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積もるばかりの悩み達
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兄らしいことが出来たり、やっぱり兄失格だったり、気分の乱高下に疲れてきた。
「……にーにぃ。寝るです」
「ん? あぁ……しんどくなっちゃったか?」
部屋やプールやサウナを俺に見せて疲れたのか、アキはベッドに身体を横たえた。風邪を引いた弟をはしゃがせて悪化させるなんて、結局俺は兄失格だな。
「あ、電話……もしもしっ? セイカ?」
スマホが鳴っている。病院の公衆電話からのものだ。
『よ、鳴雷。秋風どうだ?』
「うーん……もう治りかけって感じだ。まだしんどいみたいで横になってる。アキ、セイカだぞ、話すか?」
小さく頷いたアキの耳にスマホを当ててやると、俺には聞き取れない言葉での会話が始まった。
《よぉスェカーチカ》
《大丈夫か? 一週間近く熱出てるとか……本当に風邪か?》
《風邪風邪。悪化しやすいんだよ俺》
《……長年のストレスで抵抗力が下がってるんだってな。お前どういう暮らししてたんだ?》
《どういう、ねぇ。まぁ……傭兵になるための訓練をちっちゃい頃からしてたって感じぃ?》
《真面目に答えろよ》
《マジマジ、これガチな話。親父は頭がおかしいミリオタでな、白くて弱そうで寿命短そうな息子を伝説の傭兵にしたいって夢を抱いた。そんな訳で格闘、銃火器の扱い、サバイバル技術を叩き込んだ訳だが……そのストレスでマジで寿命縮まってそうなのウケるよな! ただ色薄くて皮膚ガンのリスク高ぇくらいで、別に身体弱いわけじゃなかったのによぉ! アハハっ》
けらけらと楽しそうに笑っている。俺よりもセイカと過ごしている方が楽しいのだろうか、彼が兄だった方がよかったんじゃないか?
《……ま、早い話が神経質。訓練ってのは時間決まってた訳じゃなく、親父が家に居る間ずっとだ。通りすがりに殴られることも、寝込みを襲われることもあった。対応出来るようになる頃にゃ熟睡する癖が失われてたってワケ》
《今は一緒に暮らしてないんだろ? ちゃんと寝ろよ》
《俺も寝れると思ってたんだけどなー。このめが寝返り打ったり、兄貴が寝ながらなんか気色悪い笑い方する度に身体が反応しちまってよ》
《条件反射消すのはキツいか……》
《そゆこと。ま、何とかなるって。そんな暗い声出すなよ。カワイソーな境遇だったかもしれねぇが俺は超絶美少年だし、今結構幸せだぜ?》
《……お前どこまで本心で喋ってるのか分かんねぇんだよなぁ。兄貴に代わってくれ》
スマホが返された。
「もしもし? 俺だ。代わったぞ」
『お前寝てる時に変な笑い方してるらしいぞ』
「ふぁっ!?」
『……後な、秋風の昔の話聞き出せたぞ』
長々と話していたと思っていたら、そんなことを語っていたとは。ぜひ話してくれとねだるとセイカはこほんと咳払いをしてから語り始めた。
「………………ようへぇ!? ようへいって、あの傭兵? お金もらって戦う?」
事情を聞いた俺はあまりの衝撃に裏返った声で叫んだ。
『俺は傭兵については知らない』
「はぁー……通りで強い訳だ。なるほどな…………あぁクソ、ちょっと疑ってたけど……アキも被虐待児かよ」
『小さい頃からの英才教育ってのはスポーツ選手やアーティストにはたまに聞く話だ。ちゃんとした訓練なら一概に虐待って言うのは……ちょっと待て、もって何だ? 他にもそんな厄介なヤツ引っ掛けてたのかよお前』
「セイカのことだよ」
『……俺はお前の親より勉強とか厳しいタイプの親だっただけだ。あ、そうそう、話しておきたいことがあってさ、秋風とは関係ないんだけど……今言っていい?』
電話先のセイカには見えないのに頷きながら「もちろんだ」と答えた。
『俺……もう退院出来るって』
「本当か!? よかったなぁ」
『……よくない。家……帰りたくない』
「分かってるって。俺の家リフォームしてただろ? ちょうど終わったんだよ、アキが一人部屋もらって俺の部屋元通りの広さに戻ったんだ。いやもうホントちょうどよかった」
母は多分、彼氏を居候させても特に文句は言わないだろう。せいぜい食費代わりに家事を手伝えと言う程度だ。だが、それはセイカ以外だったらの話だ。母は俺を昔虐めた相手としてセイカを認識している、普通に紹介すればバレてしまうだろう。流石の母とはいえ反対するかもしれない。
(偽名を使ってもらって……顔でバレますかな? 自殺未遂の時にもわたくしの治療費請求とかのゴタゴタあったらしいですし。うーむ、カンナたそにヅラどこで買ってるのか聞いて、メカクレヘアに……手足欠損でバレかねませんな。片手片足がない同世代って一地域にそんなポンポン居ませんし……長袖着てもらってタオルとか詰めて紹介の時だけ誤魔化して後は部屋にこもっていただければ……うぅむ)
どうにか母の目を誤魔化す方法を考えてみたが、いい考えが浮かばない。セイカを連れて再びレイの家にお世話になろうかな?
