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第3話 舞踏会、食べていたはずなのに……
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「ああ、優雅で素晴らしい」
「そちらこそですわ」
王宮で舞踏会が行われている。
シャンデリアが輝いて、夜の大広間を照らしていて、その下でボクはグラスと皿を持ちながらため息をついた。
まさかこんな舞踏会に出ているなんて。
……いや、正確には”出てしまっている”のが正しいかもしれない。
大広間では、鮮やかなドレスや礼服に身を包んだ令嬢や子息達が、ダンスをしている。
注目になっているのは、リュカ殿下かな。
中央付近で踊っている男性。
殿下は金色の髪を揺らしながら、誰と踊っても穏やかに微笑む。
完璧な王子様ーーそう呼ばれるのも当然だ。
だからこそ、リュカ殿下と誰が踊るか、リュカ殿下は誰を想っているのか。
この夜の”答え”になる。
令嬢達はみんな、彼のポジションを狙っている。と思う。
アデリナ様やゼナイド様は勿論だし、ロランスだって殿下の隣を狙うかな。
他にも候補はあるかな。考えたら時間なんてあっという間だけれども。
だからこそ、これまで学院でアピールしてきたんだよね。殿下も同じ、王立ルミナリエ学院に通っているから。
積極的に会話したり、プレゼントしたり。
で、今日がその結果発表。
誰と踊るか、何曲目に踊るかで殿下が誰を好きか決まるようなもの。
最後の曲で踊った人が、婚約に近い人物かな。勿論、一番目というのもあるけれど。
つまり最初と最後に踊る人物が婚約に近いと言える。
ちなみに今日、一番目に踊ったのはアデリナ様。人気者の令嬢。
彼女が近いのかな、婚約には。
ひょっとするとアデリナ様が婚約するかも。
ボク? ボクはどうでもいい。
「ねえ、ポラリス。踊りどうだったかしら、見ていたのよね?」
と、ゼナイド様がボクに話しかけてきた。
ゼナイド・ヴィエンヌ。ボクが慕っている令嬢。
さっきも言った通り、リュカ殿下を狙っていて、別の子息と踊ったタイミングの感想を訊いている。
見ていたけれども、感想の語彙が浮かばない。
「素晴らしかったです。殿下とは絶対に踊れますよ」
「そう思う? 勿論よね」
「はい!」
ボクが出てきた言葉をそのまま伝えると、ゼナイド様は喜んでいる。
ゼナイド様は、白い扇子を軽く振りながら微笑む。その仕草ひとつで周囲の空気が変わる。怖いけれど、どうしようなく惹かれてしまうーーそんな人。
喜びながら自信満々で、また別の子息とダンスをしていた。
そんなボクなんだけれども……ほぼ舞踏会で料理を食べるだけだったりする。
だって、上手く踊れる自信は無いし、ゼナイド様を慕っているって言っても、ボクはいわゆる取り巻き。
殿下と結ばれるというのは興味ない。
同じ取り巻きのロランスは、運が良かったらと思っているみたいだけど。
ボク自身、最初だけどこかの子息とダンスはしたけれども、それからは休むように料理を食べている。
金色の皿には、香草で焼いた白身魚、葡萄酒で煮た鶏肉、チーズの香りがするパイ。他にも色々と……
舞踏会の料理美味しいし、食べ放題だし。
好きなだけ食べようと思いながら参加しようと思ったのもあったし。
だからボクは皿に盛って、食べ続けていた。
でもドレスが汚れるのだけは注意しているけれど。そんな事をしたら、ゼナイド様が怒るだろうし。
とはいえ、こんな事をしているから、どっちにしても怒られるかもしれないけれど。
「最後、殿下は誰を選ぶの?」
「是非ともわたくしに!」
会場が盛り上がっている。
「次がラストだね」
ここでリュカ殿下と踊る人物が、婚約に近いしプロポーズをされたようなもの。
だから結ばれたい人達はドキドキしながら、殿下が誰の手を取るかを見守っている。
「さて、こっちも……」
ボクはそんな事を気にせず、大皿の料理を取っていた。この皿は牛肉のワイン煮。
こっちはまだ食べていないからね。
のんきに考えながら自分の小皿に料理を盛り終えた。
その時……
「ポラリス・バルカナバード嬢」
「は、はい……えっ……?」
振り返ってみると、リュカ殿下が目の前に立っていた。
