鮮明な月

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間章 ちょっと合間の話

間話11.工藤英輔の今

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自分の名前が呼ばれなくなって、どれくらい時間がたったのだろう。駅前の有名不動産の二十代の爽やか営業で有名だった自分は一体、どうしてこんな風に変わり果ててしまったのだろうか。
全ての事の発端は自分の持った興味だった。自分のその興味は高校時代の部活動が発端だ。高校時代の部活動は柔道で、部室は酷く汗臭く男臭い。そんな空間の中で過ごしている時、くんずほぐれつする体に性的な興味を持ってしまったのだ。でも、高校時代何かそれにまつわる経験があったわけでもないし、大学では既に柔道から離れてしまったからそれはヒッソリと心の奥底に暖め続けていた興味にしか過ぎなかった。それをなんで思い出してしまったのかと言うと、大学時代のアルバイト先で社員の講師の男に言われたのだ。

「ネットは最高だぞ?最高のツールだよ。」

丁度流行り始めたネットワークの世界で、自分は欲望を大きく膨らませてしまった。同時に意図も容易く、好奇心を満たすことができたのだ。自分は高校時代のあの妄想のせいで高校生の男の子を好きにすることばかりを想像していた。自分より華奢で綺麗な顔立ちの高校生の男子を組み敷き、自分の逸物を肛門に入れ泣きださせる姿を想像して怒張を扱き上げる。やめて、嫌だと懇願する男の子を、無理やり感じさせて自分のものにしてしまう。そんな日々で自分の中で妄想はドンドン膨らむが、大体にしてそう華奢で綺麗な顔をした高校生なんていない。彼女もいるし妄想は妄想に過ぎなかったのだ。
あの夜の街で心許ない様子でボンヤリとしている成田了に、偶然酔いが回った状態で出会うまでは。

「ねぇ、君。」

ボンヤリ座っているだけだと思ったのに、こちらを見た瞳は酷く強く輝いていてまるで宝石のように見えた。綺麗な顔立ち、華奢な手足、女の子にもてそうな何処か男の気配もする。自分の妄想に出てくるのより格上の綺麗な青年が、そこに居て自分の声に訝しげな視線を向けていた。そこら辺周辺が男同士でセックスするような人間が彷徨いている事すら知らないのだろう、彼は行くところがないと呟いたから自分は興奮しながらホテルに誘いこんたのだ。

「や、やめろよっ!何すんだよ!」

ああ、妄想に違わない華奢な体を組み敷いて、その肛門を弄くると青年は掠れた色っぽい悲鳴を上げてもがく。柔らかく甘く自分の怒張を咥え込んだ孔は、淫らにヒクヒクと蠢き極上の快感だった。

「おお!いいっ!気持ちいい!!君の孔、喜んで俺の咥えてるよ!おお!おおっ!」
「やめろっ!ああ!擦んなっ!ああっ!」

悲鳴をあげる高校生の肛門に自分が射精した途端、高校生は糸が切れたように崩れ落ちて自分は妄想が全て叶ったのに歓喜していた。ところがその直後妄想通りだった筈の青年は豹変したのだ。寝ている間にベットに大の字で固定され、足の間に座り込んだ青年は当然のように再び立ち上がった自分の肉棒を深く口の中に咥えこんでいた。

「ね、ねぇ、なにやってんの?君。これ、外してくんない?」

それは新しい妄想の始まりだった。
高校生の肛門を無理矢理犯すと言う妄想の後に、その快感に淫乱に生まれ変わった高校生に口淫で犯される。しかも、その手管は天国のような刺激で、連続の絶頂に自分は白目を向いて失神した。産まれて始めて感じる強い凄まじい快感に、自分は逃げ出した筈なのに毎晩のようにあの時の事を妄想して扱くようになっていく。それなのに、あの凄まじい快感には、自慰では程遠いのだ。あの青年しかそれを自分に与えてくれない。扱き立てても全然足りない。

