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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て
4-7 真打登場! 九条沙織
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入り口では九条さんが迎えに立っていた。もうひとり女子が付き添っている。
「九条さ~ん!」
姫川さんが車から身を乗りだして手を振る。
「危ないですよ。姫川さん」
わたしが制止すると姫川さんは一同を振りかえった。
「みんな、準備はいい? 昼は対戦。夜は天体観測。徹夜だよ」
『ラジャ!』みんな敬礼する。
九条さんのお父さんに宿の位置を聞いてから車を降りた。合宿終わりに温泉を予約したのだ。
「遅かったですわね」
九条さんはおしとやかな大和撫子で見るからにお嬢様だが、指ぬきグローブが目に付く。黒髪ロングの髪型に健康的な肌と黒曜石をくりぬいたようにも見える瞳が印象的。茶道部部長として活動しながら格闘ゲームをたしなむお嬢さんだ。
ミスマッチにも見える指ぬきグローブは、指を冷やさないために着けているという。
「姫川さん迷子になったんだって?」九条さんの隣にいる女性が話しかける。
「迷子じゃないよ。バスがね」
「あ~、地獄表」
現地の人たちも二時間に一本のバスのことを地獄表と呼んでいるらしい。
「みんな、鳳女学院茶道部部長の九条さんと天文部部長の南里さん。挨拶して」
姫川さんは鳳女学院天文部部長同士南里さんとお知り合いらしい。その御縁がもとで今回の合宿の話になったのだ。
挨拶を済ませると南里さんは時計を見た。現在時刻は午後二時ごろだ。
「いまのうちに機材屋上に運んじゃって。PCとか充電が必要ならいまのうちに。
今年はNyanTuelでライブ配信するから。撮影中は個人情報とか口走らないように」
NyanTuelとは世界最大の動画配信サイトである。アカウントさえ持っていれば誰でも動画を配信できる。
ペルセウス座流星群を女子高生が動画配信するのだ。
「収益化できますかね?」
わたしが口走ると折笠さんは苦笑いした。
「期待しないほうがいいよ。需要がね」
「女子高生には需要あるんじゃね?」
姫川さんが冗談をいう。
「流星群が検索ワード上位にあがるでしょうか。一般にいうバズるとは検索上位ワードから爆発的に閲覧数が増えることです。ペルセウス座流星群は一部の人しか関心を持っていないと思われますわ」
九条さんが会話に割って入った。彼女は理知的で聡明だ。
配信の話は前もって共有していたのでわたしたちも必要な機材を持ち込んでいた。
折笠さんがライブストリーミング対応4Kビデオカメラを提供してくれるのでその画像をライブ中継する。屋上に無線LANは通っていないがモバイルルーターを延長コードで設置する。
姫川さんも折笠さんもメカに強い。配信専用アカウントも取得済みだった。
「パソコンがなくても配信できるカメラなんてすごいですね。おいくらですか」
わたしが折笠さんに尋ねる。
「このカメラ法人向けだから。五〇万円以上するわよ。パパに頼んで貸してもらったの」
「パッパすげえ」わたしは敬語も忘れてしまった。
「星空は標準の設定ではよく映らないの。ISO感度を調節しながらマニュアルフォーカスする。夏でもレンズヒーターはあった方が良い。手ぶれ補正はカットして、三脚はマストね」
※ISO感度とはカメラの光をとらえる感度のこと。星空は昼間にくらべ暗いので、星を映すには調節が必要。
「す、すごい。機械に強い女子って尊敬します」
村雨さんは折笠さんがなにをいっているのかもよくわからないみたい。
わたしは説明されればなんとなくわかるという程度。
「もっと言ってくれてもいいわよ」
折笠さんは髪の房をくるくると巻いた。
「詩乃さん。謙虚って言葉知ってますか」姫川さんの指摘が入る。
「う……」
以前の姫川さんとのやり取りの復讐をされて折笠さんは髪の房をいじりながら視線を泳がせる。
「さ、設置が終わったら対戦だよ!」
「カメラだけは夜になってから持ち込むからね」
話題を切り替えた姫川さんと折笠さんはもう仲直り。良い関係だなあ。
長かった第四章ももうすぐクライマックス。次のエピソードをお楽しみあれ~!
