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6月
25.バイカウツギ
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曇り空から今にも雨が降り出しそうな水曜日の帰り道。
本当はテスト明け休みの解放感に爽やかな筈なのに、その空と一緒で今の私の気持ちは真っ黒い曇り空になってしまっている。美術部の部活から帰る間際まで何事もなかった。
香苗は昨日の出来事の後、土志田先生からお説教され親が来るまで指導室に残されたらしい。勿論国語のテストは受けてない扱いになって、土志田先生以外の先生が監督していたテストをどうするか先生達が話し合っているらしい。全部らしいなのは私は何1つ香苗の話に興味がないから、全部耳に入った噂しか知らないからだ。それなのに、なんで今私がこんなに曇天気分なのは、さっき何気なくLINEを見てしまったからだ。
《マキが土志田にカナのことチクったんでしょ?知ってるんだから》
いや、言いがかりにも程があるし、テストの最中どうやってチクるんだよ。大体にしてチクられて困るようなことならしなきゃいいんだよ。そう思うけど、言葉のナイフが言いがかりとはいえ心に刺されば痛いのだ。
《カナが幸せだからって、嫉妬するのはマキの心が狭いんだよ。最低!》
思わず反論したいけど、反論しても無駄なので既読が付こうが返事をしない。なのに既読が付いた途端LINEで電話をかけてきて、とらないでいたら香苗から罵声もどきの文字が大量に投げつけられる。
《卑怯者!》
《カナが可哀想でしょ?!》
《謝れ!》
もう香苗の言ってることの意味が分かんないから、私は彼女からのLINEの通知音をブロックした。もうほっておけばいいんだけど、言いがかりでも心のダメージは既に手遅れだった。
お昼も過ぎたし早く家に帰ろうと思うんだけど、その気になれなくて酷く落ち込んで公園のベンチで項垂れている。
今日早紀ちゃんが一緒じゃなくて本当に良かった。一緒にいたらきっと読んでる最中に泣き出して、早紀ちゃんにちょっとじゃなく心配をかけることになる。そんなことを思いながら、公園のベンチで制服のまま体育座りで膝を抱える女子高生っていうのも品がない。人が通ったらきっとスカートの中が丸見えかもしれないけど、今はそんなこともどうでもいい。
「大丈夫かい?具合悪いの?」
不意にかけられた声は私も聞いたことのない声で、最初それが自分にかけられたとは思えなかった。フワリと肩に触れた手で初めて、今の声が私にかけられていたと気がつき顔をあげる。
「あれ…?もしかして宮井さん?」
「ん?知り合いか?孝。」
確かに聞いた事のある声と聞いた事のない穏やかな静かな大人の声。視線の先には真面目な学級委員長真見塚君の私服姿と声を聞いてなかったら女の人と間違うかと思うような早紀ちゃんみたいな艶々の黒髪の綺麗な顔をした人がいた。
なんで、高校2年になってから私の周りって美形率上がったの?それにしたってここで何で委員長なのよ?どうせなら香坂君が良かった。しかも、委員長何でそんな綺麗な人と公園なんかくるの?
真見塚君にはとんでもない言い掛かりだけど、心の中で愚痴る。我慢しきれずにウルウルと潤んだ瞳の私に、一瞬綺麗なその人は驚いたように眼を丸くした。私の様子に気がついたその人は、穏やかに気品みたいなものを漂わせながら私にそっと香気みたいな良い匂いのするハンカチを差し出してくれる。
女の人かと思うくらいに綺麗な長い睫毛をした瞳にサラサラの黒髪がフワリと揺れて、少しだけ微かなタバコの匂いがする。けど、それもあの合コンで鼻についたニコチンまみれって感じじゃなくって、ほんの微かに薄荷みたいに自然に少しだけ漂う。フワッと一瞬漂うようなその匂いが嫌味じゃなくって、逆に目の前の人が大人の人なんだなぁって思わせる。私が持っている印象のせいもあるんろうけど、目の前の人のタバコの匂いは嫌な感じがしなかった。
差し出されるハンカチを見つめていると私の瞳から堪えきれなくなった涙が落ちて、その人は尚更心配そうに私の顔を見つめている。
大人の男の人って…この人はビックリするくらい綺麗だけど、こういうのを優しく紳士的って言うのかな?