「工藤くん?」
「あ、はい。」
「お客様待ってるよ?」

すみませんと謝りながら客に接していても、頭の中では不様に失神して絶頂に痙攣することしか考えられなくなっていたのだった。そうして毎晩のように彼の姿を探し続けている最中、彼はまた同じ場所でボンヤリと人波を眺めていたのだ。難癖でもつけに来たのかと一瞬彼が身を固くしたのに、自分はもう一度この間のをしてくれないかと小さな声で懇願してしまってい
た。

「あの時は驚いたし、恥ずかしかったんだ……でも、後からドンドンあの時の事しか考えられなくて……。」

青年は驚きながらもいいよと言う。その姿はどう見ても男慣れしているとは思えず、彼は抱かれた仕返しに彼が出来そうな事で仕返しを試してみたんだろうと自分は考えた。キョトンとしている青年に自分から拘束をしてくれ、あの時のをもう一度してくれと強く強請っていたのだ。
自分から懇願したから、願い通りに執拗に亀頭を責め立てられ失神するまでドライでいかされる。ところが気がつくと青年は今度は気を失っている自分の乳首を弄び始めていた。執拗に丸一日係りで乳首を捏ねたり吸ったり舐め回したり、やがてそこも性感体なのだと自分は知ることになる。

こう言うのチクニーとか亀頭オナニーとか言うんだよな…。

自宅で調べて知る前にとっくに体はそれでドライオーガズムと言うやつで気持ちよくなれるようになってしまっていた。あまりにも気持ちよくて高校生の彼に逆らう気なんて起きないし、彼は高校生の興味なのか容赦なく自分に絶頂を教え込んだ。やがて、ここも気持ちよくなるんだってと前立腺を擦られるようになるまで、たいして時間はかからなかった。
なにしろ、自分の妄想でも高校生に虐げられ感じてしまう情けない自分の姿が、酷く興奮してしまうのにとっくに気がついてしまっていたのだ。やがて家でも乳首と前立腺を弄るようになると、青年は面白そうに笑いながら自分を責め立てる

「高校生に尻の穴弄られて感じるなんて、すっげえ変態だよね、英輔。」
「ああ!言うなよ!そんなことを言わないでくれ!」

次第に仕事にも支障が出始めているのは分かっていたが、快感に飲まれてしまった自分にはどうしようもない。妄想はドンドン卑猥になって、仕事中にも玩具を入れたまま仕事をさせられる妄想に悶えてしまうくらいだ。そんな具合だから、中座して弄くらないと堪えられなくなってしまった自分は、遂に青年に犯してくれと懇願したのだ。

「何でもする、何でもするからぁ!お願いだ!了ぅ!!」

その懇願の声に青年の冷ややかな瞳の奥で、淫らな欲望がキラリと光を放った気がして自分はゴクリと喉をならしていた。
やっと与えられた高校生の怒張に絶頂したのもつかの間、英輔は更に衝撃を受けることになった。成田了が自分を連れていったのは、駅から少し歩いた路地裏の《random face》という如何わしい店。
そうして自分より一回りも年上だろうが均整の取れた肢体と男臭い色気を持った男が、了の狭い孔に子供の腕のような怒張を捩じ込んでいる。しかも、了の猛々しく立ち上がった怒張は自分ではなく、了より綺麗な顔をした泣きぼくろの色っぽい男の孔に飲まれていた。

「んぅっ!宏太ぁ!こ、うたぁっ!いいっ!ああっ!凄い!俺ぇ気持ちいいっ!」

ところが自分は四つん這いで拘束され尻に張型を嵌められ、お預けを食らっている。ひたすらに自分は、淫靡な光景を犬のようにハアハアと興奮の息を吐きながら食い入るように見つめているだけ。

ああ、なんて淫らな光景だろう

高校生の華奢な体を、大人が蹂躙し前後で犯している。自分にもしてと懇願する声を出そうにも、口枷のせいで言葉にすらならない。すっかり蕩けて痙攣して口を半開きにしている了の顔に、自分のお粗末なセックスよりその相手の方がずっと気持ちいいのがわかる。その快感を経験してみたいと欲情の目を向けても誰も自分を見ようとしない。
結局散々お預けをくらって、自分は懇願して了と泣きぼくろの美人に犯してもらった。もう一人にも懇願したが興味がねぇと歯牙にもかけない様子で、本当は了があんなに蕩けてしまう快感を自分も経験したかったのにと悔しくすら思う。