『…………本当に俺のこと匿ってくれんの?』
「ん? うん、フライング同棲。嫌?」
『嫌じゃないっ……! 嬉しい……すごく、嬉し……俺、おれ……なんにも、出来ないのに……』
泣き出してしまったセイカに慰めの言葉をかけながら、俺はセイカ側の親をどう説得するか考えていた。もしセイカを無断で家に連れて帰れば誘拐の罪に問われるかもしれない、セイカの家出くらいで済んでも警察に見つかった時点でセイカが一旦自宅に帰されるのは間違いない。そしてそうなれば俺の母親にもセイカのことがバレる。
(虐待の証拠とか掴んで、訴えられたくなかったら黙ってセイカ様を寄越せ……って脅すとか? うーむ、現実的ではありませんなぁ)
セイカの退院が直前に迫っているというのに、俺の頭はいいアイディアを産み出さない。
(……あ。セイカ様が誘拐とか家出とか騒がれて警察来るとしたら、レイどのの家に泊まるとか絶対ダメでそ。成人男性男子高校生二人を家に軟禁とか報道されちまいまそ。大人は厄介ですなぁ)
考え込む俺の耳に『鳴雷?』と涙混じりの声。
「あっ、ごめん、何?」
『退院……明日出来るから、迎えに来て欲しい』
「分かった。えっと、じゃあ、学校終わった後……昼前になるかな、お昼はファミレスで食べよっか」
『昼前、うん……待ってる』
「お母さんその前に来たりしないか?」
『……俺の世話なんかしたくないだろうし、ギリギリまで病院に預けると思う』
「そっか……分かった、明日の昼前な。アキは多分まだ治ってないだろうから一人で行くよ」
明日と将来を約束し、電話を終えた。俺の頭には悩みが降り積もっていくばかりだ。アキのことも、セイカのことも……テストのことも。
「……にーにぃ。寝るです」
「ん? あぁ……しんどくなっちゃったか?」
部屋やプールやサウナを俺に見せて疲れたのか、アキはベッドに身体を横たえた。風邪を引いた弟をはしゃがせて悪化させるなんて、結局俺は兄失格だな。
「あ、電話……もしもしっ? セイカ?」
スマホが鳴っている。病院の公衆電話からのものだ。
『よ、鳴雷。秋風どうだ?』
「うーん……もう治りかけって感じだ。まだしんどいみたいで横になってる。アキ、セイカだぞ、話すか?」
小さく頷いたアキの耳にスマホを当ててやると、俺には聞き取れない言葉での会話が始まった。
《よぉスェカーチカ》
《大丈夫か? 一週間近く熱出てるとか……本当に風邪か?》
《風邪風邪。悪化しやすいんだよ俺》
《……長年のストレスで抵抗力が下がってるんだってな。お前どういう暮らししてたんだ?》
《どういう、ねぇ。まぁ……傭兵になるための訓練をちっちゃい頃からしてたって感じぃ?》
《真面目に答えろよ》
《マジマジ、これガチな話。親父は頭がおかしいミリオタでな、白くて弱そうで寿命短そうな息子を伝説の傭兵にしたいって夢を抱いた。そんな訳で格闘、銃火器の扱い、サバイバル技術を叩き込んだ訳だが……そのストレスでマジで寿命縮まってそうなのウケるよな! ただ色薄くて皮膚ガンのリスク高ぇくらいで、別に身体弱いわけじゃなかったのによぉ! アハハっ》
けらけらと楽しそうに笑っている。俺よりもセイカと過ごしている方が楽しいのだろうか、彼が兄だった方がよかったんじゃないか?
