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無許可冷感スプレー (水月+セイカ・カサネ・歌見・リュウ・ハル・シュカ)
カンナの父親を見送った後も日陰でダラダラと雑談していると、今度は俺の母が合流した。
「水月! 探したわよ」
「俺そんな分かりにくいとこ居たかな……」
「歌見くんには助けられたわ~。分かりやすいったらないわね。水月髪黒いから地味なのよ」
この超絶美形を地味だと言ってのけるなんて、同レベルの美形である母にしか出来ないだろうな。彼氏達を見回せば確かに、派手な髪が多い。深夜アニメのようだ。寒色系が欲しいな。
「そんなに派手ですかね俺……」
「背の高さも高得点よ」
「ガタイもええしな」
体格はともかく、髪は派手になると分かっていて染めているだろうに、目立つと語られた歌見は恥ずかしそうにしている。
「で、なんか用です?」
「アンタねぇ、自分を探してた母親になんて言い草よ。特に用事はないわ、でも冷感グッズ色々持ってるわよ」
乳幼児連れのような荷物の多さに疑問を抱いていたが、まさかその大きな肩がけの鞄の中身は様々な熱中症対策グッズだとは。なんてありがたい。
「お母様!」
「調子いいわねぇ……アンタ達もほら、好きに使っていいわよ」
「やった~! ありがとーございま~す! お義母さま~!」
「スポドリは流石に四本しか持ってきてないから、各々抵抗ない相手と半分こ……三分こ? しなさい。水月はさっき渡した水筒まだ残ってるわよね?」
「はい、タポタポです」
母の手から彼氏達にスポーツドリンクが配られる。
「アンタら観戦組も飲みなさい、クソ暑い中ずっと立ってたんだから水分補給しっかりしなさい」
「ありがとうございます……ぁ、スイさん先に飲みます?」
俺は母の鞄を勝手に漁り、冷感スプレーを手に取った。俺が持ってきた手のひらサイズの物はもう使い切ってしまったのだ、そもそも使いかけで中身は半分以下だったから仕方ない。
「ふぃー……涼し……」
俺が普段持ち歩いているのは肌に直接振りかけるタイプだが、これは服の上からでも効くようだ。背中に振れば一瞬トイレが思い浮かぶほどのひんやり感。他の彼氏も冷やしてやろう、さて誰からにしようか。
「…………」
きっと最も背中が蒸れているだろう者の背後に回る。足音を消し、呼吸は静かに、タイミングを測る。
「アンタらはここ三人で飲む?」
「あ、はい……あざす」
カサネが母からスポーツドリンクを受け取り、勝手にまとめられた三人組のうち二人の顔色を伺う。
「先、のん……でも、いー……よ?」
「そ、そう? 早苗ちゃんも大丈夫?」
「あぁ……俺は別にいら」
「そうそう、セイカ遠慮すると思うから無理矢理飲ませてね。悪いわねカサネくん、よろしく」
セイカの声なんて聞こえていないだろうに、母はちょうど遮るようなタイミングで戻ってきて声をかけた。カサネは無言でセイカにスポーツドリンクを差し出す。セイカは流石にこれ以上断れないと判断したようで手を伸ばし、車椅子の背もたれと彼の背に隙間が開く。
(今でそ……!)
背もたれと常にぴったりひっついていて蒸れただろうその背中に冷感スプレーをプッシュプッシュ。
「隙を突いて冷却」
「わひゃっ!? な、何すんだよ……!」
「アキにオススメされて……一回言ってみたくて……」
「何かけたんだって聞いてんだよ! 真後ろ振り向くのっ、ん……ちょっと手間取るんだぞ俺!」
「ただの冷感スプレーだよ。セイカ背中暑そうだと思って……先輩もかけます?」
「ぁ、うん、ありがと」
カサネは後ろ髪を少し持ち上げ、俺に背中を向けた。うなじから腰にかけて振りかけてやり、爽やかな香りに自然と呼吸を深くする。
「はぁ……涼し。ちゃんとテントの下に居たし、動いてもねぇんだけど暑かったから助かるよ。動かねんだからって暑さ対策サボっちゃってさぁ……持つべきもんは女子力高めの彼氏だべ」
冷感グッズを持ち歩くかどうかは女子力の問題なのだろうか。持ってきたの俺じゃなくて俺の母だし。
「なんで俺にはかけるかどうか聞かないんだよ……」
「セイカ、要るか聞くと断るから。嫌だったか?」
「嫌じゃ……ないけど」
「けど?」
「……俺、動いてないから、こんなのなくてもいいし……他のヤツ優先してやれよ」
「ずっと座ってるから背中とかお尻蒸れてるかなって」
セイカは俯いて話さなくなってしまった。
(え……? なんで!? 暑い日に冷感スプレーかけて機嫌悪くなられることあります!? えぇえ……寒くなっちゃったんでしょうか)
日除けにと持ってきていたバスタオルを鞄から引っ張り出し、セイカにかけてみる。
「……何?」
「寒いのかなって」
「寒い訳ないじゃん……暑い、やめて……」
「……ごめん」
バスタオルを畳んで鞄に戻す俺をカサネが心配そうに見つめている。
「水月ぃ~、俺にも冷たいのんしゅーしてぇな」
「私にもお願いします。背中と膝の裏を重点的に」
「あ、うん」
セイカの不機嫌は俺が無許可で冷感スプレーをかけたことが理由ではなさそうだ。
(めんどくせぇなぁこの子……)
