冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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日当たりのいいレストラン

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セイカが昼食を食べている間によく顔を合わせる看護師を探し、彼女にセイカをレストランに連れて行っていいかと聞いておいた。アキは許可がなくとも勝手に連れ出してしまいそうだから、こういう裏方の作業は兄の俺がこなさなくては。

「車椅子久しぶりに見たなぁ……」

病院の名前が入った車椅子をベッドの横に運び、ストッパーをかけて置いておく。セイカはまだ食事中だ。

「誰か近しい人が乗っていたのかい?」

「いえ、小五の時に授業であったんですよ、障害理解とか何とか。坂道での注意とか階段の移動方法とか、習ったはずなんですけどぜーんぶ忘れちゃいました」

「あぁ、そういうのなら僕も習ったことがあるよ。でも僕も全部忘れてしまったな。そういうものだよねぇ」

ははは、と笑い合う俺達の横でミフユは呆れた様子でため息をついている。

「お、食べ終わったか? セイカ」

「ん……待たせて悪いな。お前らだけで食ってきてよかったのに」

「アキが嫌がるからさ。じゃあ、えっと……車椅子に」

「自分で乗れる。一応右足はまだあるんだから」

抱き上げて乗せてやろうと思っていたが、ここはセイカの意思を尊重しよう……と引いたのにアキがセイカをひょいっと抱き上げてしまった。

「へっ……?」

「行くするです、せーか」

見事なお姫様抱っこをされたセイカは呆然とし、アキはスタスタと扉へ向かう。

「まっ、待て待てアキ、車椅子あるから! 車椅子! ほら!」

車椅子を押して追いかけ、座面をぽんと叩くとアキはセイカを抱いたままそこに座った。

「…………車椅子って日本の文化でしたっけ」

「他の国にもあると思うよ。よほど気に入ったんだろう、抱っこしたままにさせてあげたらどうだい?」

「アキぃ……セイカはぬいぐるみじゃないんだぞ? 下ろしなさい。お兄ちゃん二人乗った車椅子押すの疲れちゃうからやだな」

冗談のつもりだったのか何なのか、アキはすんなり立ち上がってセイカだけを車椅子に座らせた。どうやら車椅子の使い方は分かっていたみたいだ。

「せーかっ、せーか」

「……なんだよ」

車椅子を押してエレベーターに向かう。アキは車椅子の肘掛けに手を置いて背を曲げ、セイカの名前を呼んで視線を奪っては楽しげに笑った。

「なぁ……鳴雷、お前の弟なんなの」

「さぁ? 俺もアキの考えてることはあんまり分からない、気に入られたみたいだな」

「……なんで、俺なんか」

病院のエレベーターは広い。五人で乗っても狭さを感じない。

「何……? なんか、ペットみたいな感じ? 鳴雷、ぬいぐるみとか言ってたもんな。なんかそんな、人間以下って、そんな感じで可愛がってんの?」

「……アキはそんな子じゃないよ。セイカは俺が好きな人だから、きっといい人なんだって思って、一旦懐いてみてるだけだ。優しく接してやってくれよ、でなきゃ多分、あっさり離れちゃうタイプの子だからさ」

「お試し期間って訳……? あぁ、そう……悪いけど、俺別にお前の弟とまで仲良くなる気はねぇから」

最上階で降りてレストランへ向かう。想像以上に展望のいいレストランだ、壁が全くない、全面が窓だ、それも窓枠がほとんどない。

「うわ……すっごいな、これ本当に病院のレストランかよ。うわぁ……二千円以下のメニューがない……高校生が来る場所じゃない。ワンコインのコンビニ弁当が恋しい」

「む、案外ロープライス…………ここで食べると無理を言ったのは自分だからな、奢らせてもらおう。鳴雷一年生、どれが食べたい?」

「甘えさせてもらいます……」

俺とアキの二人分頼んだら破産してしまう。俺はプライドを捨てて遠慮すら忘れて素直に奢られることにした。

「……おい、秋風? どうした、急に大人しくなって」

「ここ……眩しい、です。眩しい、痛いです」

「鳴雷、鳴雷……秋風が」

「え? あっ、ここ日当たりいいもんな……そこの席にしようか、ちょっと柱の影になってるぞ」

柱の影が差している席を選び、ちょうど影に包まれる椅子にアキを座らせた。

「そうだ、セイカには説明忘れてたな……アキはアルビノなんだよ。髪も目も自前だ。日光が苦手なんだ」

「…………お前オタクだからコスプレしてんだと思ってた」

「それがアキはアニメ見ないんだよ……残念なことにな。そういう訳だから、たまにこういうことがあるんだ。承知しといてくれ」

「……秋風、傘貸せ」

アキの隣に車椅子を移動させたセイカはアキの手首にかかっていた日傘を取り、開いた。それまでは机に日光が反射していたが、日傘によって日光が遮られアキの手元の僅かなスペースだけ薄暗くなった。

「これでどうだ?」

サングラスを外せる照度に落ちたようだ。初めてアキの目を見たセイカは息を飲んだ。

「ありがとー、です! せーか」

「あぁ……いや、目も自前ってそういうことか……すごいな、真っ赤……瞳孔まで赤いのか。なるほどな」

「……ありがとうなセイカ、俺それ思い付かなかったよ。サングラスかけてると色分かりにくいみたいだし、それじゃ何食べても味気ないよな。本当にありがとう」

「俺は、別に……まぁ、俺もう飯食ったし、傘くらい持っててやるよ」

俺達兄弟から何度も礼を言われて照れた様子のセイカは俺から目を逸らし、傘の持ち手をぎゅっと握り締めた。

「…………手、片っぽでも残っててよかった。じゃなきゃお前に傘差してやれなかったもんな」

「……?」

サングラスを机に置いたアキはセイカと目を合わせてニコニコと笑っている。

「なるほどな……お前も目立つ見た目で分かりやすい生き辛さのある障害者って訳だ、俺に懐いてたのは同族だからか?」

「せーか、はんばーぐ、ちーず、たまご、どっちするです?」

「……そんなややこしいこと考えてなさそうだな、お前。つーかチーズと卵ってなんだよ、ハンバーグは肉だろ。ちょっとメニュー見せろ……え、何、ハンバーグに何か乗ってる、何これ、知らないぞこれ。味どうなんのこれ」

「ちーずぃん? 悩むするです」

「ちーじん……? 中華の何かか? 辛い系か? どれのことだ? えっこれ? 何も乗ってなさそうだけど……」

拙い日本語と豪華な料理への無知さが繰り広げる寸劇をもう少し見ていたいけれど、俺もネザメ達も注文を決めてしまったからそろそろ助け舟を出してやろう。
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