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10月

156.ネリネ

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授業の邪魔にならない場所におかれたお化け屋敷の道具が、次第に形になりはじめている。それなのに箱入り娘と言うわけではないんだけど、未だに脱出ゲームの方向性が見えてこない。とは言え進めないと間に合わない部分もあるから、私と香苗は忍耐力を試されているみたいなものだ。廊下の方は仕切りを作っても往来の邪魔にならないから、既に設営が始まろうとしている。気がついたけど、冷たいのと温いのは通路の温度のことらしい。空気を循環させるために自宅から扇風機を持参する大道具班の子達に、何故かこの狭い環境なのにスチームを出す機械を持参する子もいる。そして、何故かトランシーバーを持参している何人か。男の子にはそういう遊び道具があるもんなんだなぁ。そんな呑気な事を言ってる場合じゃないんだけど、脱出出来なかったら、白のゴスロリと白装束のお化けに追いかけられるんだったらどうしよう。そんなことを考えつつ、小道具班の衣装はほぼ完了。ウィッグも完備で着せるだけって感じだ。大道具班が何故か個別に購入したしてきたベニヤ板に穴を開けてるんだけど、何で穴?!もーいい加減脱出ゲームの答えを教えておいて欲しい。教室の後ろ側は授業で使わないからって既に半分設置されてる物もある。大がかりだなぁ、去年の迷路なんてこれに比べたら、子供のオモチャみたいだもん。ただ薄暗い迷路を歩くのに比べたら、気合いの入り方が半端ない2年生。ヤッパリ2年生、3年生の気合いの入り方が尋常じゃないのは1年生も分かるみたいだ。何しろ先生も加わってるからなぁ、越前ガニはこの時期の授業を文化祭の準備に変えてくれたりするし、ミズ櫻井も半分授業を準備に変えてくれたりする。

「櫻井先生、今年は土志田センセとじゃなくて残念ですね。」
「去年の土志田先生の女装凄かったもんね、先生。」

実は去年の土志田先生のメイクは、このミズ櫻井の力作だったのだ。今年は班訳でくじ運が無かったらしいミズ櫻井も去年の事を誉められるのは嬉しいらしい。違う小道具を作りながらミズ櫻井に話しかける。

「先生は、今年は誰となの?」
「保険の大浦先生と音楽の岸野先生よ。」
「女の先生だけなんだ、何するの?」

困ってるのよねぇとミズ櫻井も考えこんでるところをみると、本気でまだ決まっていないらしい。土志田先生達は決まってるみたいだよと誰かが言うのに、ミズ櫻井も腕を組んで考え込んでいる。面白い方面を追求するか、去年みたいに技巧で攻めるかが悩みどころらしいけど、全員が女性だと化粧の技巧は当然だから困るらしい。ってこんなに真剣に文化祭に取り組む学校ってどうなんだろう。おかしなもんだけど、これもまたこの時期の思い出ってことなんだろうな。白ゴスロリを脅かし役の子に着せてウィッグを被せて、更にゴスロリのここをほつれさせた方が怖いとかここに血糊塗る?とか言っているけど、これって最初に体験するの自分だった。やだなぁ、作ってて分かるのに既にちょっと怖いんだけど。これに実際はメイクもして、暗がりで出てくるんだよ?うわ、本気でやだなぁ。

「ここに血糊の方が良いよね?」
「でもさ、ここだと顔も血糊?」
「顔にもメイクする?」

演劇部の子と美術部の子がタッグを組んでるだけじゃなくて、何でか特殊メイクの知識がある子がいて本気でメイクする気になってる。何と、特殊メイクの知識があるのは運動部の久保ちゃんなのだ。ええ?それ用のワックスとか、片栗粉と着け睫毛の糊とティッシュ?そんなんでって思ってたら、予想以上に本物っぽい切り傷を作られてヒギャーッて悲鳴が上がった。そんなんで特殊メイクしたお化けに本気で追いかけられるの、私やだー!

「何でそんな特殊メイク出来るの?!」
「えー、だって皆でハロウィンするときやるように準備してたんだけど、丁度ハロウィンの日だしさ。」

ほら、それ用のコンタクトもあるよって久保ちゃんが、真っ白なコンタクト迄見せてくれる。嫌だっ!久保ちゃんが特殊メイク出来るんだなんて!しかも、白い目の久保ちゃんに切り傷メイク怖すぎる!皆が盛り上がって採用って言ってるけど、最初の時にそれで追いかけられるの私と香苗なんだからねーっ!とんでもないメイクに、ミズ櫻井も盛り上がりに参加しているのは何故?!
半分げんなりした感じで香苗と歩いている私に、早紀ちゃんが苦笑しながら眺めている。あんなに淡々と特殊メイクで盛り上がるミズ櫻井を見てると、何かミズ櫻井チームがゾンビメイクでも本気でやりそうな気が。


ぐったりしながら家に帰った私を待っていたのは、木内梓からの手紙だった。以前とは違って穏やかな木内梓からの手紙は、私も落ち着いて読むことが出来る。木内梓の学校でも同じ辺りが学園祭のようだけど、うちの学校とは違って女子高でキリスト教関連みたい。バザーとかミサとかって、今までの文化祭とは勝手が違うって書いてある。最後に結ばれた、また会う日を楽しみにしてるって言葉が本気なんだって思うと少し嬉しくなって私は思わず微笑んだ。
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