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テスト一日目
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一時間目は現代文、通称現国のテストだ。
現代文のテストは他の教科とは違い、読解力を試す部分が多くを占めるため直前に教科書を読んで暗記で足掻くということが出来ない。せいぜい文法や漢字を見直す程度だ。
「始め!」
俺は間違えやすい漢字を最後まで確認し、教師の指示に従って最低限の筆記具だけを机に残して他は全て鞄に詰めた。
クラスメイト達の緊張が伝わってくるようだ、教室全体がピリピリしている。咳でもしようものなら言葉でも視線でもない方法で非難されそうだ。
(あぁ~! テストの雰囲気って苦手でそ! ま、中学の頃と違ってポケットや机にカンニングペーパーが知らない間に突っ込まれてたりってことはないでしょうから、その辺は気楽ですが)
中学時代のテストのやりにくさを思い出し、超絶美形になった現在の生きやすさを改めて実感する。
(人は見た目が十割ですな)
シャープペンシルの銀色部分に映る自分の歪んだ像を眺めて自分の恵まれたルックスを褒めつつ、心のどこかで虚しさを感じた。
「はぁー……終わったぁー」
現代文の後は現代社会、その後は古文、三連続のテストが終わり、課題を提出した後、俺は下駄箱の脇に彼氏を集めた。
「まだ終わってませんよ、あと二日あります」
「嫌なこと言うなよなぁ、今日の分は終わったんだからさ。ハル、国語得意だったよな。どうだった?」
「現国も古文も絶対百点!」
「……いや百点はないだろ、流石に」
小学校じゃあるまいし、高校で満点を取るなんて現実的ではない。そんなの一部の天才かフィクションの中だけでの話だ。
「勉強時間短めなみっつんは?」
「俺は……まぁ、半分は取れてるかなって感じだ」
「それ危なくないですか? 五十点以下は赤点で追試ですよ」
「……えっ? 五十点以下で赤点? 嘘だろ赤点って言ったら三十点くらいじゃないのか!?」
「この前ちゃんと説明されたじゃないですか、赤点は五十点以下です」
半分は取れているという自覚が厳しめだったらまだしも、甘かったとしたらまずい。追試は嫌だ、彼氏と過ごす時間が減る。
「そういうしゅーはどうなの?」
シュカは見るからに秀才だ、八十点以下なんて人間じゃありませんよオホホとか吐き捨てるだろう。
「……まぁ、赤点は回避していると思います」
「なんだよ、謙虚だな。リュウ?」
「全部赤点やと思う」
「……追試になったら一緒に行こうな! カンナは?」
「はち、わ……くら……か、な」
八割取るタイプはカンナだったか。以前得意教科がないと不安げに話していたが、アレは特化型ではないだけでオールラウンダーだという意味だったのか?
「ぅう……俺には得意教科がねぇ、オールラウンダーでもねぇ」
「……なんかそんな歌ありましたね。ほら、演歌? の……なんでしたっけ」
「おらこんな頭嫌だ~、こんな頭嫌だ~、顔だけで食ってくだ~」
「あぁ、そんな感じの歌です」
「悪質な替え歌はやめろよリュウ! そこまで言われるほど頭悪くない、平均点以上は絶対取らなきゃいけなんだよ、取れてるはずだ」
「なになにみっつん、必死じゃん」
「平均超えんと小遣い減らされるんか?」
「水月はバイトしてるんですよ? まだ小遣いもらってる訳ないじゃないですか」
「いや……歌見先輩に、平均点以上取ったらなんでも一つ言うこと聞いてやるって約束してもらってて」
「…………まぁ、俺らも似たような感じで点数競争しとるしな。いちゃもんはつけんわ」
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ、俺達の場合は彼氏だが。
「合計点ではなく最高点での勝負でしたよね。百点でないにしても、もしも同じ点数になったらどうします? 二人とも勝ちで水月にねだりますか?」
「二番目に高いヤツで比べよ。俺古文も現国も両方自信あるし、何なら英語もそこそこ自信あるから。二番目まで一致だったら三番目四番目ってサドンデスすんの、どう?」
「そこまで来たらもう合計点でいいのでは」
「嫌や! そんなん俺絶対勝たれへんやん!」
自分が特化型だと自覚しているのはいいことだと思うが、その発言はあまりにも情けない。
「水月が優勝したら私達全員で御奉仕ですかね」
「いつもとそない変わらんな」
「それを言ったら「なんでも~」もそうでしょう。グレードアップはさせますよそりゃ、でなきゃやる意味がありませんし」
