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ワンコ系? (水月+歌見)
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放課後のバイトタイム、倉庫で在庫の確認作業中、背後から肩を叩かれた。
「よっ、鳴雷」
「歌見先輩! 驚かせないでくださいよ」
「はは、悪い悪い。在庫チェックか? お疲れ様」
「……先輩こそ配達帰りですよね、お疲れ様です」
あれ、お疲れ様とご苦労様ってどっちが上用だっけ? 歌見は気にしていなさそうだし、別にいいか。
「あぁ、汗臭いか?」
近寄ると汗の匂いはするが臭くはない。ムラムラしてしまう匂いだ、なんて正直に言えたらいいが流石に無理──いや、オブラートに包めばイケるか。
「汗の匂いはしますけど……なんだかいい匂いに感じます」
「えぇ? いいぞ気ぃ遣わなくて」
「いえ、本当に……あ、そういえば知ってますか? この間本で読んだんですけど、遺伝子的に相性がいい人の体臭はいい匂いに感じるそうです。思春期の娘が父親を臭く感じるのは近親相姦対策、なんて説もあるんですよ」
歌見は目を丸くしている。俺はチェックシートに数字を書き入れ、在庫確認の作業に戻ろうとした。しかし歌見に腕を掴まれてしまう。
「歌見先輩? なんですか?」
「……俺とお前は相性がいいってことか?」
試してみますか? なんて言って倉庫でヤれたら話が早いんだがな。
「やだ先輩、匂いに関するそういう話もあるってだけですよ」
「そうだな……その話によると、俺がお前をいい匂いだと思えたら確実に相性がいいってことになるな」
案外グイグイくる人だな。ノンケっぽかったから攻略はゆっくりしていくつもりだったけど、早めても大丈夫かもしれない。
「歌見先輩……?」
歌見は俺の肩を掴んで首筋や耳の裏に鼻を近付けた。先輩後輩の上下関係を気にして抵抗はできないが、戸惑いつつ少し嫌がっている演技をしておく。
「先輩っ……あの、恥ずかしいんですけど」
「……っ、悪い」
「いえ…………あの、俺の匂いどうでした?」
俺からバッと離れた歌見の顔はほんのりと赤い。いい匂いだったらしい、当然だ、俺は母にそれとない香水のつけ方を教わっているし実践している。
「先輩? あんまりいい匂いじゃありませんでしたか?」
「……いや、なんというか……その、甘い匂いだったな。こんな匂い嗅いだことないぞ、シャンプーとかじゃなさそうだし……あの甘いのがお前の体臭ってことになるよな」
「自分では甘いとは思えませんけど」
チューベローズの香水をふんわりと……歌見は香水だと気付けなかったようだ。俺自身の体臭で相性を測るなんて綱渡り、臆病な俺にはできない。騙すような真似で悪いが上手くいってよかった。
「いい匂いだったなら、俺達相性抜群ってことですね! なーんて、ふふっ……そろそろ仕事に戻らないと」
歌見に与える印象はあくまでも無邪気な後輩、天然で魔性な部分を見せたとしてもそれを計算っぽく感じさせてはいけない。
「……先輩?」
歌見はまた俺の肩を掴んだ、それどころか俺を無理矢理自分の方に向けた。
「鳴雷……」
肩から顎へと手が移り、期待に胸を躍らせる暇もなく唇が押し付けられた。
「…………っ!? ち、ちが……いやっ、その……悪い、ごめん!」
そっと腰に腕を回そうとしたが、手が触れると歌見は正気に戻ってしまい、大慌てで倉庫を出ていった。
(うむむ……やはりノンケなんでしょうか。まぁそれも崩れつつありますが。ほっぺたとはいえ自分から男にキスしたんです、それもバイト先の歳下! これは責任取らなきゃいけませんなぁ歌見氏! ごめんで済んだら警察はいらないんですぞ~!)
