461 / 909
第二十七章 壊されかけた者共と契りを結べ
瓶詰めの蝿
しおりを挟む
アルとベルゼブブが起こした騒ぎの後、僕は全身の激痛に耐え切れず、アルに頼んで尾で絞め落としてもらった。
その後部屋に運ばれたらしく、起きた時にはもう痛みは無かった。けれど、首を絞めさせた事で喉を少し痛めていた。
「……でよ、王様。こいつどうする?」
朝食を終えた後も全員がダイニングに集まっている。僕の膝の上にはアザゼルが乗っていて、アルは不機嫌そうだ。
しかし、視界を借りるのに一番合うのはヴェーンとアザゼルなのだから仕方ない。他の者は魔力が視え過ぎて気持ち悪くなってしまう。
「めっちゃ壁舐めてんじゃん……」
食器が片付けられた後、机の真ん中にはナッツの瓶──ベルゼブブ入りが置かれていた。昨日まではナッツが幾つか残っていて、底や壁にカスが付いていたらしいが、今は洗った後のように綺麗になっている。
「この穴から出てこねぇの?」
アザゼルは瓶を持ち、蓋に空けられた指ほどの太さの穴を指差す。この穴は腹が減ったと喚いているらしいベルゼブブの為にヴェーンが開けたもので、ジャムやジュース、酒や食べカスなどがここから入れられる。
『目玉より小さい穴から出られると思う? 太ってるし』
「それもそうだな……」
瓶詰めにされているのは可哀想だと思うが、見た目が丸々と太った気持ちの悪い蝿であるせいで、気持ち悪いとの感想しか出てこない。虫は嫌いだ。
『アルちゃんと喧嘩して、その罰として閉じ込めてる……って認識でいいんだよね?』
「いんじゃね? なぁ?」
ヴェーンがこちらを向く。僕に聞いているのか。
「よく分かんないけど……」
「お前がやったんだろ?」
「そうだっけ……」
『捕まえて瓶詰めにしたのは僕とダンピール。蝿にしたのはヘル』
そうだ、確か──アルが怪我をしているのを見て、我を失って「死ね」と願ったような──
…………死ななくて良かった。
『喧嘩の理由、本人と茨木とガキンチョに聞いてまとめたんやけど……どっちもどっちやない?』
『まぁまぁ、恋人を餌扱いされたら怒りますって。酔ってはったし、しゃーないんちゃいます? なぁ? 狼はん』
僕は喧嘩の理由なんて聞いていない。最近、僕の居ないところで話を進めたり物事を決めたりしていないか? 最近に限った話でもないが……魔物使いとして僕にはリーダーらしさが足りない。
「それはそうなんだけどよ、喧嘩両成敗って言葉もあるし、そいつにも罰いると思わねぇ?」
「へっ……? アルに何するの? ダメだよ、やめて!」
『頭領が依怙贔屓はよぅないで』
「で、でも……」
「落ち着けよ。何も鞭打ちとか言ってねぇだろ? 今日から一週間買い出し係、でどうだ? 誰もやりたがらねぇからずっと俺やってんだぜ?」
買い出し係? その程度なら構わないか。今までヴェーンに押し付けていたのも良くない。今後は交代制で、罰則としての役割も設けようか。
『私に買い物が出来るだろうか』
「出来る出来る、店番だいたい淫魔だし」
『……罰を受ける以上、私は文句は言わないが……一人で行くのか?』
アルは僕に目線をやる。視界はアザゼルのものなので、端に鼻先が見える程度だが──
どうやら僕と離れたくないらしい、可愛い。
「ガキを外に出すのは危険だぜ」
『視力はともかくとして、認知湾曲の魔法は掛けてあるよ?』
「……あのクソ淫魔、アシュメダイは魔物使いだって知ってるだろ? 今、魔物使いに見えないとしても、あいつは捕まえられる」
『協力的だと思ってたけど……』
「だろうな。淫蕩に明け暮れる馬鹿を演じて……甘い蜜を吸い尽くすのがあいつのやり方だ。ガキがこの国に来た時からずっと狙ってるんだよ」
ヴェーンは落ち着きなく辺りを見回している。
その仕草に僕も不安を覚えた、アシュの協力は善意からではない──というのは頭に留めておかなければ。
「……この国に住んでる吸鬼はみんなあいつに吸った魔力の何割かを上納してる。税みたいなもんだ。だから──あいつの魔力は、多分、今は……そこの蝿を上回ってる」
「えっ……!? そ、そんな……ベルゼブブは、最強だって……」
『今は、ね。つまり……アルちゃんの魔力をヘルが供給すれば?』
「供給し続けられるんなら蝿の方が上だろうけどよ。出来んのか?」
アルの生成速度と、僕の供給速度、それに僕の耐久力。それらが少しでも足りていなければ勝てないと。
「…………それに、この家に入れるようにしてるだろ? 気を付けろよ」
『……ヘルの部屋には入れないようになってるけど……とりあえず、結界の設定変えておくよ』
「ま、用心に越したことはないってこった。なぁガキ、お前が信用していいのは誰だ? この蝿はダメだなぁ、ずっと餌だと思って狙ってやがる。なら鬼共は? チビは? 兄弟は本当に大丈夫か? その狼も……危険だったろ? 俺もだな、お前の血が欲しくて仕方ない」
視界の左端に映ったヴェーンの瞳が紅く輝く。おそらく魔力視でなければ見えない輝きだ。
「こ、怖くなること言わないでよ」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ。じゃ、狼。早速だけど、このメモを──」
ヴェーンはアルに買い物メモを渡す。アルは財布を咥え、家を出た。
危険は無いだろうとは思うが、不安だ。
「……よし、ガキ。やるぞ」
「えっ? 何を?」
「…………お前なぁ。なんで狼に買い出し係させたか分かってんのか?」
罰だろう。聞いたばかりの話を忘れている訳がない、馬鹿にするな──と反論する。
「はぁー……ダメだな。馬鹿。狼がいちゃ話せねぇことあるだろ?」
ヴェーンは懐から折り畳んだ紙を取り出し、僕の顔の前にやって……アザゼルに渡した。そこに描かれていたのはネックレスだ。少しずつデザインが違うものが幾つかあった。
「あっ……え? だから……買い出し? 罰とかじゃなくて?」
『気付いてなかったの? しっかりしてよ、僕の弟だろ?』
『ええタイミングで喧嘩してくれたなぁ』
どうやら僕とアル以外の全員は買い出しの罰が口実であると分かっていたらしい。顔から火が出るほど恥ずかしいとはまさにこの事か。
『蝿さん、ちょっとこれ咥えて』
兄はナッツ瓶の蓋に空いた穴から触手を差し入れる。ベルゼブブはそれに飛びつき、幾本もの舌を絡めた。
兄は咳払いをし、アザゼルの顔を自分の方へ向ける。
『あー、ヘルシャフト様? 聞こえてます? いやぁ先日はすいませんね、ちょっとカッとなっちゃって……しばらくこれでいいですよ、楽ですし。あ、ご飯はちゃんと入れてくださいね』
「えっ、あ、あの、にいさま?」
『貴方様には私の声が聞こえないようなので、兄君に通訳してもらっています。さて、本題に入りますよ』
兄の口から兄の声でベルゼブブが話している──通訳と言うより、取り憑いているように見える。
『先輩の好きな物は貴方様。なので、先輩に送るべき石は……移身石です!』
「うつしみ……?」
『ええ、発掘されてすぐは透明の石で……始めに素手で触れた生き物の魔力と同じ輝きを放つようになる変わった石です。虹よりも鮮烈に、虹よりも多くを魅せる魔力、その輝きこそ先輩の理想の色!』
それなら黄だの青だのと迷わなくてもいい。僕はベルゼブブが兄の姿で話しているような違和感を拭って、どこで手に入るのかと尋ねた。
『ズバリ、神降の国! だけです』
「だ、だけ?」
『代々の国王の冠に使われるんですよ。それ以外の用途は無し、流通も無し』
そんなもの存在しないも同じではないか。
『採掘場の場所は分かってますから見張り薙ぎ倒して一欠片砕いてきましょう』
「えぇ……強盗?」
『王室にコネクションが無いんですから仕方ないでしょ。希少なものですから行って頼んでも門前払いですよ』
コネクションならある。僕は彼らの恩人だ、神具を取り返し、第二王子の生命を救った。宝石の一つや二つ要求しても構わないだろう。
柔らかい表現でそう伝えた。
『へー……なら、行ってみます? 採掘場乗り込んだ方が早いと思いますけど……』
「恨み買うのも嫌だし」
『…………ま、そうですね。創造神とは敵対、外の神とも敵対、となればアース神族や神降の連中は取り込んでおきたいところです』
兄は触手を切断し、瓶の中に残さず入れる。僕の腕を引っ張って立ち上がらせ、笑顔を貼り付けた。
『じゃあ、行こう!』
「えっ、い、今から?」
『早い方が良いよね?』
「それはっ……そうだけど」
そんな急に、と僕が戸惑っていると、兄は元気に手を挙げる。
『付いてくる人ー!』
『俺らは無理や、前やらかしたからな』
「俺は仕事あるし……」
「幼女、触手の生えたおじさんに付いて行かない」
各々の理由で断っていく。鬼達やヴェーンは仕方ないし、アザゼルは付いてこられても困る。
石を貰ってくる程度なら二人で平気だ。そう言おうとしたその時、視界が兄の手に覆い隠された。
『だ、れ、が……おじさん……?』
「痛っ、痛い痛いいだだだだっ! じょっ、冗談冗談!」
どうやら兄がアザゼルの頭を掴んでいるらしい。
『ふん、行こ。ヘル』
視界共有を切り、兄の腕に抱き着く。ガシャンと音がしたが──まさか、アザゼルを投げたのか? 流石は兄だ、二人で行きたくなくなってきた。
「……フェルは?」
『えっ? ぁ、あの……ぼ、僕は、留守番するよ……』
朝食の間もずっと黙っていた。帰って来てからフェルには元気がない。
僕は宝石を貰って戻ったらフェルとちゃんと話そうと心に決め、空間転移の浮遊感に身を任せた。
その後部屋に運ばれたらしく、起きた時にはもう痛みは無かった。けれど、首を絞めさせた事で喉を少し痛めていた。
「……でよ、王様。こいつどうする?」
朝食を終えた後も全員がダイニングに集まっている。僕の膝の上にはアザゼルが乗っていて、アルは不機嫌そうだ。
しかし、視界を借りるのに一番合うのはヴェーンとアザゼルなのだから仕方ない。他の者は魔力が視え過ぎて気持ち悪くなってしまう。
「めっちゃ壁舐めてんじゃん……」
食器が片付けられた後、机の真ん中にはナッツの瓶──ベルゼブブ入りが置かれていた。昨日まではナッツが幾つか残っていて、底や壁にカスが付いていたらしいが、今は洗った後のように綺麗になっている。
「この穴から出てこねぇの?」
アザゼルは瓶を持ち、蓋に空けられた指ほどの太さの穴を指差す。この穴は腹が減ったと喚いているらしいベルゼブブの為にヴェーンが開けたもので、ジャムやジュース、酒や食べカスなどがここから入れられる。
『目玉より小さい穴から出られると思う? 太ってるし』
「それもそうだな……」
瓶詰めにされているのは可哀想だと思うが、見た目が丸々と太った気持ちの悪い蝿であるせいで、気持ち悪いとの感想しか出てこない。虫は嫌いだ。
『アルちゃんと喧嘩して、その罰として閉じ込めてる……って認識でいいんだよね?』
「いんじゃね? なぁ?」
ヴェーンがこちらを向く。僕に聞いているのか。
「よく分かんないけど……」
「お前がやったんだろ?」
「そうだっけ……」
『捕まえて瓶詰めにしたのは僕とダンピール。蝿にしたのはヘル』
そうだ、確か──アルが怪我をしているのを見て、我を失って「死ね」と願ったような──
…………死ななくて良かった。