ドキリとしながら固まってしまう。
手には料理を盛り付けた皿を持ったまま。
「最後の曲、一緒に踊っていただけませんか?」
殿下はボクに手を差し出していた。
「えっ、ボクが……?」
どういう事なんだろう。
ボクが最後の曲で殿下と一緒に踊る……信じられない。冗談に思えてしまう。
だって、ゼナイド様の取り巻きな上、ダンスそっちのけで料理を食べまくっている、ボクと一緒になんて。
不釣り合いにもほどがある。
「私は君と踊りたい」
アデリナ様やゼナイド様の驚きと怒り、嫉妬の表情がこっちに向かっている。
優雅だった微笑みは消えているし、扇子がはっきりと音を立てて閉じていた。
視線が氷の刃みたいに、突き刺さってくる。
ああ、これはオーバーキルで体力ゼロになる。当然ボクが。
これは修羅場になりそう……もうなっているかも。
「君を舞踏会に来たときから気になっていた。そして食べている姿を見て踊りたいと思えたんだ」
うわぁ、食べていたのが決定打じゃん。
断れば良いんだろうけれども、殿下の誘いを断ったら逆に立場が……
もういいや。
ボクは冷や汗たらたら流しながら、にっこりと手に取る。
「……喜んで」
何でこうなったんだろう。
ボクは元々この世界の住民じゃないのに……
実を言うと、ボクは江坂芯星という小学生の男の子だった。
でもある日、この世界に転生してゼナイド様の取り巻きの令嬢に。
確かどこかのライトノベルかマンガで見たような感じだけれども……まあ思い出せない。違ったかな。
小学生だった日常と違っているから、何とかついていくのに必死だった。
取り巻きだけれども、そこまで目立たないように動いた。結局はヒロインのアデリナ様か所謂悪役令嬢のゼナイド様のどちらかに決まるだろうから。
どっちかっていうと、ゼナイド様を慕っているから、ゼナイド様が結ばれてほしかったよ。
なのに……
(どうしてボクが最後の一曲で踊っているんだろう、リュカ殿下と)
視線が痛い。特に二人からのが。
舞踏会が終わったら後が怖すぎる……修羅場確定じゃん。
けれども、ダンスで失敗したら殿下に恥をかかせてしまう。
夢見心地とは遠い状況で、ボクは踊っていったのだった。
こうしてボクも婚約候補になったのだった。
「そちらこそですわ」
王宮で舞踏会が行われている。
シャンデリアが輝いて、夜の大広間を照らしていて、その下でボクはグラスと皿を持ちながらため息をついた。
まさかこんな舞踏会に出ているなんて。
……いや、正確には”出てしまっている”のが正しいかもしれない。
大広間では、鮮やかなドレスや礼服に身を包んだ令嬢や子息達が、ダンスをしている。
注目になっているのは、リュカ殿下かな。
中央付近で踊っている男性。
殿下は金色の髪を揺らしながら、誰と踊っても穏やかに微笑む。
完璧な王子様ーーそう呼ばれるのも当然だ。
だからこそ、リュカ殿下と誰が踊るか、リュカ殿下は誰を想っているのか。
この夜の”答え”になる。
令嬢達はみんな、彼のポジションを狙っている。と思う。
アデリナ様やゼナイド様は勿論だし、ロランスだって殿下の隣を狙うかな。
他にも候補はあるかな。考えたら時間なんてあっという間だけれども。
だからこそ、これまで学院でアピールしてきたんだよね。殿下も同じ、王立ルミナリエ学院に通っているから。
積極的に会話したり、プレゼントしたり。
で、今日がその結果発表。
誰と踊るか、何曲目に踊るかで殿下が誰を好きか決まるようなもの。
最後の曲で踊った人が、婚約に近い人物かな。勿論、一番目というのもあるけれど。
つまり最初と最後に踊る人物が婚約に近いと言える。
ちなみに今日、一番目に踊ったのはアデリナ様。人気者の令嬢。
彼女が近いのかな、婚約には。
ひょっとするとアデリナ様が婚約するかも。
ボク? ボクはどうでもいい。
「ねえ、ポラリス。踊りどうだったかしら、見ていたのよね?」
と、ゼナイド様がボクに話しかけてきた。
ゼナイド・ヴィエンヌ。ボクが慕っている令嬢。
さっきも言った通り、リュカ殿下を狙っていて、別の子息と踊ったタイミングの感想を訊いている。
見ていたけれども、感想の語彙が浮かばない。
「素晴らしかったです。殿下とは絶対に踊れますよ」
「そう思う? 勿論よね」
「はい!」
