冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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愛しい君の欲しいもの

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昼食を食べた後、カミアはどこかに電話をかけた。どうやらマネージャーのようだ。

「はいっ☆ 配信頑張りました☆ え? 自宅ですよ、もちろん。カメラ? はい、いつもの物の調子が悪かったので別の物を使いましたが…………はい、気を付けます。はい、はーい……分かりました、はーい……では失礼しま、はい、はい……」

全然電話を切らせてもらえないカミアを気の毒に思いつつもニマニマと笑いながら眺めていると、カンナに肩をつつかれた。

「……みぃくん、メ……ク……落と、た……いっしょ、に……て?」

「メイク落としたい? 一緒に来てって? あぁ、もちろんいいよ」

カミアに身振り手振りで洗面所に行くことを伝え、頷いた彼を置いて二人で洗面所に向かった。

「み、くん……カツラ、持っ、てて?」

「あぁ、大事に持っとくよ……ぅ、頭皮まで再現されてるからちょっと怖いんだよな、これ」

「ぼく、とーひ……な……から」

「俺はこの頭皮好きだぞ~? 独特な撫で心地舐め心地で……」

「だ、だめ……蒸れて、た……からぁっ……舐め……の……ぁら、て……からっ!」

ヅラを預かって後ろに下がり、鏡越しにカンナのメイク落としの様子を見させてもらう。

(ん……? うぉおっ! 皮が剥がれましたぞ!? そ、そんなメイクあるんですか……特殊メイクの域では? あわわ、カンナたその元のご尊顔がグロめなせいでマジで顔の皮膚剥がしてるみたいに見えますな……)

メイクを落としてさっぱりした様子のカンナがタオルで顔の水気を取り、こちらを向く。頬骨から上は焼け爛れた歪な肌、頬骨から下はカミアと同じ白い柔肌。髪は耳の後ろや後頭部に刈り跡がある程度で他はもう生えてくる様子すらない、それは眉毛も睫毛も同様だ。ゲームに出てくるゾンビのような顔の上半分の中で、綺麗に輝く丸っこい瞳の美しさは異質だった。

「みぃくん……きれ、なった……よ。舐め、る?」

「いいのか? じゃあ……」

メイクを落として「綺麗になった」と言ってくれたのが嬉しくて頬が緩んでしまう。優しく抱き寄せて、まずはでこぼこの爛れた肌に頬擦り。他では味わえない感触に思わず息が乱れ、股間に熱が集まる。

「お兄ちゃんっ、メイク落としたの?」

「……カミア」

「早くこっち来て、化粧水塗らなきゃ。お兄ちゃん普通より手厚くケアしなきゃいけないのに雑だからちょっと荒れ気味なんだよ」

カミアは強引に俺とカンナを引き剥がし、カンナをグイグイと引っ張っていく。化粧水などを塗られてはもう舐められない、先に舐めさせて欲しいところだが、荒れ気味と聞いて引き下がれないほどバカな男じゃない。

「普段化粧水使ってないの?」

「そんな金ない。保湿クリームが限界」

「今度僕のオススメ送るよ、やっと住所分かったし。欲しい物あったら言ってね」

それは……カンナは嫌がるんじゃないか? カミアに迷惑をかけたくないからと今まで接触を断ってきた訳だし、弟に貢がせるなんてカンナのプライドが──

「……パソコン欲しい」

──おや?

「どんなやつ? ふんふん……ちなみにそれはいくらくらい? にじゅにまっ……!? わ、分かったよ。もちろん買ってあげる、お兄ちゃんのためだもん」

「周辺機器も」

「うんうん、ここ座って。塗ってくよー」

鏡台の前に座らされたカンナの顔にカミアによって化粧水が塗られていく。もう舐められない。

「他には?」

「チモシー、可愛い部屋着、勝負下着、可愛い普段着、長髪のカツラ。もっといい布団かベッド…………そうだ、何より……もっといい家に住みたい、大きくなくていいから、新しくて建付けのいい家がいい」

「ま、待って待って、貯金的には大丈夫なんだけどね? ママにバレるとやばいからぁ……加減してお兄ちゃん」

「半分くらい冗談だよ」

なーんだ。やっぱり俺の可愛いカンナたんは控えめな子だ、たとえ図々しくても可愛いけどな!