「俺は勝てる見込みないから考えなくてもいいよ」
自分で言っていて悲しくなってきた、先程のリュウよりもずっと情けない発言じゃないか。
「あ、そういえばさ、みっつん弟出来たんだよね。もう一緒に住んでるってマジ?」
アキとの同居が始まってすぐ、グループチャットでアキについて軽く説明した。そのため、テスト中はメッセージアプリを開かないよう決めているシュカ以外はアキの来日を知っている。
「どんな子なんだろ~、ロシアとのハーフなんだよね~? つまり金髪バージョンのみっつん? 絶対美人じゃ~ん、見たい見た~い、写真は~?」
「あー……そういえば写真とか撮ってないな」
「見たいわぁ、今日家行ってええ?」
「今テスト期間だぞ」
「数学は勉強せんでも点取れるやろし、他の教科は勉強しても無駄やて今日よぉ分かったし……」
そんなに今日の三教科の出来が悪かったのか? 何と言うか、哀れなヤツだ。いや、数学に自信があるだけ俺よりマシか。
「俺はギリギリまで詰め込むから今日はいいや~」
「私も」
「ぼ、くも……え、で、べんきょ、する」
「ほな俺だけで……」
「待て待て待てなんで俺の都合を聞かないんだ、俺も勉強したいんだ。お前に構ってる余裕はないんだよ」
「弟さん見せて欲しいだけやで。構ってもらわんでもええわ」
構う余裕は本当にないのだが、構わなくていいと言われると傷付くし腹が立つし構いたくなる。
「……分かった。言っとくけどアキはまだあんまり日本語話せないぞ」
「大丈夫や、関西弁はどの国でも通じるて言うてる芸人さんも居る」
「通じるわけないだろ!」
「通じとった! すごかってんであの人のアフリカロケ!」
「はぁ……分かったよもう、来たきゃ来いよ」
ハルとは別々の門から出て、いつものように四人で電車に乗って一人ずつ別れ、リュウと共に自宅へ向かう。
「楽しみやわぁ」
機嫌良さげに笑っているリュウを見ているとムラムラする。けれど、アキが居る家では淫らな行為には及べない。生殺しだ。
現代文のテストは他の教科とは違い、読解力を試す部分が多くを占めるため直前に教科書を読んで暗記で足掻くということが出来ない。せいぜい文法や漢字を見直す程度だ。
「始め!」
俺は間違えやすい漢字を最後まで確認し、教師の指示に従って最低限の筆記具だけを机に残して他は全て鞄に詰めた。
クラスメイト達の緊張が伝わってくるようだ、教室全体がピリピリしている。咳でもしようものなら言葉でも視線でもない方法で非難されそうだ。
(あぁ~! テストの雰囲気って苦手でそ! ま、中学の頃と違ってポケットや机にカンニングペーパーが知らない間に突っ込まれてたりってことはないでしょうから、その辺は気楽ですが)
中学時代のテストのやりにくさを思い出し、超絶美形になった現在の生きやすさを改めて実感する。
(人は見た目が十割ですな)
シャープペンシルの銀色部分に映る自分の歪んだ像を眺めて自分の恵まれたルックスを褒めつつ、心のどこかで虚しさを感じた。
「はぁー……終わったぁー」
現代文の後は現代社会、その後は古文、三連続のテストが終わり、課題を提出した後、俺は下駄箱の脇に彼氏を集めた。
「まだ終わってませんよ、あと二日あります」
「嫌なこと言うなよなぁ、今日の分は終わったんだからさ。ハル、国語得意だったよな。どうだった?」
「現国も古文も絶対百点!」
「……いや百点はないだろ、流石に」
小学校じゃあるまいし、高校で満点を取るなんて現実的ではない。そんなの一部の天才かフィクションの中だけでの話だ。
「勉強時間短めなみっつんは?」
「俺は……まぁ、半分は取れてるかなって感じだ」
「それ危なくないですか? 五十点以下は赤点で追試ですよ」
「……えっ? 五十点以下で赤点? 嘘だろ赤点って言ったら三十点くらいじゃないのか!?」
「この前ちゃんと説明されたじゃないですか、赤点は五十点以下です」
半分は取れているという自覚が厳しめだったらまだしも、甘かったとしたらまずい。追試は嫌だ、彼氏と過ごす時間が減る。
「そういうしゅーはどうなの?」
シュカは見るからに秀才だ、八十点以下なんて人間じゃありませんよオホホとか吐き捨てるだろう。
「……まぁ、赤点は回避していると思います」
「なんだよ、謙虚だな。リュウ?」
「全部赤点やと思う」
「……追試になったら一緒に行こうな! カンナは?」
「はち、わ……くら……か、な」
八割取るタイプはカンナだったか。以前得意教科がないと不安げに話していたが、アレは特化型ではないだけでオールラウンダーだという意味だったのか?
