冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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弟の話を盗み聞き

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深夜徘徊……深夜と呼べる時間ではないが、夜中に出歩いて連れ戻された理由を理解してくれたらしいアキは俺に抱きついて「だいすき」なんて言ってくれた。

「ォア、アォ、アァアア」

天使過ぎる。いや、天使という名詞に「過ぎる」という言葉はおかしい……今はそんなこと考えている場合じゃない。まずい、脳がやばい。

「にーに? にーに~……」

アッ可愛い。

「くっ……ァ、アキ」

超絶美形の俺と半分同じ遺伝子を持つ、歳下のアルビノ少年。それがアキだ。迂闊だった。満面の笑顔と拙い日本語での親愛の言葉を間近で受けてまともで居られる人間なんて居るのだろうか。

「……? にーに!」

顔だけが全てではないと頭では分かっているが、俺自身ルックスが良くなってから人生が好転したように顔は重要だ。一国に二人と居ないレベルの超絶美形である俺と同等の美少年であるアキの笑顔への耐性は俺にすらない。

(やばいでそ。落とす前に落とされまそ……)

惚れたもん負けなんてよく言うだろう? ハーレムを作っている俺は特に、相手から惚れてもらいたい立場だ。

「にーに、食べるしたいです」

「ん? あぁ、完成はまだだろうけど、一品二品出来てるだろうしつまみ食いしに行こうか」

立ち上がってドアノブを掴む。サングラスをかけたアキが俺の左手を握る。

「……え?」

アキを見つめつつ扉を開けて廊下に出る。アキは俺の手を握ったままだ。歩いても、ダイニングに入っても、俺の手をぎゅっと握っている。

(え……何、何がどったの?)

手を繋いで移動させることはたまにあったが、移動先が分かっているのに手を繋ぐだなんて初めてだ。

《アキ、さっきはちょっと言い過ぎたかも……》

皿を運んでいた義母がアキを見て驚いた顔をした。彼女はぽかんとしたまま俺に視線を移す。

「水月くん、アキに何か言った?」

「え、いや……心配してた、とかは……言いましたけど」

《どうしたのよアキ、何があったの》

俺に聞いても要領を得ないと判断したのか、義母は早々にアキへの質問を始めた。母親がここまで混乱するほど、今のアキの行動は不審なものなのか。

《兄貴、俺のこと心配して公園まで来てくれたんだぜ》

《……みたいね? 居なくなったの気付いたの水月くんだし、探しに出る時もめちゃくちゃ焦ってたし》

《誘拐とかあるワケねぇのにさ、走って探しに来るとかバッカみてぇ。マジで嬉しい。存在自体最近まで知らなかったくせに、誰より俺のこと大事にしてくれてる……超嬉しい、兄貴大好き。俺こんなに大事にされたの初めてだ、日本に来てよかった、兄貴は最高の家族だよ!》

《…………そう。仲良くしてね。暴言吐かずに、大人しく……ニコニコしてるのよ。そうしたらもっと大事にしてくれるから》

義母は皿を運ぶ作業に戻った。

「……ご機嫌だな、何話してたんだ? ふふ……可愛いな、アキ」

先程の説教でわだかまりが出来ていないかと不安だったが、義母と話したアキは楽しそうにしている。彼らの仲は良好だろう。


出来上がった夕飯は確かにいつもより豪勢だ。いつも厳しく俺の摂取カロリーを管理している母が、今日はある限り好きなだけ食べていいと言う。おかわりもたくさんあるらしい。

「……食った後で毒ガス訓練とかします?」

「どういう思考してんのよアンタ」

照り焼きチキンを頬張り、目を閉じてローストビーフを味わう。生来食べることが大好きな俺はテストの出来がよくなかったであろうことなんて忘れて幸福感に浸った。

「はぁ……食った食った、最高だった……」

食後、俺はリビングのソファに深く腰掛けてテレビを眺めた。隣には当然のようにアキが座っている。

(アキきゅんこんな眩しい部屋に居て大丈夫でしょうか)

母も義母もアキが居るからとダイニングやリビングを薄暗くすることはない、食事中も現在もアキはずっとサングラスをかけたままだ。

(食事は目で楽しむものですのに、サングラスなんかかけてちゃ色が分かりにくくなっちゃいまそ)

慣れれば不便ではない程度の暗さにするだけでアキはサングラスを外せるのに、食事の時間だけでも暗くしないかと少し前に提案した時彼女達は揃って自分達が過ごしにくいからと否定した。

「あ、そうだ。アキに渡す物あるんだよ」

友達と遊びに行った土産だと翻訳アプリで伝えてから、ハルが選んでくれたネコ型の傘タグを渡した。

「可愛いだろ、それ」

「かわ、いー……です。Спасибо」

「ネコ好きだし、アキは傘よく使うんだろ? ちょっと来てみろよ」

アキを玄関に連れていき、アキが愛用している日傘の取っ手に小さな猫の飾りを付けてやった。

「傘、です?」

「ああ、店の前に置いた時とかも目印になるだろ」

「かわいー……にーに、だいすき! ありがと、です」

「どういたしまして。ふふ、ありがとう覚えたんだな、すぱしーばのままでも可愛いからいいんだぞ?」

ようやく兄弟らしくなれた。後はどう禁断の恋人になっていくかだが──なんて考えながらアキとの時間を楽しんでいるうち、風呂の時間になった。

「おさきー……お湯、もらう……です?」

「ふふ、そうそう。先にお風呂入る時はそう言うんだ。しかし変なとこから覚えてくなぁ、本に載ってるのより日常会話のが頭に入りやすいのかな」

着替えを持って浴室に向かうアキを見送って数十秒後、俺は部屋を出て浴室に向かった。当然アキの裸を見るためだ。覗きがバレても今の好感度ならなんとかなる、そう考えながら脱衣所の扉を開けようとした時、女の泣き声が聞こえてそっちに気を引かれた。

「葉子おば様……?」

母の声ではない、義母の声だ。そういえば晩酌するとか言ってたな、泣き上戸なのかな? こっちを覗いてみるか。

「そんなに泣いちゃ可愛いお目目が萎んじゃうわよ?」

「だって、だってぇ……アキ、が」

アキの話? これは聞かない訳にはいくまい。アキの着替えシーンは彼が風呂を出た時にもある、こっちを優先しよう。

「水月くんに探されたことっ、すごく喜んでて……こんなに大事にされたの初めてって、言ってて……私、私やっぱりダメな母親だったんだって、分かっちゃった……思い知らされたぁっ」

「葉子……そんなことないわ、あなたは」

「自分勝手なのよ! 普通の家族に憧れて、嫌な家族の居る日本に居たくなくてっ、唯乃の卵子使ってまでロシアで子供作って……アルビノ、で、特別なお世話してあげなきゃいけなかったのに、普通の子と同じようにしたくて……紫外線対策せずに公園連れてって、日焼け……違う、もう、火傷させてっ」

母は義母から目を逸らし、酒を一口飲んだ。俺が見たことのない顔をしていた。

「日焼け止め塗ったから大丈夫でしょって、帽子もあるんだからって叱って、熱い眩しい外出たくないって泣くあの子を無理矢理スクールに通わせて……」

「……でも、結局通うのやめさせたんでしょう?」

「目、潰されかけたら、流石にね。酷いのよ……サングラス取って、割って、ライト当てて……最後は目にペンを刺されたの。ギリギリ逸れて、目の横に軽い怪我しただけだったけど……もし目を潰されてたら、それは私がしたことだったの」

「それは混同し過ぎ。全部悪ガキの仕業よ」

義母は弱々しく首を横に振る。

「普通の子にするのは無理なんだって分かったら、なんか急に……どーでもよくなっちゃって。好きにさせてたの。旦那が夜中に連れ出してもほっといたし、あの子が四年越しにいじめっ子達の顎砕いた時だって……大して叱らなかった」

「顎? へー、やるわねアキくん」

「私はポンコツだから、普通の子にしようと酷いことしちゃった。唯乃ぉ……あなたなら、賢くて強いあなたなら、アキのことアキに合ったやり方で何とかしてくれると思ったの。私の失敗取り返してくれると思ったのぉ……だから、あなたに気に入って欲しくて、アキに余計なこと喋るなって、愛想笑いしてろって……また無理強いしたの。私ホントにダメなのぉ……」

「……私だって子育て失敗したことあるわよ」

俺は失敗されていたのか。

「水月がイジメられた時、気付くのすっごい遅れちゃった」

あぁ……そういう失敗か。びっくりした。

「二人で頑張っていきましょ。どーでもよくなったなんて嘘でしょ? ちょっと疲れてただけよ、ゆっくり休めばいいわ。その間は私が頑張るから」

「唯乃……唯乃ぉ……う、うっ……」

すっかり聞き入ってしまった。アキの着替えを覗きたかったのに、彼はもう着替えを終えて出てきてしまった。

「にーに? 待つ、したです?」

リビングへの扉の前に立っていた俺をアキは自分を待っていたと勘違いしているようだ、

「……あぁ、そうだよ。待ってた。おかえり、アキ」

ほこほこという擬態語が似合うアキを抱きしめ、風呂上がりの温かさを分けてもらった。
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