家に帰ったらゆっくり話を聞いてみよう、いや俺今日バイトだったな。アキに八つ当たりはしないだろうけど、アキに解決されると俺の株が下がりっぱなしだ。どうか俺が帰るまで不機嫌なままでいて欲しい、俺が解決したい。
「水月! 探したわよ」
「俺そんな分かりにくいとこ居たかな……」
「歌見くんには助けられたわ~。分かりやすいったらないわね。水月髪黒いから地味なのよ」
この超絶美形を地味だと言ってのけるなんて、同レベルの美形である母にしか出来ないだろうな。彼氏達を見回せば確かに、派手な髪が多い。深夜アニメのようだ。寒色系が欲しいな。
「そんなに派手ですかね俺……」
「背の高さも高得点よ」
「ガタイもええしな」
体格はともかく、髪は派手になると分かっていて染めているだろうに、目立つと語られた歌見は恥ずかしそうにしている。
「で、なんか用です?」
「アンタねぇ、自分を探してた母親になんて言い草よ。特に用事はないわ、でも冷感グッズ色々持ってるわよ」
乳幼児連れのような荷物の多さに疑問を抱いていたが、まさかその大きな肩がけの鞄の中身は様々な熱中症対策グッズだとは。なんてありがたい。
「お母様!」
「調子いいわねぇ……アンタ達もほら、好きに使っていいわよ」
「やった~! ありがとーございま~す! お義母さま~!」
「スポドリは流石に四本しか持ってきてないから、各々抵抗ない相手と半分こ……三分こ? しなさい。水月はさっき渡した水筒まだ残ってるわよね?」
「はい、タポタポです」
母の手から彼氏達にスポーツドリンクが配られる。
「アンタら観戦組も飲みなさい、クソ暑い中ずっと立ってたんだから水分補給しっかりしなさい」
「ありがとうございます……ぁ、スイさん先に飲みます?」
俺は母の鞄を勝手に漁り、冷感スプレーを手に取った。俺が持ってきた手のひらサイズの物はもう使い切ってしまったのだ、そもそも使いかけで中身は半分以下だったから仕方ない。
「ふぃー……涼し……」
俺が普段持ち歩いているのは肌に直接振りかけるタイプだが、これは服の上からでも効くようだ。背中に振れば一瞬トイレが思い浮かぶほどのひんやり感。他の彼氏も冷やしてやろう、さて誰からにしようか。
「…………」
きっと最も背中が蒸れているだろう者の背後に回る。足音を消し、呼吸は静かに、タイミングを測る。
「アンタらはここ三人で飲む?」
「あ、はい……あざす」
カサネが母からスポーツドリンクを受け取り、勝手にまとめられた三人組のうち二人の顔色を伺う。
「先、のん……でも、いー……よ?」
「そ、そう? 早苗ちゃんも大丈夫?」
「あぁ……俺は別にいら」
「そうそう、セイカ遠慮すると思うから無理矢理飲ませてね。悪いわねカサネくん、よろしく」
セイカの声なんて聞こえていないだろうに、母はちょうど遮るようなタイミングで戻ってきて声をかけた。カサネは無言でセイカにスポーツドリンクを差し出す。セイカは流石にこれ以上断れないと判断したようで手を伸ばし、車椅子の背もたれと彼の背に隙間が開く。
(今でそ……!)
背もたれと常にぴったりひっついていて蒸れただろうその背中に冷感スプレーをプッシュプッシュ。
「隙を突いて冷却」
「わひゃっ!? な、何すんだよ……!」
「アキにオススメされて……一回言ってみたくて……」
「何かけたんだって聞いてんだよ! 真後ろ振り向くのっ、ん……ちょっと手間取るんだぞ俺!」
「ただの冷感スプレーだよ。セイカ背中暑そうだと思って……先輩もかけます?」
「ぁ、うん、ありがと」
カサネは後ろ髪を少し持ち上げ、俺に背中を向けた。うなじから腰にかけて振りかけてやり、爽やかな香りに自然と呼吸を深くする。
「はぁ……涼し。ちゃんとテントの下に居たし、動いてもねぇんだけど暑かったから助かるよ。動かねんだからって暑さ対策サボっちゃってさぁ……持つべきもんは女子力高めの彼氏だべ」
冷感グッズを持ち歩くかどうかは女子力の問題なのだろうか。持ってきたの俺じゃなくて俺の母だし。
「なんで俺にはかけるかどうか聞かないんだよ……」
「セイカ、要るか聞くと断るから。嫌だったか?」
「嫌じゃ……ないけど」
「けど?」
「……俺、動いてないから、こんなのなくてもいいし……他のヤツ優先してやれよ」
「ずっと座ってるから背中とかお尻蒸れてるかなって」
セイカは俯いて話さなくなってしまった。
(え……? なんで!? 暑い日に冷感スプレーかけて機嫌悪くなられることあります!? えぇえ……寒くなっちゃったんでしょうか)
日除けにと持ってきていたバスタオルを鞄から引っ張り出し、セイカにかけてみる。
「……何?」
「寒いのかなって」
「寒い訳ないじゃん……暑い、やめて……」
「……ごめん」
バスタオルを畳んで鞄に戻す俺をカサネが心配そうに見つめている。
「水月ぃ~、俺にも冷たいのんしゅーしてぇな」
「私にもお願いします。背中と膝の裏を重点的に」
「あ、うん」
セイカの不機嫌は俺が無許可で冷感スプレーをかけたことが理由ではなさそうだ。
(めんどくせぇなぁこの子……)
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