「ぅう……俺には得意教科がねぇ、オールラウンダーでもねぇ」
「……なんかそんな歌ありましたね。ほら、演歌? の……なんでしたっけ」
「おらこんな頭嫌だ~、こんな頭嫌だ~、顔だけで食ってくだ~」
「あぁ、そんな感じの歌です」
「悪質な替え歌はやめろよリュウ! そこまで言われるほど頭悪くない、平均点以上は絶対取らなきゃいけなんだよ、取れてるはずだ」
「なになにみっつん、必死じゃん」
「平均超えんと小遣い減らされるんか?」
「水月はバイトしてるんですよ? まだ小遣いもらってる訳ないじゃないですか」
「いや……歌見先輩に、平均点以上取ったらなんでも一つ言うこと聞いてやるって約束してもらってて」
「…………まぁ、俺らも似たような感じで点数競争しとるしな。いちゃもんはつけんわ」
類は友を呼ぶとはよく言ったものだ、俺達の場合は彼氏だが。
「合計点ではなく最高点での勝負でしたよね。百点でないにしても、もしも同じ点数になったらどうします? 二人とも勝ちで水月にねだりますか?」
「二番目に高いヤツで比べよ。俺古文も現国も両方自信あるし、何なら英語もそこそこ自信あるから。二番目まで一致だったら三番目四番目ってサドンデスすんの、どう?」
「そこまで来たらもう合計点でいいのでは」
「嫌や! そんなん俺絶対勝たれへんやん!」
自分が特化型だと自覚しているのはいいことだと思うが、その発言はあまりにも情けない。
「水月が優勝したら私達全員で御奉仕ですかね」
「いつもとそない変わらんな」
「それを言ったら「なんでも~」もそうでしょう。グレードアップはさせますよそりゃ、でなきゃやる意味がありませんし」
「俺は勝てる見込みないから考えなくてもいいよ」
自分で言っていて悲しくなってきた、先程のリュウよりもずっと情けない発言じゃないか。
「あ、そういえばさ、みっつん弟出来たんだよね。もう一緒に住んでるってマジ?」
アキとの同居が始まってすぐ、グループチャットでアキについて軽く説明した。そのため、テスト中はメッセージアプリを開かないよう決めているシュカ以外はアキの来日を知っている。
「どんな子なんだろ~、ロシアとのハーフなんだよね~? つまり金髪バージョンのみっつん? 絶対美人じゃ~ん、見たい見た~い、写真は~?」
「あー……そういえば写真とか撮ってないな」
「見たいわぁ、今日家行ってええ?」
「今テスト期間だぞ」
「数学は勉強せんでも点取れるやろし、他の教科は勉強しても無駄やて今日よぉ分かったし……」
そんなに今日の三教科の出来が悪かったのか? 何と言うか、哀れなヤツだ。いや、数学に自信があるだけ俺よりマシか。
「俺はギリギリまで詰め込むから今日はいいや~」
「私も」
「ぼ、くも……え、で、べんきょ、する」
「ほな俺だけで……」
「待て待て待てなんで俺の都合を聞かないんだ、俺も勉強したいんだ。お前に構ってる余裕はないんだよ」
「弟さん見せて欲しいだけやで。構ってもらわんでもええわ」
構う余裕は本当にないのだが、構わなくていいと言われると傷付くし腹が立つし構いたくなる。
「……分かった。言っとくけどアキはまだあんまり日本語話せないぞ」
「大丈夫や、関西弁はどの国でも通じるて言うてる芸人さんも居る」
「通じるわけないだろ!」
「通じとった! すごかってんであの人のアフリカロケ!」
「はぁ……分かったよもう、来たきゃ来いよ」
ハルとは別々の門から出て、いつものように四人で電車に乗って一人ずつ別れ、リュウと共に自宅へ向かう。
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