聖少女暴君

うお座の運命に忠実な男

文字の大きさ
6 / 41
第一章 廃部決定! 天文部

1-5 うっしー(護国寺 牛次郎)登場

しおりを挟む
「おれだ。入るぞ」
 その声が掛け声のように姫川さんは素早くゲームを隠した。
 スーツ姿の男性が入ってくる。誰だろう? わたしはおろおろした。

「護国寺先生! 新入生来てるよ」
 姫川さんの声に反応した彼はわたしに挨拶した。
「おれは護国寺ごこくじ牛次郎うしじろうといいます。この部の顧問です」

「うしじろー⁉」
 わたしは素っ頓狂な声をあげてしまった。
「本名ですか?」
 目が点になって尋ねた。

「……本名です」
 護国寺先生は咳払いする。
「笑ったら護国寺先生 可哀そうでしょ!」
 姫川さんが叱責した。

「誰も笑ってないって。ヒメ」
 折笠さんがつっこむ。
 護国寺先生はもう一度咳払いした。

 彼はコトジョの国語教師。三一歳。女性陣から見上げられるほどの長身で偉丈夫である。黒髪で眼鏡をかけた誠実な男性だが、名前のせいで女生徒たちからは舐められている。だが、素材は良く一部の生徒からは慕われているらしい。

 青みがかかったワイシャツの上にジレ(袖のない胴着)を身につけているのがトレードマーク。ネクタイの色が曜日によって決まっているらしい。
 護国寺先生はまっすぐな瞳でわたしを見つめた。ハンサムでドキドキしてしまう。でも、名前がなあ。

「自己紹介よろしくお願いします」
「わたしは鳴海千尋といいます」
「本当にこの部でいいの? 鳴海さん」
「……はい」

 姫川さんのいう格闘ゲームの大会に出場するのはちょっといきなりだけど、学生生活のサポートを姫川さんたちから受けられるのは悪くない。わたしはそう思っていた。

「天文部は来年廃部なのにきみも物好きだなあ」
「ええーっ⁉ 廃部ってどういうことですか!」
「まさか姫川! 伝えてないのか⁉」
 護国寺先生もわたしと同じくらい驚いていた。どういうこと⁉

 とうの姫川さんと折笠さんは涼しい顔をしている。
「まーまーまー、告知はしてたよねぇ。折笠さん?」
「してましたねぇ、姫川さん」
「ちゃんと張り紙してありましたよ。そこに。体験期間中ずっと貼ってありましたけど気がつきませんでしたか?」

 姫川さんは小さな球形ロリポップキャンディをお口から外して壁を指す。
 カーテンで見え隠れしている入り口のドア付近に張り紙があってそこに虫眼鏡でなければ見えないような文字で書かれている言葉にわたしはとび上がるほど驚いた。


『一年以内に目覚ましい活動実績を認められないと天文部は……廃部する』

「そんなぁ! 部活詐欺ですよ~」
 わたしが鳴き声をあげると護国寺先生は手が震えるほど怒っていた。
「こら~姫川、折笠! またやったな!」
 教室に先生の声がこだました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...