その日から自分はまるで別人になってしまったのだった。
あの光景を自分が経験してみたくて何人かの男と体を重ねてみたし、したいことを相手に訴えてもみた。どうせ、体の相性が悪ければ一夜だけだと、自分は隠すのをやめたのだ。ところが女の二穴のサンドイッチファックはありでも、男の三連結は中々受け入れられないらしい。何しろ真ん中になるには相手二人を満足させないとならないわけで、そういう意味では了は逸材なのだ。男に突っ込まれて快楽によがれるのに、しっかりと男としての機能で怒張を捩じ込める。既に自分は中々怒張しにくくなりつつあって、あの光景を体感するには気持ちのいいことを体が知り過ぎていた。

了を自分のものにしたら、もしかしたら。

そう思うが、了は何故か完全に自分だけのものにはならない。恋人ですらないと、日によって女とデートしていたり、あの店にいったりするのだ。了の日常を観察するうち、自分が成り代われそうな立ち位置の泣きぼくろに脅迫状を送りつけたりもした。

《お前の位置は、俺の方が適任だ、了にお前は勿体無い。何処かに消えろ!ビッチめ!言うことを聞かないと、夜道は用心しろよ!痛い目みせてやる!》

そんなくだらない脅迫状を送るのもどうかとは思うが、了の事を手に入れることだけは諦められない。だから、最終的に了をマンションの一室に監禁するために準備を始めたのだ。防音設備のいい部屋を借りて、快楽に堕とすための道具を揃えて、拘束のための道具も揃えた。

「よぉ。」

そんな時だ。そのマンションのドアの鍵を閉めようとしていた自分に、《random face》のあの男が背後から扉に手をついて鍵ごと手を掴んだのだ。いつの間にと思った瞬間、こちらも柔道の有段者なのに相手は手首を捻りあげ、部屋の中に自分を突き飛ばした。勿論そこから抵抗すればよかったのかもしれないが、鋭い目付きで自分を見下ろして尻を硬い靴で蹴りあげられた瞬間、自分は期待してしまったのだ。あの時了を蕩けさせたあの怒張で、自分もここで犯してもらえるかもしれないと。
奥の部屋まで蹴りつけられ突き飛ばされた自分は、やめて・助けてと哀れに泣きながらも乱暴に服を引き裂かれていく。そして、すっかり興奮しきった体に、手慣れた手つきで自分で準備していた拘束具をとりつけられた。

「お前、……犯されたいんだっけ?」

氷のような声で冷ややかに見下ろされてそう言われると、ゾクゾクと興奮で怒張が下折たつ。それを見下ろした男は靴のまま自分の怒張を踏みにじって、答えはどうしたとサディストの声で低く問う。

「お、おかされたいです!あんたのチンポで犯されたいですっ!中いきしたいです!」
「は?冗談いうな、………馬鹿じゃねぇか?お前。」

冷え冷えとした声でそんな風に詰られ、草々に男に踏みにじられ自分は射精した。そんな自分に男は呆れたように離れると、自分が準備していた玩具を探り出す。

「はん、エグいのばっか準備しやがって。」

ピッチリとしたレザーパンツのポケットから薄いゴム手袋を出した男は、その道具すら手慣れた風に取り出す。ドキドキと胸を高鳴らせる自分の様子を気にするでもなく、男は自分の体を飾り立てていく。
M字開脚で拘束を固定された自分の陰茎を握り、簡単には入らない筈の尿道カテーテルを手早く挿入される痛み。膀胱まで達したカテーテルの先を抜けないように膨らませ、その先はチューブで袋に中身が出るように繋がれてしまう。しかも、陰茎には四つのリングが嵌め込まれ、それに電極が繋がれる。

「よくまぁ、こんなの買うよな?鬼畜か?」

冷ややかな声でそう言いながら電源を入れると、ピリピリとした低周波が走る。男は無造作に電圧をあげて、それは次第に絞り上げるような快感に変わっていく。呻きながらどんなに腰を振っても拘束されて陰茎には触れられないし、尿道のカテーテルのせいで射精は出来ないのだ。それに乳首の先にはお椀型の玩具が装着され、乳首を舐めるように蠢き続ける。

