過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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羽はアクセスタンド

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人間棟の酒場にてネメスィを発見。俺に絡んできた酔っ払い達を感電させたネメスィは無言で俺を見つめ、彼らしくもなく優しく微笑んでいる。

「なっ、可愛いだろ?」

ショゴスを模したストラップをネメスィに見せたが、特に感想はもらえなかった。彼は無言でグラスを傾けている、酒の肴は俺だろうか。

「ほら、どう? 似合う?」

ストラップの紐を頭羽の付け根にしっかりと結び、グロ可愛いそれを耳の横に揺らす。金色の瞳が僅かに見開かれ、狭く開いた口から笑いが漏れる。

「ふ、ふふ……くくくっ……」

「な、なんだよ……似合わないか? っていうかあの人達大丈夫だよな、加減したよな? 電気は危ないからなぁ……あ、助けてくれたのはマジで感謝してるぞ、ちゃんと」

「んふふ……可愛いな、お前は」

「え? ぁ、あぁ……ありがとう……」

頬が熱くなるのを感じて目を逸らすとたくましい腕に抱き寄せられ、太腿に乗せられ、頬に唇を触れさせられた。

「そんなに可愛いなんて、どういうつもりだ? ん? なんでそんなに可愛いんだ? 俺をどうするつもりなんだ、おい」

「なんだよぉ……酒臭い、酔ってるのか? 酔うのかよお前……」

人間じゃないくせに、とは言わない方がいいだろう。ネメスィは人間であることにこだわりがあるようだし。俺は彼が何者でも構わないのに──そう言って少しはこだわりが薄まったようには思えるけれど。

「ぅあ……舐めるなよ、ほっぺた吸うなぁ……なんだよぉ、いつもと違うぞ、ネメスィ」

「んー……」

「もう部屋帰ろうぜ。アイツら起きると面倒だろ。な、行こ。ほら、朝まで飲むとかしちゃダメなんだからな」

感電させた酔っ払い達はそのまま眠る者が大半だろうが、目を覚ました奴がまた絡んできたら面倒だ。俺はネメスィの代わりに勘定を済ませ、彼を引っ張って酒場を後にした。

「ネメスィ重い、もたれかかるなよ。俺インキュバスなんだぞマッチョめ、俺潰す気か」

「どこに行くんだ?」

「お前の部屋。外出る時は鍵くらいかけてけよな」

就寝中に鍵をかけないカタラもカタラだ。そういう習慣がないのだろうか、ちゃんと教えておかないとな。

「部屋に連れ込んで何をするつもりだ? ん? この淫乱め。インキュバスの本能に溺れすぎだぞ? んん?」

「あぁもう鬱陶しい、キャラ違うぞ、何杯飲んだんだよ」

「何杯?」

ネメスィが持っていたグラスに注がれていたのは彼を思わせる黄金色の酒だった。カクテル系だろうか、ビールを入れるようなグラスではなかったが、前世の常識は通用しないしな。

「お酒。何飲んだんだ? 十杯くらい飲んだか?」

「いっぱい」

「お前ネメスィじゃないだろ……」

「ふふ、くくっ……何言ってる、俺はネメスィ! 勇者ネメスィだ! 言ってみろサク! ねめしゅっ…………痛……」

早朝のホテルの廊下で騒ぎ出した彼は黙らせるまでもなく舌を噛んで黙った。

「……ほら、部屋ここだぞ」

「ん……」

「寝るか?」

「んー……」

「添い寝してやるから、な?」

落ち込んでしまった彼の上着を脱がし、ベッドに転がす。面倒くさい酔っ払いを寝かしつけるかと気合いを入れた直後、寝息が聞こえてきた。

「寝たのか……? はぁっ、ショゴス酔っ払わせるとかいい酒出してんなぁ」

ネメスィは人間と同じ細胞を再現しているとか言っていたから、別にショゴスがどうとかは関係ないんだろうなとは思うけれど、ついつい言ってしまう。
真面目にネメスィがここまで酔った理由を考えるとしたら──

「……安心した、とか?」

勇者として、俺達の長ぶっている者として、ずっと気を張っていたんだろうな。無警戒でいられる場所なんてなかったのかもしれない、最初俺に攻撃的だったのが最たる証拠だ。

「これからは平和だからな」

傷跡の多い左腕を撫で、額にキスをする。さて俺はどうしようか。

「ネーメスィー! 時間だぞ!」

扉を蹴り開け、魔法使いのような服をバッチリ着込んだカタラが入ってきた。まだまだ空は青が濃い、早朝だ。何の時間だと言うのか。どうしてそんなに気合いを入れた格好をしているのか。色々と聞きたいことはあったがまず俺の口から出たのはこれだった。

「……扉は、手で開けるもんだぞ」

「お、おぅ……ごめんな。サク、なんでここに居るんだ?」

「変な時間に目ぇ覚めたけど寝れなくてさ、暇だったから来てみたんだ。カタラは? こんな朝っぱらから何してんの?」

「俺は……昨日ネメスィと出かける約束してたんだけど」

ネメスィは誰が見ても分かるほど見事に熟睡中だ。

「ネメスィさっきまで酒場で飲んでたぞ。さっき見つけて連れて帰ってきたんだ」

「あぁそう……」

「ぐでんぐでんに酔ってたから起こしてもダメだと思うぞ」

多分起きないし、起こしても使い物にはならないだろう。約束しておきながら酒場で飲み明かすなんて酷い男だ。

「…………ビリビリクソサイコめ」

しゅんと落ち込んでいるカタラを見て胸を痛めた俺は自分の暇潰しも兼ねた提案をした。

「カタラ、ネメスィの代わりに俺が一緒に行くよ」

「えっ……」

喜んでくれると思っていたのだが、どうやら自惚れだったらしい。スキルを失くした俺なんて、ただの黒髪インキュバス……金髪イケメン勇者の方がいいんだ。

「あ、違うんだサク、変に落ち込むなよ。その……サク、行って平気かなって」

「本とか買いに行くんじゃないのか?」

「いや、街じゃなくて……森に…………その、ちょっと行ったとこにマンドラゴラの群生地があるらしくてさ。天然マンドラゴラなんてまず手に入らねぇんだぜ!? 買おうと思ったら豪邸が建つくらいの金積まなきゃならないんだ! それが山ほど生えてる土地が特に保護されずに、普通にっ……! 行くしかねぇだろ!」

カタラは興奮した様子でマンドラゴラについて熱弁してくれた。俺達がいた島では貴重品だったが、この島ではそうでもないと……まぁ国内外の希少性の差はよくある話だ。

「誰かの私有地とかじゃないのか?」

「ネメシスに頼んで許可取ってもらった! 成長し過ぎても困るし、好きなだけ取ってっていいんだってさ!」

「……ちなみにマンドラゴラってどんな植物なんだ?」

「あ、知らねぇか。根っこが人の形しててな、引っこ抜くとギャーって叫ぶ植物だ。断末魔聞くと心臓止まるんだぜ、怖ぇだろ」

前世で触れたゲームやアニメでのマンドラゴラと同じだ。耳栓だとかで誤魔化せるだろうか?

「俺行って平気かなって……俺のこと心配してくれてたんだな、でもカタラも危ないだろ? ネメスィなら触手で聞こえないとっから抜けそうだけどさ……今日はやめるか、ネメシス誘うかしないとな」

「え? いや、鳴かせねぇぞ」

「え? 抜いたら鳴くんだろ? 口塞ぐとか?」

「今どきマンドラゴラ生きたまま抜かねぇよ……脳天に串ぶっ刺して殺して抜くのが基本だ。そりゃ傷付いてない方が高く売れるけどさ、俺は自分が食う目的だから別に」

マンドラゴラって串刺したら死ぬんだ。

「そ、そっか……じゃあ、なんで俺が行くの渋るんだ?」

「森のちょっと奥まったとこだから、サクと行くにはムードないなぁって……」

「そういう感じ……? なんだ……安全なんだろ? いいじゃん、行こうぜ。森レジャーもデートにはありがちだろ」

森の散歩と植物採集なんて恋人同士のアウトドアの定番みたいなものだ。

「お前がそう言うなら……よしっ、馬車頼んでるんだ、早く行こうぜ。なんか持ってきたいもんあるか?」

「俺は別に……あ、カタラ部屋に鍵かけたか?」

手ぶらで馬車まで向かう道中、俺はカタラに鍵の大切さを説いた。しかしどうやら寝ている間はかけ忘れていただけらしく、俺のご高説は必要ないとでも言いたげに笑われてしまった。

「カタラ、見た目は美少女なんだから、寝てる間こそ忘れちゃダメだろ。っていうか普段からかけとけよ」

「美少女言うな。サクのが可愛いっての」

「じゃあ俺とシャルの次に可愛いんだから」

「それはそれでムカつく」

「乙女心って難しいな」

馬車の中では何気なくくだらない会話を楽しみ、降りた後は朝の森の爽やかな空気を堪能した。
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