そっと手渡されたハンカチで目元を押さえると、こういうのって初めてされて凄いドギマギしてしまうのに涙が止まらなくなっていた。
横に立つ真見塚君がその人の横で私の顔を見下ろして、背の高い綺麗な男の人に学校で聞くよりもずうっと柔らかい声でクラスメイトなんですって説明している。なんか学校の口調よりずぅっと丁寧な口調で、しかも凄く優しく話してて何だか少し可笑しい。
「何?何か可笑しかった?」
思わず泣き笑いする私に不思議そうに問い詰める真見塚君は、やっぱり何時もと違う。何時もの学校で見る彼よりずっと優しくて身近に感じて、普段よりずっと親近感がある。半べそのまま笑いながら私は、そのいい香りのするハンカチを遠慮なくお借りした。
「委員長…別人みたいだよ。何時ももっとつんけんしてるし、話し方怖いもん。怖い人だと思ってた。」
「なっ…、そんな事ないよっ。」
隣の綺麗な男の人に慌てて私の言葉を説明して訂正しようと言い訳をする真見塚君が可笑しくて笑うと、その人も穏やかに微笑んで私の顔を静かに見下ろしている。
私って最近凄く綺麗な人ばかりを見てる気がする。
香坂君に早紀ちゃん。
それに真見塚君とこの人。真見塚君の横で私を見下ろす人は、今までの人とぜんぜんタイプが違うけど凄く綺麗で穏やかで凄く優しそう。
「……もう、大丈夫かい?」
凄く印象に残る、優しくて静かな大人の男の人の声。
あんまり綺麗な顔で私の事を見ているから、一瞬見とれていた自分に気がついて私は少し赤くなってしまった。恥ずかしいと思いながら、小さくはいと返事をする。
世の中には不公平だけど本当に綺麗な人って言うのがいるんだなぁ。
そんなことを思いながら何とはなしに、ぐしぐしと涙を拭っていたら少し考えたようにその人は黙りこむ。そして、彼女を送っていきなさいとその人にやんわりと言われた真見塚君に何故か自宅まで送ってもらうことになってしまった。
知らない自分が送るより同級生のお前の方が良いだろうとサラリと言われ、少し残念そうな顔をした真見塚君の顔で本当はその人と何か話したかったのかなと少し罪悪感。でも、学校で話すのとは違う姿を見たせいかな、少し真見塚君が身近になったような気がした
本当はテスト明け休みの解放感に爽やかな筈なのに、その空と一緒で今の私の気持ちは真っ黒い曇り空になってしまっている。美術部の部活から帰る間際まで何事もなかった。
香苗は昨日の出来事の後、土志田先生からお説教され親が来るまで指導室に残されたらしい。勿論国語のテストは受けてない扱いになって、土志田先生以外の先生が監督していたテストをどうするか先生達が話し合っているらしい。全部らしいなのは私は何1つ香苗の話に興味がないから、全部耳に入った噂しか知らないからだ。それなのに、なんで今私がこんなに曇天気分なのは、さっき何気なくLINEを見てしまったからだ。
《マキが土志田にカナのことチクったんでしょ?知ってるんだから》
いや、言いがかりにも程があるし、テストの最中どうやってチクるんだよ。大体にしてチクられて困るようなことならしなきゃいいんだよ。そう思うけど、言葉のナイフが言いがかりとはいえ心に刺されば痛いのだ。
《カナが幸せだからって、嫉妬するのはマキの心が狭いんだよ。最低!》
思わず反論したいけど、反論しても無駄なので既読が付こうが返事をしない。なのに既読が付いた途端LINEで電話をかけてきて、とらないでいたら香苗から罵声もどきの文字が大量に投げつけられる。
《卑怯者!》
《カナが可哀想でしょ?!》
《謝れ!》
もう香苗の言ってることの意味が分かんないから、私は彼女からのLINEの通知音をブロックした。もうほっておけばいいんだけど、言いがかりでも心のダメージは既に手遅れだった。
お昼も過ぎたし早く家に帰ろうと思うんだけど、その気になれなくて酷く落ち込んで公園のベンチで項垂れている。
今日早紀ちゃんが一緒じゃなくて本当に良かった。一緒にいたらきっと読んでる最中に泣き出して、早紀ちゃんにちょっとじゃなく心配をかけることになる。そんなことを思いながら、公園のベンチで制服のまま体育座りで膝を抱える女子高生っていうのも品がない。人が通ったらきっとスカートの中が丸見えかもしれないけど、今はそんなこともどうでもいい。
「大丈夫かい?具合悪いの?」
不意にかけられた声は私も聞いたことのない声で、最初それが自分にかけられたとは思えなかった。フワリと肩に触れた手で初めて、今の声が私にかけられていたと気がつき顔をあげる。
「あれ…?もしかして宮井さん?」
「ん?知り合いか?孝。」
確かに聞いた事のある声と聞いた事のない穏やかな静かな大人の声。視線の先には真面目な学級委員長真見塚君の私服姿と声を聞いてなかったら女の人と間違うかと思うような早紀ちゃんみたいな艶々の黒髪の綺麗な顔をした人がいた。
なんで、高校2年になってから私の周りって美形率上がったの?それにしたってここで何で委員長なのよ?どうせなら香坂君が良かった。しかも、委員長何でそんな綺麗な人と公園なんかくるの?