「九条さ~ん!」
姫川さんが車から身を乗りだして手を振る。
「危ないですよ。姫川さん」
わたしが制止すると姫川さんは一同を振りかえった。
「みんな、準備はいい? 昼は対戦。夜は天体観測。徹夜だよ」
『ラジャ!』みんな敬礼する。
九条さんのお父さんに宿の位置を聞いてから車を降りた。合宿終わりに温泉を予約したのだ。
「遅かったですわね」
九条さんはおしとやかな大和撫子で見るからにお嬢様だが、指ぬきグローブが目に付く。黒髪ロングの髪型に健康的な肌と黒曜石をくりぬいたようにも見える瞳が印象的。茶道部部長として活動しながら格闘ゲームをたしなむお嬢さんだ。
ミスマッチにも見える指ぬきグローブは、指を冷やさないために着けているという。
「姫川さん迷子になったんだって?」九条さんの隣にいる女性が話しかける。
「迷子じゃないよ。バスがね」
「あ~、地獄表」
現地の人たちも二時間に一本のバスのことを地獄表と呼んでいるらしい。
「みんな、鳳女学院茶道部部長の九条さんと天文部部長の南里さん。挨拶して」
姫川さんは鳳女学院天文部部長同士南里さんとお知り合いらしい。その御縁がもとで今回の合宿の話になったのだ。
挨拶を済ませると南里さんは時計を見た。現在時刻は午後二時ごろだ。
「いまのうちに機材屋上に運んじゃって。PCとか充電が必要ならいまのうちに。
今年はNyanTuelでライブ配信するから。撮影中は個人情報とか口走らないように」
NyanTuelとは世界最大の動画配信サイトである。アカウントさえ持っていれば誰でも動画を配信できる。
ペルセウス座流星群を女子高生が動画配信するのだ。
「収益化できますかね?」
わたしが口走ると折笠さんは苦笑いした。
「期待しないほうがいいよ。需要がね」
「女子高生には需要あるんじゃね?」
姫川さんが冗談をいう。
「流星群が検索ワード上位にあがるでしょうか。一般にいうバズるとは検索上位ワードから爆発的に閲覧数が増えることです。ペルセウス座流星群は一部の人しか関心を持っていないと思われますわ」
九条さんが会話に割って入った。彼女は理知的で聡明だ。
配信の話は前もって共有していたのでわたしたちも必要な機材を持ち込んでいた。
折笠さんがライブストリーミング対応4Kビデオカメラを提供してくれるのでその画像をライブ中継する。屋上に無線LANは通っていないがモバイルルーターを延長コードで設置する。
姫川さんも折笠さんもメカに強い。配信専用アカウントも取得済みだった。
「パソコンがなくても配信できるカメラなんてすごいですね。おいくらですか」
わたしが折笠さんに尋ねる。
「このカメラ法人向けだから。五〇万円以上するわよ。パパに頼んで貸してもらったの」
「パッパすげえ」わたしは敬語も忘れてしまった。
「星空は標準の設定ではよく映らないの。ISO感度を調節しながらマニュアルフォーカスする。夏でもレンズヒーターはあった方が良い。手ぶれ補正はカットして、三脚はマストね」
※ISO感度とはカメラの光をとらえる感度のこと。星空は昼間にくらべ暗いので、星を映すには調節が必要。
「す、すごい。機械に強い女子って尊敬します」
村雨さんは折笠さんがなにをいっているのかもよくわからないみたい。
わたしは説明されればなんとなくわかるという程度。
「もっと言ってくれてもいいわよ」
折笠さんは髪の房をくるくると巻いた。
「詩乃さん。謙虚って言葉知ってますか」姫川さんの指摘が入る。
「う……」
以前の姫川さんとのやり取りの復讐をされて折笠さんは髪の房をいじりながら視線を泳がせる。
「さ、設置が終わったら対戦だよ!」
「カメラだけは夜になってから持ち込むからね」
話題を切り替えた姫川さんと折笠さんはもう仲直り。良い関係だなあ。
長かった第四章ももうすぐクライマックス。次のエピソードをお楽しみあれ~!
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