14 / 41
第二章 バスケ部からの逃亡者
2-5 文学少女 村雨さん天文部へようこそ!
しおりを挟む
【鳴海千尋 視点】
姫川さんが部室に村雨さんを連れてきたときわたしこと鳴海千尋は目を丸くした。
彼女は天文部に入部するという。
どんな魔法を使ったのか?
「お姉さまがわたくしを助けてくださったんです」
「それ、本当に姫川さん? ドッペルゲンガ―じゃないの」
「失礼だな」
わたしが問いただすと横から当人の声が飛んできた。
ひとつだけ確かなことはわたしが姫川さんたちに困っているクラスメートがいると話した数日後に問題が解決していたことだ。
「一年B組、村雨初音と申します。二月二二日生まれのうお座O型です。尊敬している人はナイチンゲールです。嫌いなものは暴力的な人とイヌ。趣味は小説を書くことです」
「小説を書くのが趣味ってすごいね」
姫川さんはいつもの調子で小さなロリポップキャンディを咥えた。
「はい。お姉さま。小説家のヤロウとナクヨムに投稿してます」
「ガチ勢だ」姫川さんが村雨さんに微笑みかける。
「そんなことないです」
「文芸部に行かなくてよかったの?」
「部活見学には行ったんですけど、なんか違うなって。文芸部がいままでに作った文芸誌が置いてあったんですけど、高校生が書いたようなつたないものばかりで」
「あなたも高校生だけどね」
「プロ意識がないんです。文学性の違いでやめました」
「バンドみたいだね」
「文芸部を諦めてバスケ部に入部したのが間違いのはじまりでした」
「終わった話はいいじゃん。で、どんな話書くの?」
「『セカイの終わりには黄昏こそが相応しい』というタイトルで探偵小説です。クトゥルー神話がモチーフです」
「面白そう」
「やだ、恥ずかしい! 人前で作品の内容を語ったのはお姉さまがはじめてです。お姉さまがわたくしのはじめての人です」
「誤解を招く言い方ね」折笠さんが横から口をだす。
「ペンネームは?」
「うお座の運命にあらがう女です」
「まじか。ところでまだ話してないことがあってさ。天文部はあと一年で廃部します」
「ええっ、そうなのですか?」
村雨さんは姫川さんの衝撃の告白に綺麗な声を響かせた。
「この部は去年の活動実績が少ないことを生徒会に睨まれてね。今年一年で目覚ましい実勢がなければ廃部です」折笠さんが補足説明した。
「生徒会と対立……! すごい! 漫画みたい! 子どものころから憧れていました! 夢のようです!」
村雨さんはぴょんぴょん飛び跳ねる。一生の夢が叶ったときのよう。
「村雨さん感性がおかしい!」
たまらずわたしが村雨さんに指摘する。
「小説家として貴重な体験になりそうです」
「ヒメ、これで部員が四人になったわ。こんな回りくどいことしなくても勧誘に力を入れたほうが早かったと思うけど」
折笠さんが髪の房をもてあそぶ。
「そのことはいうなし! ラ・フランス。eスポーツ部発足まであとひとり!」
「いうなしと洋梨をかけているのですね。お姉さまの知性の高さが垣間見えるジョークです」村雨さんは姫川さんを褒め称えた。
「解説しないで!」
「ところでeスポーツ部ってなんのことですか?」
村雨さんはきょとんとしている。そりゃそうだよ。村雨さんはこの部を天文部だと思っているんだから。
姫川さんが部室に村雨さんを連れてきたときわたしこと鳴海千尋は目を丸くした。
彼女は天文部に入部するという。
どんな魔法を使ったのか?
「お姉さまがわたくしを助けてくださったんです」
「それ、本当に姫川さん? ドッペルゲンガ―じゃないの」
「失礼だな」
わたしが問いただすと横から当人の声が飛んできた。
ひとつだけ確かなことはわたしが姫川さんたちに困っているクラスメートがいると話した数日後に問題が解決していたことだ。
「一年B組、村雨初音と申します。二月二二日生まれのうお座O型です。尊敬している人はナイチンゲールです。嫌いなものは暴力的な人とイヌ。趣味は小説を書くことです」
「小説を書くのが趣味ってすごいね」
姫川さんはいつもの調子で小さなロリポップキャンディを咥えた。
「はい。お姉さま。小説家のヤロウとナクヨムに投稿してます」
「ガチ勢だ」姫川さんが村雨さんに微笑みかける。
「そんなことないです」
「文芸部に行かなくてよかったの?」
「部活見学には行ったんですけど、なんか違うなって。文芸部がいままでに作った文芸誌が置いてあったんですけど、高校生が書いたようなつたないものばかりで」
「あなたも高校生だけどね」
「プロ意識がないんです。文学性の違いでやめました」
「バンドみたいだね」
「文芸部を諦めてバスケ部に入部したのが間違いのはじまりでした」
「終わった話はいいじゃん。で、どんな話書くの?」
「『セカイの終わりには黄昏こそが相応しい』というタイトルで探偵小説です。クトゥルー神話がモチーフです」
「面白そう」
「やだ、恥ずかしい! 人前で作品の内容を語ったのはお姉さまがはじめてです。お姉さまがわたくしのはじめての人です」
「誤解を招く言い方ね」折笠さんが横から口をだす。
「ペンネームは?」
「うお座の運命にあらがう女です」
「まじか。ところでまだ話してないことがあってさ。天文部はあと一年で廃部します」
「ええっ、そうなのですか?」
村雨さんは姫川さんの衝撃の告白に綺麗な声を響かせた。
「この部は去年の活動実績が少ないことを生徒会に睨まれてね。今年一年で目覚ましい実勢がなければ廃部です」折笠さんが補足説明した。
「生徒会と対立……! すごい! 漫画みたい! 子どものころから憧れていました! 夢のようです!」
村雨さんはぴょんぴょん飛び跳ねる。一生の夢が叶ったときのよう。
「村雨さん感性がおかしい!」
たまらずわたしが村雨さんに指摘する。
「小説家として貴重な体験になりそうです」
「ヒメ、これで部員が四人になったわ。こんな回りくどいことしなくても勧誘に力を入れたほうが早かったと思うけど」
折笠さんが髪の房をもてあそぶ。
「そのことはいうなし! ラ・フランス。eスポーツ部発足まであとひとり!」
「いうなしと洋梨をかけているのですね。お姉さまの知性の高さが垣間見えるジョークです」村雨さんは姫川さんを褒め称えた。
「解説しないで!」
「ところでeスポーツ部ってなんのことですか?」
村雨さんはきょとんとしている。そりゃそうだよ。村雨さんはこの部を天文部だと思っているんだから。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる