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狙いは大成功
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テスト前の一週間、僕とシンヤはいつも通りに過ごした。テスト勉強なんてほとんどせずに愛情と欲情をぶつけ合った。僕はそれでよかった、いつもより長くシンヤと過ごせたのが嬉しかった。
「はぁ……結局全然テスト勉強出来なかった」
「まぁいいじゃん、僕なんて提出物も終わってないよ」
「ヒロくん真面目そうなのに実はそうでもないよね」
「メガネかけてる大人しいヤツは優等生、なんて幻想だよ」
テスト当日の朝、シンヤは勉強が足りていないことを不安に思い、僕は開き直ってリラックスした。席についてテスト用紙が配られると視線を交わすことすら許されなくなる。
「えー、問四の問題文にミスが……その修正を……黒板に……」
カリカリと他者がテスト用紙に書き込む音がプレッシャーになる。何とか解答欄を埋めることは出来たが、ほとんど正解している気がしない。
「はぁ……シンヤくんどうだった?」
テストの合間の休み時間、隣のシンヤに話しかける──が、返事はない。視線をやれば彼は次のテスト教科の教科書を読んでいた、かなり集中しているようで僕が話しかけたことにも気付いていない。
「…………なんだよ」
テストは一日二教科、中間テストは五教科あるから明日と明後日もテストだ。この三日間は流石にシンヤは僕と遊んではくれなさそうだし、僕も勉強しないとまずいことが今のテストで分かった。
「……帰ったら勉強しよ」
放課後、僕は駅でシンヤと別れ、真っ直ぐに家に帰り、着替えもせずに勉強を始めた。
そんな優等生ぶった生活を二日過ごし、テスト最終日。ホームルームも終わってテストから解放され、今日の長い放課後はシンヤと過ごそうと彼の手を取った。
「シンヤくんっ、今日は君の家行ってもいいよね?」
「……うん」
「シンヤくん……? テストで疲れちゃった?」
シンヤの顔色が悪い。教室から出ていくクラスメイトを尻目に、低身長を活かして彼の顔を覗き込んだ。
「…………テスト、分かんない問題があって」
「……シンヤくんは真面目だなぁ。大丈夫だよ、きっといい点だから」
落ち込むシンヤを励ますため、僕の個人的な欲望のため、唇を一瞬触れ合わせるだけのキスをする──まだ暗い顔だ、フレンチキスいってみようか。
「小宅!」
「ひゃいっ!? あっ、先生、な、何ですか……?」
突然名前を呼ばれて変な声が出てしまった、またシンヤに情けないところを見せた……聞かせた?
「学校はキス、いや、恋人と、その何だ、触れ合う場所じゃない。帰ってからにしなさい……いや、学生らしい付き合いをだな」
「す、すいません……」
「……あとお前提出物出してないだろ」
「あ、すいません、やってません」
「…………今日中なら受け付けるが」
「間に合わなさそうなんでいいです、成績下げてください」
担任は露骨に軽蔑の視線を俺に向けたが、すぐに教師らしく表情を整えた。
「全く、吉良は全部出してるんだぞ。これまでも課題を忘れたことはない、少しは見習ったらどうだ」
「善処します……」
「全く……ん? き、吉良? どうしたんだ?」
視線を戻すとシンヤがはらはらと涙を流していた。僕が担任とばかり話していたから寂しくなったのだろうか。
「……小宅、お前が無理矢理キスしたからじゃないのか」
「無理矢理じゃないですよ!? シンヤくんどうしたの? 話して、僕また誤解されてる」
「さっきのテスト……絶対間違えたなってのが一問あって……」
「一問? 僕なんか半分くらい勘だよ」
「どうしよう……間違えた……テストもっかいやりたい……なんで俺あんなミス……」
いくら僕の不出来を主張したところでシンヤの気は晴れない。空気を読まず「鍵を閉めたい」と言い出した担任を睨み、彼の手を引いて教室を出た。
「はぁ……結局全然テスト勉強出来なかった」
「まぁいいじゃん、僕なんて提出物も終わってないよ」
「ヒロくん真面目そうなのに実はそうでもないよね」
「メガネかけてる大人しいヤツは優等生、なんて幻想だよ」
テスト当日の朝、シンヤは勉強が足りていないことを不安に思い、僕は開き直ってリラックスした。席についてテスト用紙が配られると視線を交わすことすら許されなくなる。
「えー、問四の問題文にミスが……その修正を……黒板に……」
カリカリと他者がテスト用紙に書き込む音がプレッシャーになる。何とか解答欄を埋めることは出来たが、ほとんど正解している気がしない。
「はぁ……シンヤくんどうだった?」
テストの合間の休み時間、隣のシンヤに話しかける──が、返事はない。視線をやれば彼は次のテスト教科の教科書を読んでいた、かなり集中しているようで僕が話しかけたことにも気付いていない。
「…………なんだよ」
テストは一日二教科、中間テストは五教科あるから明日と明後日もテストだ。この三日間は流石にシンヤは僕と遊んではくれなさそうだし、僕も勉強しないとまずいことが今のテストで分かった。
「……帰ったら勉強しよ」
放課後、僕は駅でシンヤと別れ、真っ直ぐに家に帰り、着替えもせずに勉強を始めた。
そんな優等生ぶった生活を二日過ごし、テスト最終日。ホームルームも終わってテストから解放され、今日の長い放課後はシンヤと過ごそうと彼の手を取った。
「シンヤくんっ、今日は君の家行ってもいいよね?」
「……うん」
「シンヤくん……? テストで疲れちゃった?」
シンヤの顔色が悪い。教室から出ていくクラスメイトを尻目に、低身長を活かして彼の顔を覗き込んだ。
「…………テスト、分かんない問題があって」
「……シンヤくんは真面目だなぁ。大丈夫だよ、きっといい点だから」
落ち込むシンヤを励ますため、僕の個人的な欲望のため、唇を一瞬触れ合わせるだけのキスをする──まだ暗い顔だ、フレンチキスいってみようか。
「小宅!」
「ひゃいっ!? あっ、先生、な、何ですか……?」
突然名前を呼ばれて変な声が出てしまった、またシンヤに情けないところを見せた……聞かせた?
「学校はキス、いや、恋人と、その何だ、触れ合う場所じゃない。帰ってからにしなさい……いや、学生らしい付き合いをだな」
「す、すいません……」
「……あとお前提出物出してないだろ」
「あ、すいません、やってません」
「…………今日中なら受け付けるが」
「間に合わなさそうなんでいいです、成績下げてください」
担任は露骨に軽蔑の視線を俺に向けたが、すぐに教師らしく表情を整えた。
「全く、吉良は全部出してるんだぞ。これまでも課題を忘れたことはない、少しは見習ったらどうだ」
「善処します……」
「全く……ん? き、吉良? どうしたんだ?」
視線を戻すとシンヤがはらはらと涙を流していた。僕が担任とばかり話していたから寂しくなったのだろうか。
「……小宅、お前が無理矢理キスしたからじゃないのか」
「無理矢理じゃないですよ!? シンヤくんどうしたの? 話して、僕また誤解されてる」
「さっきのテスト……絶対間違えたなってのが一問あって……」
「一問? 僕なんか半分くらい勘だよ」
「どうしよう……間違えた……テストもっかいやりたい……なんで俺あんなミス……」
いくら僕の不出来を主張したところでシンヤの気は晴れない。空気を読まず「鍵を閉めたい」と言い出した担任を睨み、彼の手を引いて教室を出た。
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