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二度目の7月

443.インパチェンス

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7月25日 火曜日
「うわー、なんか雰囲気変わったねー!」
「そ、そうかしら?」
「ブハッ!そうかしらって御姉様!!うはははっ!」
「香苗ちゃんてばっ!」

駅前で待ち合わせたのは、未だにかなり強い個性ギャルだったイメージが強いけど、今ではカトリック系の女子高で生徒会長をしている木内梓。今更だけど今日の彼女は栗色の髪ではあるけど長い髪を緩く束ねた清楚系お嬢様、元々はこんな綺麗で鮮やかな人なんだって改めて思う。服装もスッカリお嬢様で普段の口調が出たのに、ここ最近連絡を取ってたっていう香苗が真っ先に吹き出して笑いだした。早紀ちゃんもいるんだけど、香苗を止めてるわりに一緒になって笑ったらダメだよーっ

「なによぉ!酷くない?!」
「それでキレたら蹴るの?あははははっ!」
「蹴らないし!!」

何でかとんでもなく大笑いしているけど、こんな風に笑いながら話すなんて、私としても驚きでもある。人間関係って本当に不思議だよね、去年の今ごろここいらでギャルだった梓が、今では完璧お嬢様で学校では皆から御姉様って慕われてるんだって。御姉様って女子高生ってちょっと不思議なところがあるよね、うん。
彼女は彼女なりに色々あって、今はお父さんとお父さん方の祖父母と一緒に暮らしてるって。お母さんとは会ってるのって聞いたら、少し悲しそうな顔で音信不通になっちゃったっていう。去年の夏休みに家に突入してきたご両親なんだけど、どうやら夫婦としては既に破綻してたと彼女は言う。

「だってねぇ……両親それぞれ不倫してて、……今だから言えるけど同じホテル使ってて……自分もそのホテルで遊んでたら、駄目でしょ……。」

そんなことを呆れ顔で言うけど、それって話していいことなの?呆気にとられる私に香苗はだねぇだって。いやいや、それ同意?!同意してていいの?

「ラブホの前で乱闘したんだもん、皆知ってるんだと思ったわ。やっぱり麻希子ってそういう面に鈍いんだ。」

え?そこ鈍いって扱き下ろされるところなの?早紀ちゃんてばそれが私のいいところなのってそれ褒めてなーい!褒めてないよねっ?!っていうか、皆の情報収集能力が異常なんじゃないだろうか……これは瑠璃ちゃんのせいだろうか……。
兎も角そんな感じで去年からの出来事をのんびりお茶しながら話してたら、智美君がフラリと『茶樹』に合流してあの木内?!って唖然としてる。あのって酷いって梓も言うけど、そういいたくなる気持ちも分からないでもない。そうなんだよね、一年は確かに過ぎていてそれぞれ随分大人っぽくなったんだ。智美君なんか十センチ以上も背が高くなって男の子らしくなったし、香苗も早紀ちゃんもそれぞれ背も伸びて女性らしくなった。梓は背は伸びてないって言うけど、智美君にも言われるくらい印象がまるで違うんだ。

「麻希子くらいだな、大きな変化がないのは。……身長が。」

智美君、なんか今言った?サラッとかなり酷いこと言ったよね?しかもおまけみたいに身長がって付け足しだよね?ジトっと睨み付けられて智美君が知らんぷりしてカウンターに逃げてるけど、そうか、家が近くなったから自由に通ってるんだな?!今度絶対奢らせるんだから。
そんなわけで一年近く会ってなかった木内梓の変化に、時間の確かな流れを感じてしまう。一年って長いようでいてあっという間で、気がついたらドンドン時間が過ぎていってしまうのかもしれない。

時間と言えばあのカラオケボックス・エコーが店内を一新して再開してから大分経ってるけど、密かな噂ではカフェコーナーに裏メニューがあって、それは店内の何処かにある秘密のクイズを見つけて答えるとサービスされるなんて噂。しかも以前より部屋数は減ったんだけど、ちょっと強面だけど面白いお兄さんが新しく店員さんで入ったんだ。っていうか新しい店員さんが結構皆強面っぽいから、逆に悪いこと出来ないって、凄くお店は健全で治安が良いお店に変わった。その中でも、なんかね一番コワーイ顔なのに、超可愛いもの好きでカフェラテに3Dで泡で猫とか犬とか作ってくれる人がいるらしい。しかも、瑠璃ちゃんがそのカフェラテ映像を写メってくれたんだけど、うちの白虎くらいラブリーでキュートな猫ちゃんがマグカップから顔を出していた。

これ、どんな人がつくってるの?強面??

瑠璃ちゃん曰く眉はないしスキンヘッドで、横にタトゥーも入ってて、どうみても超ヤンキーなのにいそいそと丁寧にそれを運んできてくれるんだって。そのギャップが面白いらしくて、女子高生が詰めかけてるんだって言う。しかもカフェだけでも利用出来ちゃうし、案外カフェメニューがお洒落で美味しいって密かな人気だ。勿論裏メニューを探しに通ってる人達もいるって話だから、もしかしてチャレンジメニューみたいなものなのかな?って思ってる。
三浦さんの幽霊屋敷は遂に取り壊しが決まった。敷地が大きいこともあるから、住宅地に改めて区画整理されるかもしれない。最近教えてもらったんだけど、実はあのお屋敷は源川先輩のお父さんが設計して建てたんだって言う。源川先輩のお父さんは有名な建築家で、都立の図書館も設計して建ててた人なんだって。

それで先輩も将来の夢が建築家だったのかぁ

そう思ったけど先輩は相変わらずモデルも継続中なので、どっちが最終目標なのかはわからない。でも、最近の先輩は少し変わったからチャラチャラしなくなってるんだよね。時々顔を会わせると癒される~って、目茶苦茶に頭を撫で回されるのは変わらないんだけど。
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