《……ま、早い話が神経質。訓練ってのは時間決まってた訳じゃなく、親父が家に居る間ずっとだ。通りすがりに殴られることも、寝込みを襲われることもあった。対応出来るようになる頃にゃ熟睡する癖が失われてたってワケ》
《今は一緒に暮らしてないんだろ? ちゃんと寝ろよ》
《俺も寝れると思ってたんだけどなー。このめが寝返り打ったり、兄貴が寝ながらなんか気色悪い笑い方する度に身体が反応しちまってよ》
《条件反射消すのはキツいか……》
《そゆこと。ま、何とかなるって。そんな暗い声出すなよ。カワイソーな境遇だったかもしれねぇが俺は超絶美少年だし、今結構幸せだぜ?》
《……お前どこまで本心で喋ってるのか分かんねぇんだよなぁ。兄貴に代わってくれ》
スマホが返された。
「もしもし? 俺だ。代わったぞ」
『お前寝てる時に変な笑い方してるらしいぞ』
「ふぁっ!?」
『……後な、秋風の昔の話聞き出せたぞ』
長々と話していたと思っていたら、そんなことを語っていたとは。ぜひ話してくれとねだるとセイカはこほんと咳払いをしてから語り始めた。
「………………ようへぇ!? ようへいって、あの傭兵? お金もらって戦う?」
事情を聞いた俺はあまりの衝撃に裏返った声で叫んだ。
『俺は傭兵については知らない』
「はぁー……通りで強い訳だ。なるほどな…………あぁクソ、ちょっと疑ってたけど……アキも被虐待児かよ」
『小さい頃からの英才教育ってのはスポーツ選手やアーティストにはたまに聞く話だ。ちゃんとした訓練なら一概に虐待って言うのは……ちょっと待て、もって何だ? 他にもそんな厄介なヤツ引っ掛けてたのかよお前』
「セイカのことだよ」
『……俺はお前の親より勉強とか厳しいタイプの親だっただけだ。あ、そうそう、話しておきたいことがあってさ、秋風とは関係ないんだけど……今言っていい?』
電話先のセイカには見えないのに頷きながら「もちろんだ」と答えた。
『俺……もう退院出来るって』
「本当か!? よかったなぁ」
『……よくない。家……帰りたくない』
「分かってるって。俺の家リフォームしてただろ? ちょうど終わったんだよ、アキが一人部屋もらって俺の部屋元通りの広さに戻ったんだ。いやもうホントちょうどよかった」
母は多分、彼氏を居候させても特に文句は言わないだろう。せいぜい食費代わりに家事を手伝えと言う程度だ。だが、それはセイカ以外だったらの話だ。母は俺を昔虐めた相手としてセイカを認識している、普通に紹介すればバレてしまうだろう。流石の母とはいえ反対するかもしれない。
(偽名を使ってもらって……顔でバレますかな? 自殺未遂の時にもわたくしの治療費請求とかのゴタゴタあったらしいですし。うーむ、カンナたそにヅラどこで買ってるのか聞いて、メカクレヘアに……手足欠損でバレかねませんな。片手片足がない同世代って一地域にそんなポンポン居ませんし……長袖着てもらってタオルとか詰めて紹介の時だけ誤魔化して後は部屋にこもっていただければ……うぅむ)
どうにか母の目を誤魔化す方法を考えてみたが、いい考えが浮かばない。セイカを連れて再びレイの家にお世話になろうかな?
『…………本当に俺のこと匿ってくれんの?』
「ん? うん、フライング同棲。嫌?」
『嫌じゃないっ……! 嬉しい……すごく、嬉し……俺、おれ……なんにも、出来ないのに……』
泣き出してしまったセイカに慰めの言葉をかけながら、俺はセイカ側の親をどう説得するか考えていた。もしセイカを無断で家に連れて帰れば誘拐の罪に問われるかもしれない、セイカの家出くらいで済んでも警察に見つかった時点でセイカが一旦自宅に帰されるのは間違いない。そしてそうなれば俺の母親にもセイカのことがバレる。
(虐待の証拠とか掴んで、訴えられたくなかったら黙ってセイカ様を寄越せ……って脅すとか? うーむ、現実的ではありませんなぁ)
セイカの退院が直前に迫っているというのに、俺の頭はいいアイディアを産み出さない。
(……あ。セイカ様が誘拐とか家出とか騒がれて警察来るとしたら、レイどのの家に泊まるとか絶対ダメでそ。成人男性男子高校生二人を家に軟禁とか報道されちまいまそ。大人は厄介ですなぁ)
考え込む俺の耳に『鳴雷?』と涙混じりの声。
「あっ、ごめん、何?」
『退院……明日出来るから、迎えに来て欲しい』
「分かった。えっと、じゃあ、学校終わった後……昼前になるかな、お昼はファミレスで食べよっか」
『昼前、うん……待ってる』
「お母さんその前に来たりしないか?」
『……俺の世話なんかしたくないだろうし、ギリギリまで病院に預けると思う』
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