「そっかぁ……じゃ、本当に欲しいのは何?」

「チモシーのベッド」

「……それだけ? 僕はお兄ちゃんのものを買ってあげたいんだけど。それ別に高くもないでしょ……加減し過ぎだよお兄ちゃん」

ベッドが高くないとはトップアイドルは恐ろしいな。しかしチモシーとは一体……ブランド名だろうか? ニ〇リ的な?

(気になることは即検索検索ゥ~)

さてチモシーの検索結果は……イネ科の多年草? 牧草? ウサギのエサ? つまりチモシーのベッドとは、寝てOK掘ってOK食べてOKのウサギの寝床。

(カンナたそが一番欲しいのはペットのベッドなんですか!? 自分の美容よりもぷぅ太ちゃんの幸福なんですなカンナたそ、可愛い……尊いでそ、天使でそぉ……貢ぎてぇ)

あまり高くなさそうだし、消耗品っぽいし、俺が買ってあげようかな。ぷぅ太に懐いてもらえれば家に遊びに行きやすくなるし、いいこと尽くめだ。

「お兄ちゃんのもので欲しいものないの?」

「服……みぃくん、が……喜びそうな、服と……下着」

三面鏡によって増えたカンナの視線がチラチラと俺を見る。ここがユートピアか。

「カンナは何着てても可愛いよぉ! 服欲しいのか? テスト終わったら買い物デート行こうな、俺もバイトしてるんだから服の一着や二着買ってやれるぞ」

「服、買い……行く……服、ない。それ、にっ……下着、は……みぃくん、の……知らな、の……で……びっくり、させ、た……」

「……えっお兄ちゃんもうそういうの考慮する段階まで来てるの? 手ぇ早過ぎだぞこのケダモノ! ぼくのお兄ちゃんに変なことするな!」

カミアはぎゅっとカンナを抱き締め、丸っこくて愛らしい瞳で必死に俺を睨む。二人とも可愛い、双子丼したい。

「塗れた?」

「あ、うん。もういいよ」

あっさりと抱き締めた腕をほどくところも可愛い。

「……みぃくん」

ヅラを被り直すとカンナは俺の前に立ち、両手を広げる。抱き締める他に選択肢がない。

「…………まだイチャつくつもりならメイク落とさなくてもよかったんじゃない?」

「みぃくん、変態だから」

「そっか……」

雑な説明だ。カミアはちゃんと理解したのか? 理解を放棄したんじゃないのか?

「みぃくん、ぼく……めーく、してな……ほが……い、よね?」

「そうだな、カンナはすっぴん美人だよ。でも……セクシーな唇してるから、口紅とかはいいかもしれないぞ? 色の濃いのが似合うかもな」

くい、と顎を持ち上げて唇を親指で撫でる。

「……まぁ、つけてもつけても俺の唇に移っちまうから意味ないかな? それとも俺が買ってあげて、少しずつ返してもらう方がいいかな」

「ぁ、う……ぁぅ……ぅ、あぁあ……!」

真っ赤な口紅を想像していたけれど、カンナはすぐに顔を真っ赤にしてしまうから塗っても目立たなくなってしまうかもな。なんて。

「お兄ちゃんショートさせないでよぉ! 僕のお兄ちゃんはカッコイイんだぞ、それをよくもこんな可愛い感じにしてくれちゃって!」

「なんだ、嫉妬か?」

「嫉妬だよ! お兄ちゃん返せぇ! 僕これからもたまにしか会えないんだからな、毎日会えるんだから今日くらい僕のにしてよ、もう帰れぇ!」

「痛い痛い」

ぽこぽこと俺を叩くカミアは当初の印象をひっくり返す可愛さだ。これがカンナが語っていたカミアの可愛げというヤツなのかな? イイな。もうワンチャンだのダメ元だの言わず、本気で落とそう。
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