フォークロア・ゲート

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旅の終わり

46.ロウ・フォード

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古ぼけた光の帯に埃が舞うのが見える。古びた棚には溢れて収まりきらないファイルが、今にも崩れ落ちそうになりながら山になっているが片づける気は今のところない。古びたマホガニーの机の上には、書きかけの書類が広げられたままだ。古びたキッチンでは何時もと同じケトルが、微かに湯が沸きつつある気配を漂わせている。机の前に座って椅子に寄りかかった部屋の主は、マホガニーに机の端に足を組んで乗せたまま転た寝でもしている様子だ。ケトルの音に気がついたように、ユックリとした動きで足をおろしたロウは眼鏡を押し上げながら立ち上がる。ロウ・フォードは欠伸を噛み殺しながら、椅子を軋ませキッチンに向かって歩き出す。濃いブロンドの髪は頬にかかり、薄いブラウンの瞳が縁なし眼鏡の向こうで油断なく光っている。普段から猫背ぎみの体は、身長が高いせいか覆い被さるような姿に見えた。

シャーロックやポワロみたいな顔の売れた探偵が表舞台で大々的に活躍するためには、猟奇的で刺激的な犯罪を繰り返す知能的な犯人が必要だ。しかし、世界中にそんな犯罪者が小説ほど溢れていては、殺される被害者の方がたまったものではない。そう正直に思うのは、きっと自分だけではあるまい。
とは言え、ロウ・フォードも一応は探偵。『名』とつかない探偵は、胡散臭い品物の受け渡しから人探し、はたまた猫や犬探しに至るまで何でも請け負う。探偵と言えば聞こえはいいが結局は何でも屋だ。世間に知られた名探偵とは違って、探偵とは名ばかりで殺人事件の犯人探しなんて大層な仕事だけを特別には選べない。世の中の大部分の探偵は、お金になるのであれば仕事は選べない。そんな事は当然なのだ。

とは言うものの、あんな奇妙キテレツな経験をした探偵は自分くらいなものだろう。

そう考えながら、彼があの不思議な経験をした証拠でもある金の懐中時計を取り出すと丁寧にネジを巻く。胸元には銀の鎖の付いた水晶のような石が、光を反射しながらユラユラと胸元に揺れる。妖精の国だなんて事実は小説より奇なりというやつだと、心の中で呟きながら書き様のない書類の事を眺めた。依頼を達成したものの、あの経験はどうかいてもお伽噺になってしまうのだ。いっそのこと書かないでおこうかとも思うのだが、それもなんだか落ち着かない。マグカップに珈琲を注いで再び机の前に戻ったロウは、何気なくネックレスの石を指先で玩びながら書類を見下ろす。

すると、重々しく扉を開くノックする音が響いていた。

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