3 / 35
序章
第3話
しおりを挟む「金髪に緑の目しか生まれない王家。そこから生まれた黒髪に金色の目の子供。……端的に言えば、あなたは迫害される寸前です。」
王家の色は特別ですから……貴族にとってですけど、とサラは力なく呟く。
「……一貴族でしかない私は、あなたになにも、何もしてあげられない……本当に、私は無力でしかない……」
俯いてぎゅっと手をにぎりしめるサラの目から、ぱたぱたと涙がこぼれ落ちる。
「ソフィア様は、あなたを産んですぐにお隠れになられました。……あなたはソフィア様にお顔立ちがよく似ていらっしゃるけれど、きっとあの方よりもっと素敵な人になる。だから、だからっ…………負けないでください。」
目を傷つけそうな勢いでごしごしと擦り、私の目を凛とした顔で見つめるサラの手は震えていた。
「……ソフィア様は、殿下に4つ、贈り物を残されています。」
サラはゴソゴソと懐を探し、美しい金色のバングルを手に取る。
1つ目、と彼女は私の手にそれをかけた。
「バングルです。ソフィア様が1番好きだったコルチカムの花のバングル。最後の日も、これを付けていました。魔法がかけられていて、体に合わせて小さくなったりします。あなたしか取り外しできませんから、安心してください。」
2つ目、と彼女はどこからか取りだした銀と紅で装飾された短剣を私の手に握らせた。重い。赤子の私にはとても重い。サラもそれに気づいたのか、慌てて私から取り返す。
「ソフィア様がよく使っていたもの……なんですけど……これは、どうしましょう……えっと、机の隠しだなに置いておきます。」
少し微妙な空気が流れたが、気を取り直して3つ目の贈り物を待つ。
「3つ目は、あなたのもうひとつの力について。これは、ここぞという時に使ってください。」
そう言うと、彼女は私の目の端を拭うようにをそっと撫ぜた。
「ソフィア様は祝福を持っておりました。名は 〝交換〟 強い力を相手に与えることの出来る能力です。副作用は……命を引き換えにすること。」
サラはそこで大きく息を吸った。
「ソフィア様は殿下を産んだ後、もう長くないことを悟ったそうです。殿下のこれからを憂いておられました。せめて、これからに役立つように、と交換を行い、殿下に〝魔眼〟を与えました。使い方は……殿下ならその時がくればわかる、と。非常に強い力です。〝緑の癒し〟なんて比にならないくらい強い、伝説のような力。悪用されませんように。」
サラは、私の目を真っ直ぐに見つめると言った。
「殿下に話しかけていると、あなたがまだ1歳にもなっていない生まれたての赤ちゃんであることを忘れてしまいそうになります。……きっと、私の話していること、全部理解しているんでしょうね。」
4つ目は、あなたの名前です。
「ライラ様。あなたのお名前は、ライラ。
殿下、忘れないでください。ソフィア様は、あなたを愛しておられました。もちろん、私も。」
月の光が差し込む部屋で、サラはゆっくりと言った。
「その夜のような黒髪も、月や星のきらめきのような瞳も、全て美しい。愛しております。ライラ様。」
サラはしばらく私を抱きしめると、ゆっくりと歩き始めた。
「……そろそろ行かなくては。大丈夫です、王妃様はソフィア様と仲のいい方でした。第一王子殿下も素晴らしい方です。きっと、あなたを守ってくださいます。」
キタルファの星、第2王子殿下。
「それでは、またいつか。……ありがとうございました。」
サラはゆっくりと私の額に口付け、ベッドに下ろすと、名残惜しそうに振り返りながらドアの向こうへ消えていった。
私は、呆然としながら手に嵌められたバングルを撫ぜた。
第2王子殿下?第2、王子?
私は、お姫様じゃ……ない?
私、男になった?ちょっと待って、確かに男を倒せるくらい格闘技は強かった。ただ、私の心は、今も昔も乙女のまま!!
恋愛対象は、男でしかないが!!??
というか、私の名前、ライラって言うんだ……初めて知った……………………
…………いや、女の子じゃん…………
男だと、お姫様になれない……
一睡も出来ないまま、夜は更けていった。
いつの間にか、窓からは朝日が差し込んでいる。
そういえば私は、この世界でサラしか見たことがない。私のお世話は誰がしてくれるのだろうか。
ゴンゴン
乱暴にノックの音がなると、ドアががちゃりと雑にあけられる。メイド服を着た女がずかずかと入ってくると、汚いものを触るように私の服をぬがせたり、窓を開けたりする。
「あぁ!イライラする!なんで私が第2王子の世話なんかしないといけないのよ!!王族のくせに黒髪?冗談じゃないわ!化け物みたいな金色の目!!あぁ、汚らわしい!」
なるほど、こういう扱いを受けるのか。
これは早く動けるようにならないと……キツイ。というか痛い。服が擦れる……
メイド服の女はひと通り私の世話を終えると、虫を見るような目で私のことをじろりと睨む。
「あんたは王族といえども欠陥品。第一王子のスペアよ。覚えておきなさい!!」
そう言うと、またずかずかと部屋からでて、乱暴にドアを閉めて行った。
ふーん。まあ、前世とそう変わらないか。住む場所があるだけましかな。
扱いがどこまで酷くなるのか…不安だけど。
腕に嵌められた金色のバングルを小さな手で引っ掻き、私は少しでも早く歩けるように思考をめぐらせ始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる