冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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恋人未満セフレ以上くらいでいたかった

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たったの一言だけだが無理矢理ロシア語を覚えてアキに伝えると、上手く伝わったようで抱きついてきてくれた。

《ありがとう兄貴、好き、マジで大好き》

俺の首筋にぐりぐりと頭を押し付け、何か呟いている。かと思えば顔を上げ、俺と目を合わせた。

《でもさぁ、兄貴が変なイタズラしたせいでなんか精神状態が親父と居た時に戻っちまったんだからな……昨日までは何ともなかったのに、今はちょっと反射的に防御しようとしちゃうじゃねーか。兄貴のバカ》

「あー……ごめんアキ、さっきのは付け焼き刃なんだよ。ロシア語習得した訳じゃないから……日本語、お願い?」

《……本当、バカ。驚いて蹴っちまうようなヤツに、なんでこんな優しくしてくれるんだよ。あぁ、クソ、よくないなこれ……依存してる、やばい、一旦頭冷やさないと》

アキは日本語で言い直すことなく独り言のようにロシア語を続け、俺の腕からすり抜けようとした。

「ア、アキ! 待ってくれ、どこ行くんだ」

俺は咄嗟にアキを押さえ付けた。ソファの肘置きに上半身を預けたアキは目を見開いて俺を見つめている。

《兄貴……》

「それ、よく言う言葉だよな。どんな意味なんだ? 全然分かんない、分かんないんだ、アキのこと。どんなことを考えているのか、どんなことを感じているのか、どんなふうに育ったのか……何も分からない、知りたいよ、アキを知りたい」

昼休みにネザメ達と話したことが頭の中心に居座っている。兄として恋人として、アキを理解したい気持ちがもう抑えられない。

「……離す、するです。今、ぼく、嫌です」

「何もしないよ。お兄ちゃんとお話してくれ」

《日本語間違えたかな……翻訳使えよ兄貴》
「…………にーに、ぼく話すする、日本語するです、欲しいです」

「えーっと……翻訳アプリ使ってくれってことか? 分かった。逃げるなよ」

念のため右手でアキを抱き締めたま左手でポケットを探り、スマホを取り出してアプリを立ち上げ、アキの口元にマイクを向けた。

《今は冷静になりたい。これ以上俺に優しくしないでくれ、兄貴のこともっと好きになって、依存しちまう。俺は物事を深く考えるのは嫌いなんだよ、兄貴ともゆるーく付き合っていきたい。どうせ兄貴にとっては十何人の一人なんだし……そんな兄貴に依存したって意味ないのは、分かりきってることだ》

長い文章をちゃんと翻訳出来るのか不安になりつつ画面を見る。

『今は落ち着きたいです。 もう私には優しくしないでください、私はあなたをもっと愛し、あなたに依存します。 物事を深く考えるのは好きではなく、兄と一緒に自由に歩きたいです。 とにかく、私は兄の十何人のうちの一人です……明らかに、そのような兄に頼る意味はありません』

「…………俺に、頼る意味がない? ゃ……あ、ちょっと待て、どういう意味だこれ……もう優しくしないで……もっと愛し、依存する…………これ、どう解釈すれば……」

深く考えるのは好きではない、というのは……俺への恋心で頭がぐちゃぐちゃになるのが嫌だという意味だろうか? 自由に歩きたい、というのはよく分からない。散歩に付き合って欲しいのかな?

「…………アキ、お兄ちゃん……頼りないかな」

好きになりたくない依存したくないだのという言葉は、大好きで依存しているという意味だ。

「俺は、アキのこと好きだ。十一人のうちの一人だなんて、思ったことはない」

依存がいいことだとは俺も思わないけれど、誰かに依存しなければならないほど弱っている時に、依存対象が見つからなかったり依存している自分を認められないのは、より悪い。

「大好きだ」

《翻訳ミスってただろ! 誰が、そんなこと言えなんて……!》

ちょっと暴力を許されただけで、ちょっと母国語で愛を囁かれただけで、これ以上優しくするなと言うなんて……優しさの基準が低過ぎる。兄として恋人として、正しく依存させてやらなければ。

《俺は気楽に生きたいんだ! ツラのいい男とセックスして、ツラのいい友達と遊んで、美味しい飯食って短い人生楽しみたいんだよ!》

「暴れないでくれ、お腹痛いから」

《俺は一人に慣れたままじゃないとダメなんだ! 太陽は俺には熱すぎるんだよ! 俺の世界はもっと冷たいんだ、あの国の夜道みたいに!》

もっと世界は温かいのだと教えてやらなければ。

《やっぱり兄貴は太陽なんだよ、温かくて好きだ、みんなが大好きなんだ、でも俺には、熱い……眩し過ぎる。心を兄貴から離さないと、痛い……》

「アキ……? 一人で泣かないで……ほら、翻訳するから、頭振らないで……」

大声を上げて俺の腕の中から俺に痛みを与えることなく逃げ出そうとしていた時は、アキの動きが激しくて上手く翻訳アプリを使えなかった。けれど、大人しくなった今ならイケる。

《兄貴が……兄貴が、居ないと……寒いよぉ……痛い……寂しい…………こんなのやだ、やだよ、兄貴……一人に慣れさせて、寒さに、慣れさせてよ。兄貴が居ないと生きてけないのなんかやだぁ……胸苦しいの、やだ》

ドクドクと自身の鼓動が速くなっていくのを感じながら画面を見つめる。

『私の兄……兄が居なければ……寒い、痛い……寂しい…………こんなもの嫌だ、嫌だ。兄……一人に慣れたい、寒さに慣れたい、兄なしでは生きてけないのは嫌だ……胸を痛めたくない』

「アキ……そっか、寂しかったんだな。そうだよな……最近セイカのお見舞いに行くようになったとはいえ、やっぱりお兄ちゃんが恋しいんだよなぁ」

《兄貴……? 翻訳出来た? 分かったら離れろよ……今、兄貴の顔見てるだけで息出来なくなりそうなんだ》

俺恋しさに苦しむのが嫌だなんて、やはりアキは俺より少し幼い。その苦痛は離れたって悪化するだけだ、ますます離す訳にはいかなくなった。

「アキ、寂しい、慣れる、ダメだ。今日はお風呂も一緒に入ろうな」

《……は!? なんなんだよ兄貴っ、なんなんだよぉ……クソ、クソっ……兄貴のばか》

「可愛いよアキ、大好きだ。お兄ちゃん出来る限り一緒に居てやるからな~」

アキの前髪をめくって額にキスをする。

(しかし翻訳分にここまで「兄」が出るとは、アキきゅんロシア語でもお兄ちゃんお兄ちゃん言ってくださってるってことですよなふほほっ。海外では兄弟姉妹を名前で呼んでるイメージありましたが、アキきゅんは違うのですな)

ちゅっちゅっと鼻や頬など顔全体にキスをしまくっていくとアキは迷惑そうに眉をひそめたが、口角は少し持ち上がっていた。
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