冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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十人眠れる場所なんてありません

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抱き潰したリュウを責任を持って風呂に入れ、俺の部屋着を着せて寝室に戻った。

「シーツ剥がすぞ~」

汚れたベッドシーツを剥がし、予備のシーツを敷き、綺麗になったベッドにリュウを寝させた。

「リュウ歯磨きしてないな……一日くらいいいかな? 意識ないのにやっちゃ危ないし」

「いいんじゃなーい? あ、俺は泊まる気で来たから着替えも歯ブラシも持ってるよん」

「私は持ってきてないです、貸してください」

「なんで俺が歯ブラシ持ってる前提なんだよ……持ってるけどさ」

急なお泊まりに対応するため、ホテルのアメニティのようなセットは常備してある。レイの家でもそれは変わらない。

「使った歯ブラシとヘアブラシは持って帰れよ。あ、先輩、ちゃんと髪乾かさないと風邪引きますよ」

「俺はいつも自然乾燥だぞ」

「短髪だからって……ダメですよ、乾かしてきてください」

「水月くん、お風呂借りるよ」

「あ、はい! って俺家主じゃない……ま、いいか。レイ寝てるし……」

風呂を上がった後、レイはすぐに眠気を訴えた。今はリュウの隣でぐっすり眠っている。

「このめん結構髪長いよね~」

「後ろだけな。綺麗な紫色なのもあって、ほどいて広げると……ため息出ちゃうな」

腰まで伸びた後ろ髪に手櫛を通しながらシーツの上に薄く広げる。長い髪に美しさを感じるのは人間の本能か何かだと俺は思っている。

「……みっつんみっつ~ん、俺も今は髪ほどいてるよ~? 触る~?」

ベッドの端に座っていた俺の膝の上にハルが乗る。痩身の彼はとても軽く、尻の肉も少ないため太腿に骨がくい込んで少し痛い。

「いいのか? ありがとう。ハルは綺麗な黒髪だよな……日本人の黒髪の理想美を濡烏って言うんだけど、まさにそれだ。青みを帯びた黒髪……干渉色が綺麗に浮かんでる。健康な髪の証拠だよ、艶やかで色っぽい。綺麗だよ」

髪を撫で梳きながら褒めていくとハルは顔を赤くしていった。

「そ、そんなに褒められると思わなかった……って言うか、濡烏って男に使う言葉じゃないけど~?」

「知ってたか。流石、文系の天才。でも仕方ないだろ? 男の長髪を褒める言葉なんて俺は知らないよ」

「そりゃここまで髪伸ばしてる男は少数派だもーん。男のロング、キモがる人も少なくないしね。みっつんはどーぉ? 長い髪」

「好きだよ。見た目に綺麗なのはもちろん、手入れが行き届いてるとその人が繊細な人だってのも分かるしな。ハルは毛先まで真っ暗だし指通りもいいし、手入れは完璧みたいだな」

長い髪を振り乱したり、汗ばんだ肌に長い髪を張り付かせたり、そんな淫らな夜の姿を早く見てみたい。

「……まぁ、痩せすぎだから髪の毛に養分吸われてるんじゃないかって感じもするけど」

「何それ~、妖怪みたいじゃん。えへへっ……あ、もう結構遅いね……夜更かしは肌と髪の大敵だから俺もう寝るね」

「ん、ここでいいか?」

膝の上に乗っていたハルを抱き上げ、立ち上がって反転し、ベッドに寝かせた。これでリュウ、レイ、ハルが並ぶ形となった。

「うん、ありがとみっつん。みっつん達どこで寝んの?」

「……まぁ、考えるよ」

ベッドで眠るのは四人が限界だ。後一人はカンナかアキ……ネザメという選択肢もある。ソファでも一人くらいなら眠れるだろうが、残りはどうしようか?

「みぃくん……」

「ん? どうした、カンナ」

「ん……ねむ、い」

「そっか。歯ブラシあげるから歯磨いておいで」

ベッドの残り一枠はカンナの物となった。

「鳴雷一年生。そろそろネザメ様は眠る時間なのだが、場所はあるか?」

「あ、ミフユさん……場所はもうソファくらいしかないです。話し合いはどうなりました?」

「……ネザメ様を寝かしつけてからで構わないか?」

「あ、はい……それはもちろん」

「少し場所を取るぞ」

ミフユは部屋の隅に置いてあった鞄から何やら黒いビニール製の何かと空気を入れる用のポンプらしき物を取り出した。

「……なんです? それ」

「エアベッドだ。アウトドアや災害時にと開発された製品で、空気を入れるだけで簡易的なベッドになる」

「へー……たまに海に浮いてますよね、そういうフロート」

そういえばネザメの姿が見えない。ミフユに尋ねようかと考えたその時、ネザメが部屋に戻ってきた。どうやら歯磨きと着替えを済ませてきたようだ。

「ミフユ、終わったかい?」

「もう少し…………出来ました。どうぞ、おやすみください、ネザメ様」

エアベッドはいつの間にか人間一人が快適に眠れるサイズに膨らんでいた。ポンプを動かすミフユの手元にエロスを感じてそこばかり見ていたから、この製品の売りだろう膨らむ速さに目が向かなかった。

「うん、おやすみ。水月くんも」

「はい、おやすみなさい、ネザメさん」

ミフユがエアベッドにカバーをかけ、枕を置き、その上に寝転がったネザメに毛布を被せた。

「鳴雷一年生、部屋を暗くしたいのだが……」

「あ、はい。先輩、シュカ、アキ、リビングに行ってくれるか? ミフユさん、電気を消すのはカンナが来てからでも構いませんか?」

「あぁ、手間をかけるな」

「いえ」

「……ミフユ。手を」

「はい、ネザメ様」

肩まですっぽりと毛布に収まったネザメは右手だけを外に出し、ミフユと手を繋ぐと満足そうに目を閉じた。ミフユは繋いでいない方の手でネザメの肩を優しく叩く。

「……ねーむれー、よーいこー……」

聞き覚えのある歌……子守唄だ。お世辞にも上手いとは言えない歌声が可愛らしくて聞き入っているうちにカンナが部屋に戻ってきた。

「おかえり、カンナ。着替え持ってきたか? 俺の服貸すよ。薄手のタートルネックがあるから……行こう」

一旦脱衣所へとんぼ返りさせ、カンナには大き過ぎる俺の服を着た彼をレイの隣に寝させた。

「おやすみ、カンナ」

「おや、すみ……みぃくん、寝な……の?」

「俺はもうちょい夜更かしするよ」

「…………みっつぅ~ん……あのヘタな歌何とかしてよぉ……寝れないんだけどぉ」

カンナ越しにハルが恨めしそうな声で言った。

「ぅ……ちょ、ちょっと待っててくれよ、な? 多分すぐ終わるから……おやすみ、ハル」

ハルの髪を撫でて雑に機嫌を取り、カンナに肩まで毛布をかけた。

「ミフユさん、もう電気消せますよ」

ミフユは俺を見つめて人差し指を立てて口に当てた。静かにしろ、ということだろう。覗き込んでみるとネザメが寝息を立てていた。

「……自分が歌うとすぐに寝てくださるんだ」

「へぇ……」

底が見えないミステリアスな美少年という第一印象がどんどん崩れていく。可愛い人だ。
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