『喧嘩の理由、本人と茨木とガキンチョに聞いてまとめたんやけど……どっちもどっちやない?』
『まぁまぁ、恋人を餌扱いされたら怒りますって。酔ってはったし、しゃーないんちゃいます? なぁ? 狼はん』
僕は喧嘩の理由なんて聞いていない。最近、僕の居ないところで話を進めたり物事を決めたりしていないか? 最近に限った話でもないが……魔物使いとして僕にはリーダーらしさが足りない。
「それはそうなんだけどよ、喧嘩両成敗って言葉もあるし、そいつにも罰いると思わねぇ?」
「へっ……? アルに何するの? ダメだよ、やめて!」
『頭領が依怙贔屓はよぅないで』
「で、でも……」
「落ち着けよ。何も鞭打ちとか言ってねぇだろ? 今日から一週間買い出し係、でどうだ? 誰もやりたがらねぇからずっと俺やってんだぜ?」
買い出し係? その程度なら構わないか。今までヴェーンに押し付けていたのも良くない。今後は交代制で、罰則としての役割も設けようか。
『私に買い物が出来るだろうか』
「出来る出来る、店番だいたい淫魔だし」
『……罰を受ける以上、私は文句は言わないが……一人で行くのか?』
アルは僕に目線をやる。視界はアザゼルのものなので、端に鼻先が見える程度だが──
どうやら僕と離れたくないらしい、可愛い。
「ガキを外に出すのは危険だぜ」
『視力はともかくとして、認知湾曲の魔法は掛けてあるよ?』
「……あのクソ淫魔、アシュメダイは魔物使いだって知ってるだろ? 今、魔物使いに見えないとしても、あいつは捕まえられる」
『協力的だと思ってたけど……』
「だろうな。淫蕩に明け暮れる馬鹿を演じて……甘い蜜を吸い尽くすのがあいつのやり方だ。ガキがこの国に来た時からずっと狙ってるんだよ」
ヴェーンは落ち着きなく辺りを見回している。
その仕草に僕も不安を覚えた、アシュの協力は善意からではない──というのは頭に留めておかなければ。
「……この国に住んでる吸鬼はみんなあいつに吸った魔力の何割かを上納してる。税みたいなもんだ。だから──あいつの魔力は、多分、今は……そこの蝿を上回ってる」
「えっ……!? そ、そんな……ベルゼブブは、最強だって……」
『今は、ね。つまり……アルちゃんの魔力をヘルが供給すれば?』
「供給し続けられるんなら蝿の方が上だろうけどよ。出来んのか?」
アルの生成速度と、僕の供給速度、それに僕の耐久力。それらが少しでも足りていなければ勝てないと。
「…………それに、この家に入れるようにしてるだろ? 気を付けろよ」
『……ヘルの部屋には入れないようになってるけど……とりあえず、結界の設定変えておくよ』
「ま、用心に越したことはないってこった。なぁガキ、お前が信用していいのは誰だ? この蝿はダメだなぁ、ずっと餌だと思って狙ってやがる。なら鬼共は? チビは? 兄弟は本当に大丈夫か? その狼も……危険だったろ? 俺もだな、お前の血が欲しくて仕方ない」
視界の左端に映ったヴェーンの瞳が紅く輝く。おそらく魔力視でなければ見えない輝きだ。
「こ、怖くなること言わないでよ」
「ははっ、悪ぃ悪ぃ。じゃ、狼。早速だけど、このメモを──」
ヴェーンはアルに買い物メモを渡す。アルは財布を咥え、家を出た。
危険は無いだろうとは思うが、不安だ。
「……よし、ガキ。やるぞ」
「えっ? 何を?」
「…………お前なぁ。なんで狼に買い出し係させたか分かってんのか?」
罰だろう。聞いたばかりの話を忘れている訳がない、馬鹿にするな──と反論する。
「はぁー……ダメだな。馬鹿。狼がいちゃ話せねぇことあるだろ?」
ヴェーンは懐から折り畳んだ紙を取り出し、僕の顔の前にやって……アザゼルに渡した。そこに描かれていたのはネックレスだ。少しずつデザインが違うものが幾つかあった。
「あっ……え? だから……買い出し? 罰とかじゃなくて?」
