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じめっとする月
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朝のニュース番組を横目に朝食のトーストをかじる。芸能人のゴシップに興味はないし、見知らぬ他人の不幸な事故にもまぁ興味はない。しかし政治ニュースとスポーツニュースはテストに影響するので流し見でも見ておかなければならない。
「ヒロ、今日は晴れみたいだけど一応折りたたみ傘持っていきなさいね」
「んー……うわ、十二位。母さん、緑のハンカチって僕持ってたっけ。思わぬトラブルを回避したいんだけど」
「緑ねぇ……なかったと思うけど。今まで星占いなんて気にしてなかったじゃない、急にどうしたの」
「いや何となく……」
朝食を食べ終えたら歯を磨きながらソシャゲのログインボーナスを回収、磨き終えたら鞄を持って出発だ。
「行ってきまーす!」
数時間ぶりにシンヤに会える。浮かれていた僕は母の助言と共に折りたたみ傘を忘れた。
「シンヤくん、おはよう」
「おはようヒロくん♡ 今日は寝癖酷くて可愛いね♡」
「梅雨時期はどうしてもね……でも前髪は頑張って整えたよ」
シンヤは僕の寝癖を直そうとしているのか僕の頭の一箇所を強く押さえている。こういうことをして欲しいから前髪以外の寝癖はあえて直さなかったんだ、なんて。
「ドヤ顔可愛い♡ もう六月かぁ……六月末から期末テストだったよね。今度こそ頑張らないと」
「ご両親に許可もらっても髪染め直さなくていいからね、何回も言ってるけど僕は君の髪色とかもうどうでもいいんだから」
「分かってる♡ でもヒロくん金髪のが好きだろ?」
「……黒髪の方がいいかもって思ってきたとこ。金髪がいいとか不良がいいとか言ったけどさ、結局惚れた男が最強なんだよ。シンヤくん不良らしさの欠片もないしね」
「えっ……な、舐めてんのかこらー」
「ふふっ……だからシンヤくんはシンヤくんのままでいいんだって」
シンヤの演技だろうと高身長と整った顔で凄まれたら反射的に怯えてしまうと思っていたが、あまりの可愛らしさに笑ってしまった。
「俺のまま……俺って、なんだろ」
「そんな哲学的に悩む? シンヤくんはシンヤくんだよ」
不良らしく振る舞っている姿なんてほとんど見たことがないのに、不良らしくしなくていい黒髪のままでいいと言っただけで自分を見失わないで欲しい。
「……俺ってどんなヤツ?」
「健気で可愛くて、頭が良くて顔も良くて、僕にはもったいないくらい素晴らしい彼氏」
「…………えへへ♡」
「一言で言うなら、シンヤくんはいい子だよ。これまで通りでいてね」
「うん♡」
僕の言葉一つでシンヤは自分を見失い、一瞬で見つける。この危うさこそ彼の魅力だが、僕は刺激的な危険よりも退屈な安全が欲しい。
「……君の芯はきっと、僕への愛なんだよね。ちょっと怖いけど……うん。それが君なら、それでいいんだ。僕はずっと傍に居るんだから」
「うん♡ ヒロくん大好き♡」
「ちょっと、ここ電車……もう」
ぎゅうっと抱きついてきたシンヤの背に腕を回す。周囲の視線は感じたが、あまり気にならなかった。この人目を気にしない心の強さはシンヤに影響されたものだ、僕達はやはり永遠に二人で居るべきなのだ。
「ヒロ、今日は晴れみたいだけど一応折りたたみ傘持っていきなさいね」
「んー……うわ、十二位。母さん、緑のハンカチって僕持ってたっけ。思わぬトラブルを回避したいんだけど」
「緑ねぇ……なかったと思うけど。今まで星占いなんて気にしてなかったじゃない、急にどうしたの」
「いや何となく……」
朝食を食べ終えたら歯を磨きながらソシャゲのログインボーナスを回収、磨き終えたら鞄を持って出発だ。
「行ってきまーす!」
数時間ぶりにシンヤに会える。浮かれていた僕は母の助言と共に折りたたみ傘を忘れた。
「シンヤくん、おはよう」
「おはようヒロくん♡ 今日は寝癖酷くて可愛いね♡」
「梅雨時期はどうしてもね……でも前髪は頑張って整えたよ」
シンヤは僕の寝癖を直そうとしているのか僕の頭の一箇所を強く押さえている。こういうことをして欲しいから前髪以外の寝癖はあえて直さなかったんだ、なんて。
「ドヤ顔可愛い♡ もう六月かぁ……六月末から期末テストだったよね。今度こそ頑張らないと」
「ご両親に許可もらっても髪染め直さなくていいからね、何回も言ってるけど僕は君の髪色とかもうどうでもいいんだから」
「分かってる♡ でもヒロくん金髪のが好きだろ?」
「……黒髪の方がいいかもって思ってきたとこ。金髪がいいとか不良がいいとか言ったけどさ、結局惚れた男が最強なんだよ。シンヤくん不良らしさの欠片もないしね」
「えっ……な、舐めてんのかこらー」
「ふふっ……だからシンヤくんはシンヤくんのままでいいんだって」
シンヤの演技だろうと高身長と整った顔で凄まれたら反射的に怯えてしまうと思っていたが、あまりの可愛らしさに笑ってしまった。
「俺のまま……俺って、なんだろ」
「そんな哲学的に悩む? シンヤくんはシンヤくんだよ」
不良らしく振る舞っている姿なんてほとんど見たことがないのに、不良らしくしなくていい黒髪のままでいいと言っただけで自分を見失わないで欲しい。
「……俺ってどんなヤツ?」
「健気で可愛くて、頭が良くて顔も良くて、僕にはもったいないくらい素晴らしい彼氏」
「…………えへへ♡」
「一言で言うなら、シンヤくんはいい子だよ。これまで通りでいてね」
「うん♡」
僕の言葉一つでシンヤは自分を見失い、一瞬で見つける。この危うさこそ彼の魅力だが、僕は刺激的な危険よりも退屈な安全が欲しい。
「……君の芯はきっと、僕への愛なんだよね。ちょっと怖いけど……うん。それが君なら、それでいいんだ。僕はずっと傍に居るんだから」
「うん♡ ヒロくん大好き♡」
「ちょっと、ここ電車……もう」
ぎゅうっと抱きついてきたシンヤの背に腕を回す。周囲の視線は感じたが、あまり気にならなかった。この人目を気にしない心の強さはシンヤに影響されたものだ、僕達はやはり永遠に二人で居るべきなのだ。
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