過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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長持ちな後遺症

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査定士の晩酌に付き合って眠るのが遅かったから、昼まで眠るつもりだった。それなのに朝一番にアルマが部屋を尋ねてきた。

「おはようございます……お義兄さん」

「寝起きか? 夜行性だから仕方ない面もあるが……島に戻れば昼の活動を求められることが増えてくるだろうから、早起きに慣れておくんだな。顔を洗え、そうしたら目が覚める」

「ふわぁ……言われなくても洗いますよ」

「サクは?」

「そこの膨らみ見えません?」

夢うつつに寝ぼけているとシーツを剥ぎ取られた。胡乱な視界を赤褐色の強面が占拠する。

「おはよう、サク。こんな時間まで寝ていてはダメだ、朝早く起きると気持ちがいいものだぞ」

「……アルマ?」

「なんでこれに丸まってるんだ、これは敷くものだろう?」

アルマは俺から剥ぎ取ったシーツを訝しげに眺める。俺はまだぐっすりと眠っているドラゴンの頭を撫でて上体を起こし、意識がハッキリするのを待った。

「中庭にでも行かないか? 陽の光を浴びれば目が覚めるぞ」

「インキュバスに無茶言わないでください、太陽光なんて気が滅入るだけですよ。僕達の味方は月光です」

顔を洗ったらしくシャルが前髪を濡らして戻ってきた。いつも万能のように振る舞う彼の不意な不器用さにときめくと共に、彼の服の露出度の高さが気になる。

「肩……」

「サク? どうした」

アルマの金色の瞳、優しい視線は俺に向いている。肩を露出して鎖骨も丸出し、扇情的な服装の俺を見ている。

「あっ……やだ見ないで!」

「わっ!?」

俺は咄嗟に枕をアルマに投げつけ、ベッドから転がり落ちて窓へ走り、厚手のカーテンに身を包んだ。

「サク……? どうしたんだ?」

未婚で遊び歩いてるならともかく、妻なら貞淑にすべきだ。街中で見かけるインキュバスやサキュバスのほとんどは俺よりも露出度の低い服装だし、俺と同等となれば色街に居るような連中だ。そんな格好で子供と一緒に眠り、目覚めを夫に待たれていたなんて恥ずかしすぎる。

「サク」

「やだやだやだぁっ、カーテン剥がさないで!」

「す、すまん……シャル、何かあったのか?」

俺の様子がおかしいと考えたらしいアルマはゼリーを立ち食いしているシャルに尋ねた。

「昨日、おじさんの晩酌に付き合ったんですが……おじさんが巧みに兄さんの羞恥心をふくらませまして、それがまだ残っちゃってるみたいなんです」

「羞恥心……」

カーテンにミノムシのようにくるまって顔だけ出していたが、アルマの視線を感じると頬が熱くなって顔まで隠してしまう。

「露出度の高い服装が恥ずかしいらしいです」

「まぁ確かに肌はかなり出ているが……インキュバスなんだから仕方ないんじゃないか? サク、気にするな。出ておいで、可愛い姿を見せてくれ」

羽も尻尾も身体にピッタリと沿って、手はカーテンを掴んで離さない、足は震えて動かない。アルマの胸に飛び込みたい気持ちもアルマに部屋から出ていってもらいたい気持ちもどんどん膨らんでいく。

「……晩酌で彼が羞恥心を煽ったのが原因なんだよな? シャルは何ともないのか? 聞いていたんだろう?」

「僕は確かに不出来な弟です、兄さんに比べればインキュバスとしての魅力も大したことがありません。しかし僕達は双子、この身体は兄さんと寸分違わない、自慢こそすれ恥じることなどありません」

「な、なるほど……前、ドレスを着た時は随分恥ずかしがったと聞いたが」

「兄さんと瓜二つの見た目はともかく、僕には兄さんと違って可愛げはないので」

俺はシャルの方が可愛いと思っているし、シャルを見て「恥ずかしい服を着ているヤツだ」なんて思わない。羞恥心は俺だけのものだ。

「服はシャルが作っているんだろう? 調整してやったらどうだ?」

「えー……どうせ恥ずかしがりはそのうち治りますし、この服は生まれた時に着ていた物に似せていて……別に恥ずかしいものではありませんし……」

「…………つまり?」

「嫌です。僕はおじさんに過剰なやり方を咎めることで忙しいので、それでは」

昼間まで寝ていたくせにシャルはそそくさと部屋を出た、そんなに俺の服を替えたくないのか?

「はぁ……仕方ないな、シャルは。なぁサク」

こくりと頷いた。返事は出来るが顔も身体もほとんど見せられない俺に、アルマは深いため息をついてから微笑んだ。

「サク、これを着てみるか?」

アルマは薄手の上着を脱いで俺の前に突き出した。タイトなシャツに筋骨隆々とした身体が浮き出ている。

「……ここに置く、俺は後ろを向くから着てごらん」

恥ずかしくて腕を出せずにいた俺に微笑みかけ、俺の足元に上着を置いた。俺はアルマが後ろを向いたのを確認してからカーテンの繭から出て、優しい水色の薄いジャケットを羽織った。

「…………浴衣みたい」

ぶかぶかだ。袖をまくって余った布を体の前で重ねると、顔と手以外に肌は露出しない。

「……アルマ、アルマ」

肩甲骨が浮いた大きな背をつんとつつく。振り向いた優しい夫は床に膝をついて俺と目を合わせてくれる。

「よく似合っているよ」

「…………ごめんね? アルマに見られるのがやだとか、そんなんじゃなくて……恥ずかしくて。本当に恥ずかしいだけで、アルマは関係ないから……アルマは悪くないから」

「分かってる、そんな心配しなくていい」

「………………アルマぁっ!」

願望の一つだった「アルマの胸に飛び込みたい」を叶えた。

「アルマ、アルマ……大好き」

「……俺もだ」

太くたくましい腕が背に回る。抱き上げられてベッドに優しく落とされ、期待に胸が高鳴る。羞恥心で上がった体温の原因は興奮だったとすり替える。

「アルマ……朝から、だけど……その」

言わなくても分かっているとでも言うように、アルマは唇で俺の口を塞ぐ。何度も離しては重ねながら、少しずつ舌を絡めるキスへと移行していく──

「ちぁああ……」

「……っ!? アルマ離れて!」

ドラゴンのあくびが聞こえて飛び起きる。アルマに覆いかぶさられたまま身体を反転させ、ほふく前進でもするようにドラゴンの元へ。

「起っきしちゃったの、お母さんだよ~。よしよし」

「ちぅ……ちゃん……」

「ママだよ~。お顔洗おっか、よしよし……抱っこするよ。アルマどいて」

「あ、あぁ……」

ドラゴンを抱いて洗面所へ向かう。彼もかなり重たくなってきた、もう抱いて移動するのは難しいかもしれない。

「よいしょっと……そろそろ外で遊ぶか? ネメシスには隠せとか言われたけど、他んとこの魔王見に来てるなんてことないだろ」

「サク……」

「アルマ、今からこの子にご飯あげるからベッド片付けといてくれ」

「……あぁ」

気分が乗ってきたところで止めたのが不満なのは俺も同じだ、そんなに分かりやすく落ち込まないで欲しいな。

「よしよし、あーん……美味しい?」

「ちぃ……ちぅ、ちゅ」

いや、不満度は俺の方が遥かに低いかもしれない。俺はゼリーを美味しそうに食べるドラゴンが見られて幸せな気分になっているから。
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