『気付いてなかったの? しっかりしてよ、僕の弟だろ?』
『ええタイミングで喧嘩してくれたなぁ』
どうやら僕とアル以外の全員は買い出しの罰が口実であると分かっていたらしい。顔から火が出るほど恥ずかしいとはまさにこの事か。
『蝿さん、ちょっとこれ咥えて』
兄はナッツ瓶の蓋に空いた穴から触手を差し入れる。ベルゼブブはそれに飛びつき、幾本もの舌を絡めた。
兄は咳払いをし、アザゼルの顔を自分の方へ向ける。
『あー、ヘルシャフト様? 聞こえてます? いやぁ先日はすいませんね、ちょっとカッとなっちゃって……しばらくこれでいいですよ、楽ですし。あ、ご飯はちゃんと入れてくださいね』
「えっ、あ、あの、にいさま?」
『貴方様には私の声が聞こえないようなので、兄君に通訳してもらっています。さて、本題に入りますよ』
兄の口から兄の声でベルゼブブが話している──通訳と言うより、取り憑いているように見える。
『先輩の好きな物は貴方様。なので、先輩に送るべき石は……移身石です!』
「うつしみ……?」
『ええ、発掘されてすぐは透明の石で……始めに素手で触れた生き物の魔力と同じ輝きを放つようになる変わった石です。虹よりも鮮烈に、虹よりも多くを魅せる魔力、その輝きこそ先輩の理想の色!』
それなら黄だの青だのと迷わなくてもいい。僕はベルゼブブが兄の姿で話しているような違和感を拭って、どこで手に入るのかと尋ねた。
『ズバリ、神降の国! だけです』
「だ、だけ?」
『代々の国王の冠に使われるんですよ。それ以外の用途は無し、流通も無し』
そんなもの存在しないも同じではないか。
『採掘場の場所は分かってますから見張り薙ぎ倒して一欠片砕いてきましょう』
「えぇ……強盗?」
『王室にコネクションが無いんですから仕方ないでしょ。希少なものですから行って頼んでも門前払いですよ』
コネクションならある。僕は彼らの恩人だ、神具を取り返し、第二王子の生命を救った。宝石の一つや二つ要求しても構わないだろう。
柔らかい表現でそう伝えた。
『へー……なら、行ってみます? 採掘場乗り込んだ方が早いと思いますけど……』
「恨み買うのも嫌だし」
『…………ま、そうですね。創造神とは敵対、外の神とも敵対、となればアース神族や神降の連中は取り込んでおきたいところです』
兄は触手を切断し、瓶の中に残さず入れる。僕の腕を引っ張って立ち上がらせ、笑顔を貼り付けた。
『じゃあ、行こう!』
「えっ、い、今から?」
『早い方が良いよね?』
「それはっ……そうだけど」
そんな急に、と僕が戸惑っていると、兄は元気に手を挙げる。
『付いてくる人ー!』
『俺らは無理や、前やらかしたからな』
「俺は仕事あるし……」
「幼女、触手の生えたおじさんに付いて行かない」
各々の理由で断っていく。鬼達やヴェーンは仕方ないし、アザゼルは付いてこられても困る。
石を貰ってくる程度なら二人で平気だ。そう言おうとしたその時、視界が兄の手に覆い隠された。
『だ、れ、が……おじさん……?』
「痛っ、痛い痛いいだだだだっ! じょっ、冗談冗談!」
どうやら兄がアザゼルの頭を掴んでいるらしい。
『ふん、行こ。ヘル』
視界共有を切り、兄の腕に抱き着く。ガシャンと音がしたが──まさか、アザゼルを投げたのか? 流石は兄だ、二人で行きたくなくなってきた。
「……フェルは?」
『えっ? ぁ、あの……ぼ、僕は、留守番するよ……』
朝食の間もずっと黙っていた。帰って来てからフェルには元気がない。
僕は宝石を貰って戻ったらフェルとちゃんと話そうと心に決め、空間転移の浮遊感に身を任せた。
0
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる