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兄弟別々のお勉強
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歌見の身体を好きにさせてもらえる未来を妄想して勃ったので一発トイレで抜いた後、部屋に戻った。俺の妄想は平均点以上を取らなければ妄想で終わる、勉強を頑張らなければ。
「ただいま」
二人から「おかえり」と返事がある。やはりリュウは翻訳アプリを使わずにアキと話しているようだ、俺のスマホは放置されてスリープモードに移行している。
《そういえばアンタ金髪だけど染めてんの?》
「ん? なんや頭見て……髪か? 染めとんで、ほら」
《あ、根元黒い。染髪か。日本人ってみんな黒いの?》
「自分のは天然もんやろ? 珍しいんやろなぁ、自分みたいな白いもん見たことあれへんわ。綺麗やなぁ」
リュウは英語すら出来ないし、アキは日本語を勉強中、アプリを通さず話せるとは思えない……やっぱりお互い勝手に話したいことを話しているだけなのだろうか? いや、気にするな、俺は勉強するんだ。
(明日は理科と英語と数学……理科は直前になってから暗記でどうにかしまそ。とりあえず英語ですな)
英語は総合英語という文法などを重点的にやる方と、コミュニケーション英語というリスニングなどが混じった名の通りコミュニケーション用の英語を重点的にやる方の二種類がある。明日テストがあるのは後者だ。
(リスニング教材確か配られてましたよな、CDで……あったあった。答えの冊子も付いてますな。一回授業でやった分ですな、復習しまそ)
携帯式CDプレーヤーをセットしているとリュウが俺の肩をつついた。
「水月ぃ、百科事典とかあれへん?」
「百科事典? あー……小学生の頃に買ってもらったな。本棚の一番下の段にないか? そんなもんどうするんだ?」
「アキくんと話すんに使お思て」
「ロシア語載ってないと思うぞ? アプリ使えばいいのに」
翻訳アプリは使わないようなのでスマホを返してもらい、机の端に置いた。イヤホンで耳とCDプレーヤーを繋ぎ、ノイズキャンセリング機能の素晴らしさを実感する。これならリュウとアキの会話は聞こえない、集中出来る。
「これがたぬきや、アライグマは……これやな、似とるんがレッサーパンダやアナグマあたりやろか」
「たぬ、き……」
「ほいでこれがキツネ。キツネはロシアにも居ったんちゃう?」
やはりアキが話すロシア語は英語とは発音が違うな。いや、今はそんなことどうだっていい、集中しなければ。
「植物、しょーくーぶーつ」
「しょく、ぶつ」
「せや。花、木、くだもん、野菜、こっから先に載っとるもんみな植物や。んでこっちは動物、生きとるもんや」
「どーぶつ……ぼく、ねこ、すきです」
「そーなん? 俺は犬派やなぁ」
まずい、例文も問題文もほとんど聞き取れなかった。俺のリスニング能力が壊滅的だということしか分からない。
「一通り説明したったで。ほな行くで、リンゴどれや、リンゴ」
「りんご……りんご!」
「おっ、正解や。ほな次、レモン!」
「れもん……?」
「あー、惜しい。これバナナや」
リスニングの例題を読み上げる人は発音がネイティブ過ぎる。もっとカタカナ発音で話してくれないと聞き取れない。
「はぁ……ちょっと休憩。お前ら何してんだ?」
イヤホンを外して振り返るとリュウとアキは百科事典を広げて眺めていた。
「開いたページんあるもん一旦全部名前教えてな、ほいで後からクイズ出すねん。写真ついとるから覚えやすうてええやろ」
「……日本語教えてくれてたのか? めちゃくちゃありがとうだけど、自分のテスト前にすることかよそれが」
「りんご、れもん、ばなな、みかん、はっさく、ぽんかん」
アキは果物が載っているページを広げ、写真を指差しながら拙い日本語で名前を当てていく。一ページ全て当てると得意げな顔で俺を見上げた。
「可愛い……! すごいぞアキ、よく覚えたな。リュウ、ありがとうな」
「動物も結構覚えてんな。次は野菜やろか、海の生きもんがええか?」
「……リュウは面倒見いいよなぁ。カンナのこともよく構ってくれてるし……ちっちゃい弟とか居るのか?」
「俺ぁ一人っ子やで。せやけど親戚ちっちゃいのんばっかでな、俺と歳近いもんとか歳上とか居らんねん。せやからちゃう? 知らんけど」
面倒見のよさの理由が分かった。リュウが幼い子供の相手が得意だからだろうか、リュウに言葉を教わるアキも実際以上に幼く見える。
「……なぁ水月、ちんことかうんことか教えたアカン?」
「ダメに決まってんだろ真剣な顔で何言ってんだお前、せっかく尊敬しかけてたのに……」
「水月の軽蔑の目たまらん……! へへ、ホンマにはやらへんよ。アキくん、野菜行くで。キャベツ、レタス、白菜──」
俺に見下して欲しいからふざけた提案をしたのか? 紛らわしいドMだ。
(アキきゅんわたくしと話してる時より楽しそうですな……)
寂しさなんて感じなくていい、俺は勉強に集中しないといけないのだからアキを構えなくて当然だ。まともな交流が出来ていないのだからリュウとの方が楽しそうで当然だ。
夕方になり、リュウが帰ると言い出した。俺とアキは彼を玄関まで見送りに行った。
「てんしょー、ばいばいです」
「おぅ、ほななアキくん。また明日な水月」
手を振るリュウに対し、アキは両手を大きく広げる。リュウは目を丸くした後くすりと笑い、アキを抱き締めて背をぽんぽんと叩き合った。
「外人さんよぉハグするてホンマなんやね、また今度遊びに来るわ。ほな」
「また明日なー……リュウには十字とかやらないのか?」
《アイツ気に入ったぜ兄貴、俺のマブダチ第一号だ。ハグにも抵抗ないみたいだしな。兄貴全然ハグしてくんねぇから寂しいんだよなー……文化違うってのは分かってんだけどさー?》
アキが何を言っているのかは分からないからリュウがどの程度彼の言いたいことを汲み取っていたのかも分からない。けれど、俺よりはずっと通じ合っていたのだろうというのはよく分かる。
「……俺なんかより、リュウみたいなヤツが兄貴のがよかったよな。ごめんな、顔だけのオタク野郎なんかでさ」
《疲れた顔してんな、ハグしようぜ》
「…………俺なんかにも抱かせてくれるのか? あぁ……やっぱり天使だよ、アキ……好きだ」
テスト勉強が上手くいかずに落ち込んでいた気持ちがアキを抱き締めることでほんの少し救われた。他人の体温というのはいいものだ。
「ただいま」
二人から「おかえり」と返事がある。やはりリュウは翻訳アプリを使わずにアキと話しているようだ、俺のスマホは放置されてスリープモードに移行している。
《そういえばアンタ金髪だけど染めてんの?》
「ん? なんや頭見て……髪か? 染めとんで、ほら」
《あ、根元黒い。染髪か。日本人ってみんな黒いの?》
「自分のは天然もんやろ? 珍しいんやろなぁ、自分みたいな白いもん見たことあれへんわ。綺麗やなぁ」
リュウは英語すら出来ないし、アキは日本語を勉強中、アプリを通さず話せるとは思えない……やっぱりお互い勝手に話したいことを話しているだけなのだろうか? いや、気にするな、俺は勉強するんだ。
(明日は理科と英語と数学……理科は直前になってから暗記でどうにかしまそ。とりあえず英語ですな)
英語は総合英語という文法などを重点的にやる方と、コミュニケーション英語というリスニングなどが混じった名の通りコミュニケーション用の英語を重点的にやる方の二種類がある。明日テストがあるのは後者だ。
(リスニング教材確か配られてましたよな、CDで……あったあった。答えの冊子も付いてますな。一回授業でやった分ですな、復習しまそ)
携帯式CDプレーヤーをセットしているとリュウが俺の肩をつついた。
「水月ぃ、百科事典とかあれへん?」
「百科事典? あー……小学生の頃に買ってもらったな。本棚の一番下の段にないか? そんなもんどうするんだ?」
「アキくんと話すんに使お思て」
「ロシア語載ってないと思うぞ? アプリ使えばいいのに」
翻訳アプリは使わないようなのでスマホを返してもらい、机の端に置いた。イヤホンで耳とCDプレーヤーを繋ぎ、ノイズキャンセリング機能の素晴らしさを実感する。これならリュウとアキの会話は聞こえない、集中出来る。
「これがたぬきや、アライグマは……これやな、似とるんがレッサーパンダやアナグマあたりやろか」
「たぬ、き……」
「ほいでこれがキツネ。キツネはロシアにも居ったんちゃう?」
やはりアキが話すロシア語は英語とは発音が違うな。いや、今はそんなことどうだっていい、集中しなければ。
「植物、しょーくーぶーつ」
「しょく、ぶつ」
「せや。花、木、くだもん、野菜、こっから先に載っとるもんみな植物や。んでこっちは動物、生きとるもんや」
「どーぶつ……ぼく、ねこ、すきです」
「そーなん? 俺は犬派やなぁ」
まずい、例文も問題文もほとんど聞き取れなかった。俺のリスニング能力が壊滅的だということしか分からない。
「一通り説明したったで。ほな行くで、リンゴどれや、リンゴ」
「りんご……りんご!」
「おっ、正解や。ほな次、レモン!」
「れもん……?」
「あー、惜しい。これバナナや」
リスニングの例題を読み上げる人は発音がネイティブ過ぎる。もっとカタカナ発音で話してくれないと聞き取れない。
「はぁ……ちょっと休憩。お前ら何してんだ?」
イヤホンを外して振り返るとリュウとアキは百科事典を広げて眺めていた。
「開いたページんあるもん一旦全部名前教えてな、ほいで後からクイズ出すねん。写真ついとるから覚えやすうてええやろ」
「……日本語教えてくれてたのか? めちゃくちゃありがとうだけど、自分のテスト前にすることかよそれが」
「りんご、れもん、ばなな、みかん、はっさく、ぽんかん」
アキは果物が載っているページを広げ、写真を指差しながら拙い日本語で名前を当てていく。一ページ全て当てると得意げな顔で俺を見上げた。
「可愛い……! すごいぞアキ、よく覚えたな。リュウ、ありがとうな」
「動物も結構覚えてんな。次は野菜やろか、海の生きもんがええか?」
「……リュウは面倒見いいよなぁ。カンナのこともよく構ってくれてるし……ちっちゃい弟とか居るのか?」
「俺ぁ一人っ子やで。せやけど親戚ちっちゃいのんばっかでな、俺と歳近いもんとか歳上とか居らんねん。せやからちゃう? 知らんけど」
面倒見のよさの理由が分かった。リュウが幼い子供の相手が得意だからだろうか、リュウに言葉を教わるアキも実際以上に幼く見える。
「……なぁ水月、ちんことかうんことか教えたアカン?」
「ダメに決まってんだろ真剣な顔で何言ってんだお前、せっかく尊敬しかけてたのに……」
「水月の軽蔑の目たまらん……! へへ、ホンマにはやらへんよ。アキくん、野菜行くで。キャベツ、レタス、白菜──」
俺に見下して欲しいからふざけた提案をしたのか? 紛らわしいドMだ。
(アキきゅんわたくしと話してる時より楽しそうですな……)
寂しさなんて感じなくていい、俺は勉強に集中しないといけないのだからアキを構えなくて当然だ。まともな交流が出来ていないのだからリュウとの方が楽しそうで当然だ。
夕方になり、リュウが帰ると言い出した。俺とアキは彼を玄関まで見送りに行った。
「てんしょー、ばいばいです」
「おぅ、ほななアキくん。また明日な水月」
手を振るリュウに対し、アキは両手を大きく広げる。リュウは目を丸くした後くすりと笑い、アキを抱き締めて背をぽんぽんと叩き合った。
「外人さんよぉハグするてホンマなんやね、また今度遊びに来るわ。ほな」
「また明日なー……リュウには十字とかやらないのか?」
《アイツ気に入ったぜ兄貴、俺のマブダチ第一号だ。ハグにも抵抗ないみたいだしな。兄貴全然ハグしてくんねぇから寂しいんだよなー……文化違うってのは分かってんだけどさー?》
アキが何を言っているのかは分からないからリュウがどの程度彼の言いたいことを汲み取っていたのかも分からない。けれど、俺よりはずっと通じ合っていたのだろうというのはよく分かる。
「……俺なんかより、リュウみたいなヤツが兄貴のがよかったよな。ごめんな、顔だけのオタク野郎なんかでさ」
《疲れた顔してんな、ハグしようぜ》
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