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9月

131.アザミ

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何事もなく何時も通りの一日が終わって家に帰ると私宛に手紙が届いていた。手紙って最近は滅多に書くことなんてない。私がそうだからか、普段あまり手紙をもらう機会なんてない気がする。そんなことを考えながら何気なく裏を返して見て目を丸くして驚いた。

木内梓から?

木内梓から手紙なんて正直予想外だった。しかも、夏休みの一件のせいか、木内梓の手紙って何かいいイメージない。なんて、正直最初は考えもしたんだけど、今さら木内梓が手紙で報復ってのもあり得ない気もした。そこまでするのにちゃんと今の住所が書いてあって、差出人もキチンと書かれてる。これで、中身が本当に悪口だったらそれってある意味怖い。ちょっと普通じゃないと思うんだけど、間違ってないよね。ここでもしも夏休みの家出の前と同じタイプの手紙だったら、正直に木内梓は私とは別な人種と考えて今後一切触れないでおくことにしよう。そう考えながらも、自分の部屋じゃなくてリビングで手紙を読むことにしたのは許してほしい。

だって、怖いじゃん、悪口とかだったら。

封筒を緊張して開ける私にママが誰からの手紙って聞くから、素直に木内梓からと答えた。

《拝啓、宮井麻希子様》

リビングのソファーに座って、開いた便箋の書き出しに私は目を丸くした。学校であまり付き合いがなかったから、木内梓の書く字なんて見たことがなかった。この手紙で初めて見たんだけど、木内梓の文字は凄く大人っぽくて綺麗だ。柔らかな色合いの便箋の手紙は、今までの木内梓のイメージとは違ってたおやかで上品に感じる。
ママが心配そうにキッチンカウンター越しに私の事を見てるけど、手紙は思ってたのとは全然違って穏やかな言葉で最初に《あの時はごめんなさい》って。その後に自分の近況を教えてくれる。木内梓の両親はどうやらあの後色々あったみたいで、今は離婚する方向で話し合いを始めたらしい。木内梓は最初どっちについていくかで悩んでいたみたいだけど、今は父親の実家から私立の女子校に通い始めたから父親についていくことになりそうだって。厳格なキリスト教の学校で今迄が嘘みたいに感じるって、制服のスカートの丈を詰めると怒られちゃうらしい。スカートの丈で罰のトイレ掃除は確かに嫌だけど、そうだよなぁ、今までミニスカートみたいにしてたんだもんって思わず苦笑いしてしまう。
木内梓は私が何時も人の事を真っ直ぐに見るのが、本当は羨ましかったって言う。そんなの普通なんじゃって考えたけど、ふっと私は考え込んだ。昨日香苗が言ったみたいに、私には当然って事も他の人からすると違うのかもしれない。木内梓はもしかしたら、人の事が真っ直ぐに見れないで過ごしていたのかな。もし本当にそうだとしたら、少し寂しい気がする。だって、真っ直ぐに人を見れないってことは、相手からも真っ直ぐに見てもらえないってことじゃないだろうか。友達も家族も全部そうだとしたら、凄く寂しいって私は思ってしまう。だって、雪ちゃんとか早紀ちゃんの顔が真っ直ぐに見れないってことでしょ?だから、木内梓は私が羨ましかったみたいだ。自分もそうなりたいから、新しい学校では頑張ってるって。そっか、頑張ってるんだ。
そんな風に素直に感じながら、昨日と同じく今度は木内梓からのごめんなさいを文字で受けとる。

木内梓もどこか変わった気がする。

今の香苗にも凄く感じるけど、木内梓も私の心の中にある前の嫌な感じのイメージとは変わった。私にはこの手紙では本当に彼女が、変わったような気がする。自分の事をちゃんと分かってるっていうか、あのお母さんから独立して木内梓らしくなろうとしてるような。私には表現するのはちょっと難しいけど、けして嫌な感じではないんだ。

「いい手紙だった?」

ママがキッチンカウンタ-の向こうから、私に賑やかな顔で問いかける。きっと答えは分かってて聞いてるんだろうなって、その笑顔には明らかに書いてあるけど。私はもう一度手紙を見下ろしてじっくり読み返してから、ママにそうだと思うって答える。以前とは違った今の木内梓なら、これから改めて友達になれるかなって私は少し感じた。

私も手紙出してみようか。

ちゃんと住所も書いてあるし、これから手紙をやり取りするのは悪くない気がする。もしかしたら、手紙から木内梓とも仲良くなれるかもしれない。今持っているのに何かいい便箋があったかなぁ、なかったら明日買いにいこう。そして、木内梓に手紙を出してみよう。
ママにそう言うと、ママはニッコリ笑ってそれはいいわねと答えてくれる。私にはまだ自分の事しか書くことはないけど、一先ず謝ってくれたから分かったよって伝えてみようと思う。そこから、改めて友達になれるかどうか共通して話せる事があるかどうか試してみるのも、悪いことではない気がする。
ここ暫く気にかかっていた事がハッキリ道筋が見えて、少し気分が軽くなるのを感じながら私は階段を上がって部屋に戻った。
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