唇にして欲しかったなと思いながら頬に手を当て、もうすぐ歌見も手に入れられるのだとほくそ笑む。
俺はその後いつもより早く在庫確認の作業を終わらせた。
(品出しも終わりましたし、立ち読みさんがぐちゃぐちゃにした棚でも整理しますかな)
本棚の整理中、妙にキョロキョロと辺りを見回している不審者を発見。黒いパーカーのフードを被った少年だ、万引きかもしれないので声をかけておく。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「……っ!? あっ……!」
俺を見上げた少年は幼い顔立ちながらも整っており、俺好みだった。目深に被ったフードからはみ出た髪は薄いピンク色で、眉まで染めている徹底ぶり。スーパーに並んだ魚のような真っ黒な目が逆に印象的だ。
(可愛い子ですなぁ、どうにか口説きたいでそ。しかし、今はつけてないようですが耳の大量のピアスホールやピンク髪、金魚草みてぇな目といい……地雷臭すごいですな)
万引きを学校や親にバラすぞと脅す、なんてのはエロ漫画の展開としては嫌いじゃないが現実ではできない。そもそも万引き犯かどうか分からないし。
「本の名前や作者名が分からなくても、作品の特徴を言っていただければ分かるかもしれません。どうぞ、遠慮なく」
とりあえずテンプレ台詞っと。
「…………ここで働かせてください!」
長らく興行収入トップに君臨していた某銭湯映画か?
「えっと……店長のとこ行きましょうか」
バイトの俺が判断できることではないので、店長を呼んで三人でバックヤードに引っ込んだ。
「えーっと、うちで働きたいのね」
「はい! でも今日面接を受けるつもりはなかったので履歴書とかはないです!」
バイト希望の店の様子を見にきただけなのに、俺が声をかけたから焦って言っちゃった感じか、悪いことしたかな。
「履歴書ねぇ……鳴雷くん、そこの引き出しに入ってるから取ってくれる?」
「採用するんですか?」
「あ、そうね。君、ちょっとそこのダンボール持ってみて」
「はい!」
少年は席を立ち、本が詰まったダンボールを持ち上げた。店長は次に「歩いて」と言い、少年はその通りにした。
「OK、アレ運べるなら採用。鳴雷くん履歴書取って」
「うわ雑。分かりました」
「品出しと棚卸しは教えられるけど、筋力はやっぱり最初から欲しいのよ。それにあの子返事が気持ちよくて……鳴雷くん顔はいいけどちょっと暗いから」
「そそっ、そうですかぁ? すいませんね、へへへ……」
大好きな本に囲まれているからつい本性が出てしまっていたのだろうか、本だけに、なんつって。おっと、動揺のせいでオヤジギャグが暴発した。
(気を取り直して名前くらい見ておきましょうかな)
渡した履歴書に個人情報を記入中の少年の斜め後ろに立つ。彼は電話番号の欄で筆を止め、スマホを持った。自分の電話番号を覚えていないらしい。
(今のうちにお名前を……ん? おや? おやおや?)
少年の名前を見るつもりだったが、少年のスマホの壁紙を見てそれを忘れてしまった。彼が使っていた画像は盗撮されてバズった俺の写真だったのだ。
「よっ、鳴雷」
「歌見先輩! 驚かせないでくださいよ」
「はは、悪い悪い。在庫チェックか? お疲れ様」
「……先輩こそ配達帰りですよね、お疲れ様です」
あれ、お疲れ様とご苦労様ってどっちが上用だっけ? 歌見は気にしていなさそうだし、別にいいか。
「あぁ、汗臭いか?」
近寄ると汗の匂いはするが臭くはない。ムラムラしてしまう匂いだ、なんて正直に言えたらいいが流石に無理──いや、オブラートに包めばイケるか。
「汗の匂いはしますけど……なんだかいい匂いに感じます」
「えぇ? いいぞ気ぃ遣わなくて」
「いえ、本当に……あ、そういえば知ってますか? この間本で読んだんですけど、遺伝子的に相性がいい人の体臭はいい匂いに感じるそうです。思春期の娘が父親を臭く感じるのは近親相姦対策、なんて説もあるんですよ」
歌見は目を丸くしている。俺はチェックシートに数字を書き入れ、在庫確認の作業に戻ろうとした。しかし歌見に腕を掴まれてしまう。
「歌見先輩? なんですか?」
「……俺とお前は相性がいいってことか?」
試してみますか? なんて言って倉庫でヤれたら話が早いんだがな。
「やだ先輩、匂いに関するそういう話もあるってだけですよ」
「そうだな……その話によると、俺がお前をいい匂いだと思えたら確実に相性がいいってことになるな」
案外グイグイくる人だな。ノンケっぽかったから攻略はゆっくりしていくつもりだったけど、早めても大丈夫かもしれない。
「歌見先輩……?」