ボクが出てきた言葉をそのまま伝えると、ゼナイド様は喜んでいる。
ゼナイド様は、白い扇子を軽く振りながら微笑む。その仕草ひとつで周囲の空気が変わる。怖いけれど、どうしようなく惹かれてしまうーーそんな人。
喜びながら自信満々で、また別の子息とダンスをしていた。
そんなボクなんだけれども……ほぼ舞踏会で料理を食べるだけだったりする。
だって、上手く踊れる自信は無いし、ゼナイド様を慕っているって言っても、ボクはいわゆる取り巻き。
殿下と結ばれるというのは興味ない。
同じ取り巻きのロランスは、運が良かったらと思っているみたいだけど。
ボク自身、最初だけどこかの子息とダンスはしたけれども、それからは休むように料理を食べている。
金色の皿には、香草で焼いた白身魚、葡萄酒で煮た鶏肉、チーズの香りがするパイ。他にも色々と……
舞踏会の料理美味しいし、食べ放題だし。
好きなだけ食べようと思いながら参加しようと思ったのもあったし。
だからボクは皿に盛って、食べ続けていた。
でもドレスが汚れるのだけは注意しているけれど。そんな事をしたら、ゼナイド様が怒るだろうし。
とはいえ、こんな事をしているから、どっちにしても怒られるかもしれないけれど。
「最後、殿下は誰を選ぶの?」
「是非ともわたくしに!」
会場が盛り上がっている。
「次がラストだね」
ここでリュカ殿下と踊る人物が、婚約に近いしプロポーズをされたようなもの。
だから結ばれたい人達はドキドキしながら、殿下が誰の手を取るかを見守っている。
「さて、こっちも……」
ボクはそんな事を気にせず、大皿の料理を取っていた。この皿は牛肉のワイン煮。
こっちはまだ食べていないからね。
のんきに考えながら自分の小皿に料理を盛り終えた。
その時……
「ポラリス・バルカナバード嬢」
「は、はい……えっ……?」
振り返ってみると、リュカ殿下が目の前に立っていた。
ドキリとしながら固まってしまう。
手には料理を盛り付けた皿を持ったまま。
「最後の曲、一緒に踊っていただけませんか?」
殿下はボクに手を差し出していた。
「えっ、ボクが……?」
どういう事なんだろう。
ボクが最後の曲で殿下と一緒に踊る……信じられない。冗談に思えてしまう。
だって、ゼナイド様の取り巻きな上、ダンスそっちのけで料理を食べまくっている、ボクと一緒になんて。
不釣り合いにもほどがある。
「私は君と踊りたい」
アデリナ様やゼナイド様の驚きと怒り、嫉妬の表情がこっちに向かっている。
優雅だった微笑みは消えているし、扇子がはっきりと音を立てて閉じていた。
視線が氷の刃みたいに、突き刺さってくる。
ああ、これはオーバーキルで体力ゼロになる。当然ボクが。
これは修羅場になりそう……もうなっているかも。
「君を舞踏会に来たときから気になっていた。そして食べている姿を見て踊りたいと思えたんだ」
うわぁ、食べていたのが決定打じゃん。
断れば良いんだろうけれども、殿下の誘いを断ったら逆に立場が……
もういいや。
ボクは冷や汗たらたら流しながら、にっこりと手に取る。
「……喜んで」
何でこうなったんだろう。
ボクは元々この世界の住民じゃないのに……
実を言うと、ボクは江坂芯星という小学生の男の子だった。
でもある日、この世界に転生してゼナイド様の取り巻きの令嬢に。
確かどこかのライトノベルかマンガで見たような感じだけれども……まあ思い出せない。違ったかな。
小学生だった日常と違っているから、何とかついていくのに必死だった。
取り巻きだけれども、そこまで目立たないように動いた。結局はヒロインのアデリナ様か所謂悪役令嬢のゼナイド様のどちらかに決まるだろうから。
どっちかっていうと、ゼナイド様を慕っているから、ゼナイド様が結ばれてほしかったよ。
なのに……
(どうしてボクが最後の一曲で踊っているんだろう、リュカ殿下と)
視線が痛い。特に二人からのが。
舞踏会が終わったら後が怖すぎる……修羅場確定じゃん。
けれども、ダンスで失敗したら殿下に恥をかかせてしまう。
夢見心地とは遠い状況で、ボクは踊っていったのだった。
こうしてボクも婚約候補になったのだった。
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