真見塚君にはとんでもない言い掛かりだけど、心の中で愚痴る。我慢しきれずにウルウルと潤んだ瞳の私に、一瞬綺麗なその人は驚いたように眼を丸くした。私の様子に気がついたその人は、穏やかに気品みたいなものを漂わせながら私にそっと香気みたいな良い匂いのするハンカチを差し出してくれる。
女の人かと思うくらいに綺麗な長い睫毛をした瞳にサラサラの黒髪がフワリと揺れて、少しだけ微かなタバコの匂いがする。けど、それもあの合コンで鼻についたニコチンまみれって感じじゃなくって、ほんの微かに薄荷みたいに自然に少しだけ漂う。フワッと一瞬漂うようなその匂いが嫌味じゃなくって、逆に目の前の人が大人の人なんだなぁって思わせる。私が持っている印象のせいもあるんろうけど、目の前の人のタバコの匂いは嫌な感じがしなかった。
差し出されるハンカチを見つめていると私の瞳から堪えきれなくなった涙が落ちて、その人は尚更心配そうに私の顔を見つめている。
大人の男の人って…この人はビックリするくらい綺麗だけど、こういうのを優しく紳士的って言うのかな?
そっと手渡されたハンカチで目元を押さえると、こういうのって初めてされて凄いドギマギしてしまうのに涙が止まらなくなっていた。
横に立つ真見塚君がその人の横で私の顔を見下ろして、背の高い綺麗な男の人に学校で聞くよりもずうっと柔らかい声でクラスメイトなんですって説明している。なんか学校の口調よりずぅっと丁寧な口調で、しかも凄く優しく話してて何だか少し可笑しい。
「何?何か可笑しかった?」
思わず泣き笑いする私に不思議そうに問い詰める真見塚君は、やっぱり何時もと違う。何時もの学校で見る彼よりずっと優しくて身近に感じて、普段よりずっと親近感がある。半べそのまま笑いながら私は、そのいい香りのするハンカチを遠慮なくお借りした。
「委員長…別人みたいだよ。何時ももっとつんけんしてるし、話し方怖いもん。怖い人だと思ってた。」
「なっ…、そんな事ないよっ。」
隣の綺麗な男の人に慌てて私の言葉を説明して訂正しようと言い訳をする真見塚君が可笑しくて笑うと、その人も穏やかに微笑んで私の顔を静かに見下ろしている。
私って最近凄く綺麗な人ばかりを見てる気がする。
香坂君に早紀ちゃん。
それに真見塚君とこの人。真見塚君の横で私を見下ろす人は、今までの人とぜんぜんタイプが違うけど凄く綺麗で穏やかで凄く優しそう。
「……もう、大丈夫かい?」
凄く印象に残る、優しくて静かな大人の男の人の声。
あんまり綺麗な顔で私の事を見ているから、一瞬見とれていた自分に気がついて私は少し赤くなってしまった。恥ずかしいと思いながら、小さくはいと返事をする。
世の中には不公平だけど本当に綺麗な人って言うのがいるんだなぁ。
そんなことを思いながら何とはなしに、ぐしぐしと涙を拭っていたら少し考えたようにその人は黙りこむ。そして、彼女を送っていきなさいとその人にやんわりと言われた真見塚君に何故か自宅まで送ってもらうことになってしまった。
知らない自分が送るより同級生のお前の方が良いだろうとサラリと言われ、少し残念そうな顔をした真見塚君の顔で本当はその人と何か話したかったのかなと少し罪悪感。でも、学校で話すのとは違う姿を見たせいかな、少し真見塚君が身近になったような気がした
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