歌見は俺の肩を掴んで首筋や耳の裏に鼻を近付けた。先輩後輩の上下関係を気にして抵抗はできないが、戸惑いつつ少し嫌がっている演技をしておく。
「先輩っ……あの、恥ずかしいんですけど」
「……っ、悪い」
「いえ…………あの、俺の匂いどうでした?」
俺からバッと離れた歌見の顔はほんのりと赤い。いい匂いだったらしい、当然だ、俺は母にそれとない香水のつけ方を教わっているし実践している。
「先輩? あんまりいい匂いじゃありませんでしたか?」
「……いや、なんというか……その、甘い匂いだったな。こんな匂い嗅いだことないぞ、シャンプーとかじゃなさそうだし……あの甘いのがお前の体臭ってことになるよな」
「自分では甘いとは思えませんけど」
チューベローズの香水をふんわりと……歌見は香水だと気付けなかったようだ。俺自身の体臭で相性を測るなんて綱渡り、臆病な俺にはできない。騙すような真似で悪いが上手くいってよかった。
「いい匂いだったなら、俺達相性抜群ってことですね! なーんて、ふふっ……そろそろ仕事に戻らないと」
歌見に与える印象はあくまでも無邪気な後輩、天然で魔性な部分を見せたとしてもそれを計算っぽく感じさせてはいけない。
「……先輩?」
歌見はまた俺の肩を掴んだ、それどころか俺を無理矢理自分の方に向けた。
「鳴雷……」
肩から顎へと手が移り、期待に胸を躍らせる暇もなく唇が押し付けられた。
「…………っ!? ち、ちが……いやっ、その……悪い、ごめん!」
そっと腰に腕を回そうとしたが、手が触れると歌見は正気に戻ってしまい、大慌てで倉庫を出ていった。
(うむむ……やはりノンケなんでしょうか。まぁそれも崩れつつありますが。ほっぺたとはいえ自分から男にキスしたんです、それもバイト先の歳下! これは責任取らなきゃいけませんなぁ歌見氏! ごめんで済んだら警察はいらないんですぞ~!)
唇にして欲しかったなと思いながら頬に手を当て、もうすぐ歌見も手に入れられるのだとほくそ笑む。
俺はその後いつもより早く在庫確認の作業を終わらせた。
(品出しも終わりましたし、立ち読みさんがぐちゃぐちゃにした棚でも整理しますかな)
本棚の整理中、妙にキョロキョロと辺りを見回している不審者を発見。黒いパーカーのフードを被った少年だ、万引きかもしれないので声をかけておく。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「……っ!? あっ……!」
俺を見上げた少年は幼い顔立ちながらも整っており、俺好みだった。目深に被ったフードからはみ出た髪は薄いピンク色で、眉まで染めている徹底ぶり。スーパーに並んだ魚のような真っ黒な目が逆に印象的だ。
(可愛い子ですなぁ、どうにか口説きたいでそ。しかし、今はつけてないようですが耳の大量のピアスホールやピンク髪、金魚草みてぇな目といい……地雷臭すごいですな)
万引きを学校や親にバラすぞと脅す、なんてのはエロ漫画の展開としては嫌いじゃないが現実ではできない。そもそも万引き犯かどうか分からないし。
「本の名前や作者名が分からなくても、作品の特徴を言っていただければ分かるかもしれません。どうぞ、遠慮なく」
とりあえずテンプレ台詞っと。
「…………ここで働かせてください!」
長らく興行収入トップに君臨していた某銭湯映画か?
「えっと……店長のとこ行きましょうか」
バイトの俺が判断できることではないので、店長を呼んで三人でバックヤードに引っ込んだ。
「えーっと、うちで働きたいのね」
「はい! でも今日面接を受けるつもりはなかったので履歴書とかはないです!」
バイト希望の店の様子を見にきただけなのに、俺が声をかけたから焦って言っちゃった感じか、悪いことしたかな。
「履歴書ねぇ……鳴雷くん、そこの引き出しに入ってるから取ってくれる?」
「採用するんですか?」
「あ、そうね。君、ちょっとそこのダンボール持ってみて」
「はい!」
少年は席を立ち、本が詰まったダンボールを持ち上げた。店長は次に「歩いて」と言い、少年はその通りにした。
「OK、アレ運べるなら採用。鳴雷くん履歴書取って」
「うわ雑。分かりました」
「品出しと棚卸しは教えられるけど、筋力はやっぱり最初から欲しいのよ。それにあの子返事が気持ちよくて……鳴雷くん顔はいいけどちょっと暗いから」
「そそっ、そうですかぁ? すいませんね、へへへ……」
大好きな本に囲まれているからつい本性が出てしまっていたのだろうか、本だけに、なんつって。おっと、動揺のせいでオヤジギャグが暴発した。
(気を取り直して名前くらい見ておきましょうかな)
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