聖少女暴君

うお座の運命に忠実な男

文字の大きさ
15 / 41
第二章 バスケ部からの逃亡者

2-6 初対面ですけどお慕いしてます

しおりを挟む
【鳴海千尋 視点】
 姫川さんは村雨さんに事情を説明した。いま天文部の部室には姫川さん、折笠さん、村雨さん、そしてわたしこと鳴海千尋がいる。

 天文部に所属しながら格闘ゲームの練習をして、一一月の大会GEBOゲボに出場して実績をつくることがわたしたちの目標だ。すべてはeスポーツ部発足のために。

「そうだったのですね。わたくしはお姉さまへのご恩をかえすため三千世界のどこまでもついていきます!」

「それはあたしへの愛の言葉と受け取っていいのかしら。いやだわ。積極的ね。まだ知り合って日が浅いのに」

 デジャヴ……わたしのときと同じこといってる。
「はい! 受け取ってください」

 村雨さんのこの対応は姫川さんにとっても望外の驚きだったようだ。

「お互いコンプライアンスに留意しましょうね」姫川さんは村雨さんの瞳を直視した。

「はい! お姉さま」

「大丈夫かしら。このコたちの思考回路は」
 折笠さんが髪の房をもてあそびながら感想をいう。わたしは折笠さんの思考回路も心配なのだが……。


「おれだ。入るぞ」
 そのタイミングで護国寺先生が扉を開けて室内に入ってきた。護国寺先生は折笠さんから話を聞いてだいたい事情を把握しているらしい。村雨さんに簡単な挨拶を済ませた。

「バスケ部の顧問はこの学校出身で強引な指導が問題視されている。だけど古株だから誰も口だしできないんだ。教師としておれがきみを全力で守ります。村雨さん、安心して学校生活を送ってくださいね」

 背の高いハンサムな護国寺先生に見下ろされて村雨さんは戸惑っている。この子、男子に免疫ないんだろうな。

「その言葉は愛の告白と受け取ってよろしいのですか。わたくしにはお姉さまがいるのですが……。なんて積極的な殿方。護国寺先生、初対面ですけどお慕いしています」

 その発言にはその場にいる全員が驚愕した。村雨さんは惚れっぽい女の子なようだ。
Господинゴースパジ!(ロシア語でなんてことだ)あたしが好きなんじゃねーんかい!」
 姫川さんのお口からロリポップキャンディが零れる。

「わたくしは、背が高くて眼鏡をかけた男性が好きなんです。先生はわたしの理想を体現しています」
 村雨さんの印象が変わった。おとなしそうに見えるけど相当思い込みが激しい。

「いやいやいや」
 護国寺先生は振り子人形のように頭を振った。

「よかったじゃん。うっしー。女子高生と結婚できるよ」
 姫川さんは意地悪そうに新しいロリポップキャンディを咥えた。

「いやいやいやいや。村雨さん、だったね。気持ちは嬉しいが先生は生徒と付き合えません。わかるね」

「わたくしが成人したら付き合えますか?」

「いや、そういうことではなくてね」

「やめたほうがいいわよ。うっしー童貞だし」
 折笠さんが腕組みしながら脚を組んだ。

「誰が童貞だ。性的逸脱セクシャル・ハラスメントだぞ」
 童貞が図星なのかわたしには測りかねたが、護国寺先生は絶句するほど怒っている。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...