冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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油揚げ好きの付喪神様 (水月+歌見・ミタマ・サキヒコ)

彼氏達に癒されて、バイト先に着いた頃には俺はすっかり心身共に元気になっていた。シュカの過去に対する感情は変わらないけれど、気にし過ぎる必要はないと悟った。感情の鮮度が下がった、少し乾いた……そう表現すべきかもしれない。

「水月、お疲れ」

「パイセン、お疲れ様でそ」

シフトを終えて着替えていると配達を終えた歌見がやってきた。

「明日だよな、誕生日パーティ。なんかしょっちゅうパーティやってる気がするよ」

「月一回は誰かの誕生日ですし、毎月何かしらイベントはありますし……出費がかさみますな。パイセン大丈夫ですか?」

歳上の生活を心配するなんて無礼な真似とは分かっていたが、彼は地元を離れた苦学生だ、金や時間の浪費は俺のように親の庇護の元暮らしている人間とは違い死活問題になる。無礼を承知で確かめなければ。

「大丈夫大丈夫」

「無理は禁物ですぞ」

「お前にはまだ分からないかなぁ、他所のお宅で食事会ってことはな……食費と光熱費が丸々浮くんだよ。あんまり言いたくないが、プレゼント代よりあの家のご馳走一食分の方がずっと高いしな」

「はぁ……そういうもんですか」

「もちろん俺の普段の一食分に比べればプレゼント代のが高いんだが、誕生日以外でも結構お呼ばれするし……そういう時は手ぶらだろ? ほら、夏休みの旅行とかさ。総合的に見れば得してるのは俺の方なんだよ。お前の家にもちょくちょく世話になってるしな」

「ならいいのですが」

「申し訳なく思ってるのは俺の方だよ、大したことしてやれないのに飯たかってばっかで」

「そんな、パイセンは頼りになりますし日頃わたくしの目の保養になってくれてまそ」

「……まぁお前は彼氏だし、身体で返すってのもありなんだろうけど……紅葉くん達だよ」

「あぁ……」

それは、俺も思っている。毎日お弁当を作ってきてくれるミフユ、何かあれば車を出してくれる年積家の方々、様々な費用を負担してくれている紅葉家……俺はそれほどのことをネザメやミフユにしてやれているだろうか。いや、出来ているはずがない。

「対等な関係ってのは難しいもんですな、常識外れの大金持ちですし」

荒凪を引き取ったことで俺にも大口のパトロンは出来たけれど、ほいほい頼れる訳じゃないしなぁ。

「鳥待くんみたいに開き直ってみたいもんだ」

「あぁ……シュカは確かに、いやあそこまではちょっと」

「タッパー持参だもんな……っと、引き止めちゃ悪いな。また明日」

「え~もう少し話したいでそ」

「俺は嬉しいが、晩飯遅くなるぞ。さっさと帰れ」

歌見と別れ、真っ直ぐ家に帰り──はせず、駅に程近い寿司屋に寄る。バイト前に稲荷寿司を予約注文しておいたので、取りに行くのだ。

「ありがとうございました~」

具沢山の稲荷寿司。油揚げはコク深く、絶品だ。ミタマの喜ぶ顔が目に浮かぶ。

「ただいまー」

家に帰って荷物を部屋に置き、部屋着に着替えたらまず庭に出た。庭の脇に祠と稲荷像があるのは異様な光景だ、庭が道に面していなくてよかった、もしそうならどんな噂が立ったことか。

「ここでいいのかな……?」

祠にはちょっとした供え物を置けるスペースがある。そこに買ってきた稲荷寿司を置いて手を合わせ、目を閉じる。

「…………」

ミタマは俺がバイトに行く日、つまり水曜日以外は駅から家までセイカを運んでくれている。その後、俺のバイト先である本屋に来ることもあるが、大抵は稲荷像に入って休憩している。

(お……! 出ましたな)

灰色の稲荷像が黄金色に変わる、いや違う、黄金の毛を持つ狐が像に重なっている。像を残して狐だけがぴょんと台座を降り、三本の尾を揺らしながら少年へ姿を変える。

「あぶらげ!」

ミステリアスな雰囲気をかなぐり捨てて、謎めいた糸目を開眼させて、両手で稲荷寿司を掴む。

「む、稲荷寿司か。むむ……! 五目! んんっ……んぅ~、具沢山じゃのぅ。美味い! 結構高いヤツじゃろこれ、そこらのとはコクが違うわ」

「お疲れ様、コンちゃん。今日はワガママ聞いてもらったからね……」

「むぐ……んんっ」

「急いで食べちゃ詰まるよ」

尻尾がバタバタ揺れている。神秘性の欠片もない。初めて出会った時はもっと怖かった、胡散臭さと異質さが彼の狐らしい神秘性を保たせていた。しかし今はどうだ、与えた食事にちぎれんばかりに尾を振って……飼い慣らされた愛玩犬のようではないか。

「……ふふっ」

可愛い。ミステリアスな子も好きだけれど、犬みたいに分かりやすい子も好きだ。ピンと立った耳ごと頭を撫でてやろうと手を伸ばす。

「んん、うま……ん~! ん…………ガヴッ!」

手のひらが髪にふわりと触れた瞬間、ニコニコ笑顔で稲荷寿司を貪っていたミタマは俺に向かって吠えた。

「……あっ、すまんみっちゃん。撫でたいのかの? くふふ……仕方ないのぅ、特別にワシの毛並みを楽しませてやろう」

「あ、あぁ……ありがとう」

ぺたんと耳が寝る。撫でられ待ちの犬がこんなふうになるのを、インターネットのそこかしこに転がる動画で見て知っている。今度はミタマは吠えず、むしろ俺の手に擦り寄るようにしながら、食事を再開させた。

「……ミツキ、食事中に触れてはいけない。私が生きていた当時、紅葉家で番犬として飼われていた犬が居てな、とても賢く忠実で殊勝な犬だったのだが、食事中に手を伸ばせば鼻の上に皺を寄せたぞ」

「そ、そう……」

ミタマは狐なのに。いや、狐も犬も大して変わらないか、むしろ野生に近い狐の方が苛烈に怒りそうなイメージがある。いやいや犬か狐か以前にミタマは神だぞ? 人間以上の知恵を持った付喪神だ、それが習性の通りに威嚇してくるってどうなんだ。

「…………」

まぁ、好物食べて尻尾振るような神だからなぁ。

「美味しかったのじゃ! みっちゃん、またこれ買ってきて欲しいのじゃ。高級品じゃろうし無理にとは言わん。普段は一パック二百円程度ので構わん……じゃが! 何かワシがとても役に立った時には、どうか!」

「もちろん。お礼の意味以外でも、嬉しそうなコンちゃんを見られるのは嬉しいし……またいつか買ってくるよ」

「嬉しいのじゃ! ありがとうなのじゃみっちゃ~ん!」

ミタマに抱きつかれ、べっとり汚れた彼の口周りの感触を頬で味わいながら思う、ミタマはたまに畏怖の念が薄くなっては信仰心が薄れて力が出なくなるとボヤいているが、畏怖の念が薄まる最大の原因は俺達の慣れではなく、ミタマの親しみやすさではないかと。
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