を閉じたが、次第に光が弱まり目を開けてみるとつるつるとした白蛇の様なハク様の胴体に二枚の鱗がついていた。それはまるで、魚の前びれの様についていたのだった。
「フフッ、なんだか可愛い。……ハッ、神様に向かって可愛いなんて失礼でしたかね?」
「ハク様はとっても優しいから。そんな事は気にしないんじゃないかな?それにウロコを二枚も見つけてくれた翔子さんだもの、それぐらいの権利はあるんじゃない?」
とクシャっとした笑顔でフォローしてくれるカケル。
改めてハク様の姿を全員で見ているとふいに翔子が
「あっ!今お返ししたウロコと基からある逆鱗ではやはり生えている向きが違うんですね!」
「翔子さん凄いな。生えている向きの違いが分かるほどハッキリとウロコが視えてるんだね」
カケルは驚きつつもハク様を見ながら翔子に感謝の気持ちを込めてしみじみと語りはじめた。
「逆鱗の話も含めて、昔からじいちゃんに色々と話してもらってたけど翔子さんほどハッキリとはウロコが視えないから羨ましいな。俺らも子供の頃からハク様を見て育ってきたから、やっぱり親しみは凄くあるんだ。今まで、じいちゃんや翔兄と一緒にハク様のウロコを少しずつ見つけてきて少しずつでもハク様のお姿が変わってくると凄く嬉しいんだ。でも、最近あった大雨で川が増水しそうになった時にハク様がまた、守ってくださった。だからまたウロコが減って蛇に近い姿になってたんだけど……、翔子さん、本当にありがとう」
「昔は確かに、厄災や災害、流行り病なども多かった。しかし、その分人と人とが支え合って想い合い、感謝の心も忘れずに生活していた。だからハクさまの鱗が戻ってくることも多かった。
しかし、最近では人が人にあまり興味を示さなくなってしまって……。街中で困っている人がいても、なかなか手を差し伸べる人がいなくなってしまった。それはそれで思いやりともいえるのかもしれないが、薄情というかなんというか……。ウロコもなかなか見つけにくくなってしまったんじゃ」
「本来、竜神様は龍のお姿になると天へ昇っていかれるんだけど、ハク様はこの神社に留まってご自分の鱗でこの街を守ってくれてるんだ。ウロコがなかなか集まらないから龍のお姿になれないっていうのもあるんだけど……。さっき、翔兄がお社を守ったりって言ったけど、じいちゃんみたいに神社の掃除や参拝客のお相手をしつつ、ハク様のウロコを探してお返しするのが俺らの仕事なんだ」
「そうだったんですね……」
「ハク様のウロコは竜神の力を持っていない人には視えないから、俺や翔兄がみつけてハク様にお返ししてるんだけど、二人でもなかなか集まらないんだ……。じいちゃんには神社にいてもらって、掃除や参拝客のお相手をお願いしてるんだけど、俺らの親は竜神の力を授からなかったから、ハク様のウロコが視えないし……」
「竜神の力を持っていない人にはウロコが視えない……。あっ、あの……。じゃあ、視えている形が違っても、ハク様のウロコが視える私もお二人のお手伝いをすることは可能なんでしょうか?」
「フフッ、なんだか可愛い。……ハッ、神様に向かって可愛いなんて失礼でしたかね?」
「ハク様はとっても優しいから。そんな事は気にしないんじゃないかな?それにウロコを二枚も見つけてくれた翔子さんだもの、それぐらいの権利はあるんじゃない?」
とクシャっとした笑顔でフォローしてくれるカケル。
改めてハク様の姿を全員で見ているとふいに翔子が
「あっ!今お返ししたウロコと基からある逆鱗ではやはり生えている向きが違うんですね!」
「翔子さん凄いな。生えている向きの違いが分かるほどハッキリとウロコが視えてるんだね」
カケルは驚きつつもハク様を見ながら翔子に感謝の気持ちを込めてしみじみと語りはじめた。
「逆鱗の話も含めて、昔からじいちゃんに色々と話してもらってたけど翔子さんほどハッキリとはウロコが視えないから羨ましいな。俺らも子供の頃からハク様を見て育ってきたから、やっぱり親しみは凄くあるんだ。今まで、じいちゃんや翔兄と一緒にハク様のウロコを少しずつ見つけてきて少しずつでもハク様のお姿が変わってくると凄く嬉しいんだ。でも、最近あった大雨で川が増水しそうになった時にハク様がまた、守ってくださった。だからまたウロコが減って蛇に近い姿になってたんだけど……、翔子さん、本当にありがとう」
「昔は確かに、厄災や災害、流行り病なども多かった。しかし、その分人と人とが支え合って想い合い、感謝の心も忘れずに生活していた。だからハクさまの鱗が戻ってくることも多かった。
しかし、最近では人が人にあまり興味を示さなくなってしまって……。街中で困っている人がいても、なかなか手を差し伸べる人がいなくなってしまった。それはそれで思いやりともいえるのかもしれないが、薄情というかなんというか……。ウロコもなかなか見つけにくくなってしまったんじゃ」
「本来、竜神様は龍のお姿になると天へ昇っていかれるんだけど、ハク様はこの神社に留まってご自分の鱗でこの街を守ってくれてるんだ。ウロコがなかなか集まらないから龍のお姿になれないっていうのもあるんだけど……。さっき、翔兄がお社を守ったりって言ったけど、じいちゃんみたいに神社の掃除や参拝客のお相手をしつつ、ハク様のウロコを探してお返しするのが俺らの仕事なんだ」
「そうだったんですね……」
「ハク様のウロコは竜神の力を持っていない人には視えないから、俺や翔兄がみつけてハク様にお返ししてるんだけど、二人でもなかなか集まらないんだ……。じいちゃんには神社にいてもらって、掃除や参拝客のお相手をお願いしてるんだけど、俺らの親は竜神の力を授からなかったから、ハク様のウロコが視えないし……」
「竜神の力を持っていない人にはウロコが視えない……。あっ、あの……。じゃあ、視えている形が違っても、ハク様のウロコが視える私もお二人のお手伝いをすることは可能なんでしょうか?」
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