「ひぃ!ひいぃ!いいっ!いいいっ!」
「うるせぇな……少し黙れよ、変態。」

尻の孔には太くピストン運動をする張型を捩じ込まれ、ベルトで固定されてしまう。しかも、男は軽々と自分の足を掴み腰のしたに枕をあてがうと、まるで尻を天井に向けるように固定して頭側に回ると膝に肘をついて頬を支える。

「で?……男にやられたいって……?」
「は、はひぃ!!やって欲しいですぅ!!」

自分がそう叫ぶと男は、全く動じた様子もなく電話を手にした。その時になってやっと、目の前の男の股間が何一つ性的な変化を起こしていなかったことに気がつく。

やがて、自分は目の前の男より中年ぶとりした男達に囲まれて、好色そうな目で見下ろされることになる。男が呼び出したのは、自分のような者を性的な興奮の対象にするような男達だった。つまりあの男は最初から自分に触れる気なんかなかったのだ。ところがその男達に何日も何日も慰みものにされたのに、自分はそれを終いには楽しんでしまった。何しろあの男に乱暴に服を引き裂かれたことにすら、犯されると期待でおったててしまったのだ。何人もの男に犯されて、孕むんじゃないかと思うほど注ぎ込まれて啼かされた。何人男が入れ替わったかすらも分からないし、何人のモノを口と尻で感じたかもわからない。途中なんて気がついたら、自分の勤めている不動産屋の支店長のモノを咥えていた。

「何やってるんだ、工藤!こんな枕営業して!さっさと私のをしゃぶれ!」
「は、はひぃ!!」

情けない声で四つん這いで支店長の怒張をしゃぶりながら、尻には他の男の太い怒張が捩じ込まれる。自分の借りているマンションを知っていてやって来たのはわかるが、何故他の男に混ざっているのか。だけど、もうその辺りには、そんなことはどうでもいいことに変わってしまっていた。
何でか《random face》の奥の部屋で見せた自分の恥態が裏ビデオになって、あっという間に職場を終われてしまうことになった。支店長の方は今も働いているが、犯した英輔を助けるつもりはないのだろう。それに英輔は最後の辺りは無断欠勤だったし、営業も適当だったからゆくゆくはこうなっていたのだと思う。勿論最後のあのマンションでの一件で無断欠勤が週単位になってしまったのだから、どうもこうもなかった。

「悟さん、次出番です。」

最近は芸名でしか呼ばれないし、この先あと何年こうしてやっていけるかも分からない。ただ、自分は起てないと仕事にならない方の男優ではないから、その点はただの男優よりは長くこの仕事でいられるような気がする。

「次のシーン、最初から絡んで。」

淡々とシーンの指示を聞きながら、英輔はこれから自分が犯される相手はあの氷のような男と頭の中で呪文のように呟いていた。



※※※



「なぁ、一つ聞いてもいい?」
「あ?何だ?」

リビングのソファーで何故か抱きかかえられ了が見たかったテレビ番組が終わるまで、宏太が待っていると言う妙な状況。主寝室で見てもいいのだが、あちらで見ると確実に宏太が我慢してくれないのだ。その最中ふっと最近気がついた事を、問いかける。

「工藤……英輔っていたじゃん?俺が初めて仕込んだ奴。」
「あ?誰だ?記憶にねぇな。」

嘘つけと了に言われて宏太は話を反らすように、背後から項に顔を埋めて寝たふりを始める始末だ。これって後ろめたいことしてるってことだよな、っていうかあの辺り男を仕組むなって随分説教されている。あの時は気がつかなかったが、何か知らないところで起きていたような気がするのだ。

「……あんた、なんかした?」
「さて?そろそろ気が済んだら。」
「なぁ、なんかしたろ?あんた。誤魔化されねぇぞ?」
「俺は何にもしてない。」

俺はってことは誰かにさせたのか?と鋭く突っ込まれて宏太は素知らぬふりをきめこむのだった。
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