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露天風呂付きの部屋
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荷物を持って旅館に向かい、父にチェックインなどを任せ、それが済んだら部屋に向かった。
「それじゃ、私達隣の部屋に居るから、何かあったら呼ぶのよ」
両親とは別々の隣同士の部屋だ、声が響かないといいのだが──と壁をコンコンと叩いて厚みを確認する。大声を出さなければ大丈夫そうだ。
「ヒロくん、もう時間遅いし……布団敷いて寝ちゃう? 温泉もう開いてないよね」
「大浴場は開いてないけど、部屋の露天風呂はいつでも入れるよ。そっち行かない?」
「あぁ、部屋にもあるんだったね。うん♡ 一緒に入ろ♡」
風呂の用意のため荷物を漁るシンヤをよそに僕は部屋を探り、浴衣を見つけた。白無地に旅館の名前が刺繍されたそれを着たシンヤを想像するだけで身体が熱くなった。
「シンヤくんっ! これ着ない?」
「何ー? あ、浴衣? あるんだ。じゃあこれ着て寝よっか」
「うん! 着て!」
「なんかテンション高いね……?」
シンヤは僕を不審そうな目で見ながらも躊躇なく服を脱ぎ、僕の目に素肌を晒した。
「ヒロくんも早く脱いで♡」
「う、うんっ」
「わー……! すごーい、温泉初めて♡ 景色は……真っ暗でよく分かんないや」
部屋から出てすぐに目に飛び込んでくる小さな円形の温泉。岩で作られたようなデザインのそれからは湯気が立っており、早速手を浸したシンヤは「熱い」と笑っていた。
「先に体洗う?」
「うん……そうだね、二人だけだけど、一応ね」
身体と髪を洗ってからゆっくりじゃれ合おうと相談なく決め、会話はしつつ見つめ合わず、温泉に浸かる互いの姿を楽しみにした。
「ふぅ……ヒロくぅーん♡ 終わったよ♡」
「あ、僕もこれ流したら……うん、終わった」
「顔見せてよヒロくん♡ 俺その方が好き……ほらっ、可愛い♡」
濡れた前髪をオールバックにされ、コンプレックスだったはずの人に嫌われる目を見られる。
「可愛いって……怖いだろ」
「ヒロくんに怖い目ついてるのが可愛いの♡ まんまるな目の猫も可愛いけど、目付き悪い猫とかも逆に目付き悪いとこが可愛いじゃん?」
「猫……」
ネコはシンヤの方だろうなんて下ネタを思い付いたが、言えるはずもなく頬を揉まれて可愛がられた。
「お風呂入ろっ♡ 熱いからゆっくりね♡」
温泉の湯を桶ですくい、肩にかける。確かに熱いが、騒ぐほどでもない。
「はぁ~……熱い……鳥肌立っちゃう」
「……シンヤくん熱いの苦手?」
「そうでもないと思うんだけど……はぁ……♡ 慣れてきたかも、気持ちいい♡」
肩まで浸かったシンヤは心地よさそうに目を閉じる。うっすらと見える温泉の底に、伸びてリラックスしている様子のシンヤの足がある。
「シ、シンヤくん……あの」
「んー? なぁに? ヒロくん♡」
肉付きのいい長い足を撫で回し、舐め回したい。素晴らしい景色と温泉を得ても僕の欲望は下劣なままだ。
「いや……えっと、手、繋ぎたいなって」
「いいよ♡ もちろん♡」
底についていた手にシンヤの手が重なった。五分と浸かっていないのにもう僕の顔は真っ赤だ。シンヤともっと恥ずかしいことをした経験があるのに、残すはもうセックスだけなのに、手を繋ぐ程度で話すことも出来なくなって……本当に今日、初夜をこなせるのだろうか。
「それじゃ、私達隣の部屋に居るから、何かあったら呼ぶのよ」
両親とは別々の隣同士の部屋だ、声が響かないといいのだが──と壁をコンコンと叩いて厚みを確認する。大声を出さなければ大丈夫そうだ。
「ヒロくん、もう時間遅いし……布団敷いて寝ちゃう? 温泉もう開いてないよね」
「大浴場は開いてないけど、部屋の露天風呂はいつでも入れるよ。そっち行かない?」
「あぁ、部屋にもあるんだったね。うん♡ 一緒に入ろ♡」
風呂の用意のため荷物を漁るシンヤをよそに僕は部屋を探り、浴衣を見つけた。白無地に旅館の名前が刺繍されたそれを着たシンヤを想像するだけで身体が熱くなった。
「シンヤくんっ! これ着ない?」
「何ー? あ、浴衣? あるんだ。じゃあこれ着て寝よっか」
「うん! 着て!」
「なんかテンション高いね……?」
シンヤは僕を不審そうな目で見ながらも躊躇なく服を脱ぎ、僕の目に素肌を晒した。
「ヒロくんも早く脱いで♡」
「う、うんっ」
「わー……! すごーい、温泉初めて♡ 景色は……真っ暗でよく分かんないや」
部屋から出てすぐに目に飛び込んでくる小さな円形の温泉。岩で作られたようなデザインのそれからは湯気が立っており、早速手を浸したシンヤは「熱い」と笑っていた。
「先に体洗う?」
「うん……そうだね、二人だけだけど、一応ね」
身体と髪を洗ってからゆっくりじゃれ合おうと相談なく決め、会話はしつつ見つめ合わず、温泉に浸かる互いの姿を楽しみにした。
「ふぅ……ヒロくぅーん♡ 終わったよ♡」
「あ、僕もこれ流したら……うん、終わった」
「顔見せてよヒロくん♡ 俺その方が好き……ほらっ、可愛い♡」
濡れた前髪をオールバックにされ、コンプレックスだったはずの人に嫌われる目を見られる。
「可愛いって……怖いだろ」
「ヒロくんに怖い目ついてるのが可愛いの♡ まんまるな目の猫も可愛いけど、目付き悪い猫とかも逆に目付き悪いとこが可愛いじゃん?」
「猫……」
ネコはシンヤの方だろうなんて下ネタを思い付いたが、言えるはずもなく頬を揉まれて可愛がられた。
「お風呂入ろっ♡ 熱いからゆっくりね♡」
温泉の湯を桶ですくい、肩にかける。確かに熱いが、騒ぐほどでもない。
「はぁ~……熱い……鳥肌立っちゃう」
「……シンヤくん熱いの苦手?」
「そうでもないと思うんだけど……はぁ……♡ 慣れてきたかも、気持ちいい♡」
肩まで浸かったシンヤは心地よさそうに目を閉じる。うっすらと見える温泉の底に、伸びてリラックスしている様子のシンヤの足がある。
「シ、シンヤくん……あの」
「んー? なぁに? ヒロくん♡」
肉付きのいい長い足を撫で回し、舐め回したい。素晴らしい景色と温泉を得ても僕の欲望は下劣なままだ。
「いや……えっと、手、繋ぎたいなって」
「いいよ♡ もちろん♡」
底についていた手にシンヤの手が重なった。五分と浸かっていないのにもう僕の顔は真っ赤だ。シンヤともっと恥ずかしいことをした経験があるのに、残すはもうセックスだけなのに、手を繋ぐ程度で話すことも出来なくなって……本当に今日、初夜をこなせるのだろうか。
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