581 / 2,313
七夕を兼ねた誕生日
しおりを挟む
膝の少し上から切断され、太腿しかない左足に義足を取り付ける。かぽん、と大したことなさげにハマった血の通っていない足で立ち上がったセイカはすぐによろけた。
「っと」
支えてやると彼は気恥ずかしそうに俯いた後、恐る恐る顔を上げて「ありがとう」と呟いた。可愛い。
「晩ご飯はちらし寿司とお刺身だぞ、セイカ生魚はイケる口か?」
「さぁ……」
「給食で生のお魚は出ませんからね。ちらし寿司は給食で食べた覚えがあります、塩梅のいい酸っぱさでした」
「俺食ったことないぞ、新メニューか?」
狭雲兄弟の会話を聞いて彼らが俺の想像するような食生活を送ってこなかったことを思い出し、内省した。
(逆に何なら食べてるんでそ……給食で出なさそうなヤツは全滅と考えてよろしいか?)
好きな物も嫌いな物も分からないんじゃこれから先献立を考えるのも大変だな、というところまで考えてから明日以降同居出来るか分からないのだと思い出して落ち込んだ。
「鳴雷一年生、支度を手伝うぞ。酢飯は力仕事だろう、鳥待一年生にでも手伝わせるか」
「ありがとうございます。酢飯は作って置いてるので大丈夫ですよ」
「む、そうか。準備がいいな、偉いぞ。では取り分けるだけか?」
「卵も作ってるし……あ、魚は短冊のままなので切らないとです」
人数分の皿を用意しながら数時間前の行動を思い返し、やらなければならないことを炙り出していく。
「では刺身は自分が作ろう、貴様はちらし寿司の取り分けだ」
「え、でも……」
「自分の方が包丁の扱いに長けている。任せろ」
「……じゃあ甘えちゃいます。お願いしますね、ミフユさん」
ミフユは背が低いから失念してしまいがちだが、俺の方が歳下なのだから甘えたり頼ったりすればミフユは喜んでくれるかもしれない。さぁ、どうだ?
「うむ! 任せておけ!」
喜んでいるみたいだ、背が低いから歳下にまで歳下扱いされてきた悲しい過去があったりするのだろう。
れんこんにニンジン、しいたけが混ざった酢飯を均等に皿に盛り、錦糸卵をかけていく。七夕だからと星型に切ったニンジンと薄焼き卵を皿の縁に並べ、綺麗に出来たなと一人頷いた。
《おぉ……和食は見た目も綺麗だな》
《ロシアの料理は見た目にこだわってないのか?》
《ババア料理クッソ下手だったから俺ろくなロシア料理食ってねぇと思うしアンタらが想像するロシア料理結構な割合でウクライナ発祥だぜ、ウィキ曰く》
《……前半スラング多過ぎてよく分かんなかった。後半は……そんなこと言ったら日本だって天ぷらはポルトガルだしカレーはインドだしラーメンは中国だぞ。つーか自分の国の情報をネットに頼るな》
《スェカーチカがロシアのこといっぱい聞いてくるから調べてんじゃん……俺外界と関わってこなかったから文化も特産品も分かんねぇのに》
《俺のため? そっか……ごめん》
《クソチョロ》
《……? もう少し簡単な言い方してくれ》
セイカとアキがぼそぼそ話し合っている。七夕やちらし寿司について説明してくれているのだろうか。
「みんな、そろそろ座ってくれ。刺身来たぞ」
ミフユが切って綺麗に盛り付けてくれた刺身の大皿が机の真ん中に運ばれてきた。マグロ、サーモン、ハマチ、タコ、イカ、貝柱、イクラ、などなど有名どころばかりだ。
「刺身は一人四切れずつ、イクラは……んー、スプーン二すくい。嫌いなのとか苦手なのがあったら隣近所と交換すること。一方的にあげたりするのは原則ナシな」
「イクラ一粒やるから刺身三切れずつ寄越せ、とかは?」
「もちろんカツアゲはダメだぞ~」
注意事項を説明し終える頃には全員に箸と飲み物が行き渡ったので、アキ以外の者はみんな「いただきます」と言って食べ始めた。
「卵星型に切られとるやん」
「一人一つずつだけどな、構想段階だと卵は全部星型だったんだけど、やっぱり面倒臭くて」
「俺イクラ無理なんすよね……他のならどれでもいいんで誰か交換してくれないっすか?」
「ではハマチかタコのどちらかと」
《これ何? 魚卵? これも生? うぉぉ……凝縮された鮭》
みんな美味しそうに食べてくれているし、会話も盛んだ。ちらし寿司にして正解だったな。
「酢の具合が優しくて美味い、この間自分で作ったら上手く粉を混ぜられなくてただの米と噎せる米の混合物になったんだ……」
「お酢って粉なのかい?」
「お酢は液体だけどすし粉は粉だぞ」
「すしこ……? あ、そうだ歌見さん。しいたけとれんこんを交換しないかい?」
「ほじくり返すのか? いや、遠慮しておく。面倒だし……お付きの者が恐ろしいんでな」
「…………ネザメ様! 全く嘆かわしい!」
酢飯に混ぜ込んだしいたけをほじり出して皿の端に並べていたネザメはミフユにたっぷり叱られた。
「水月、おかわりあります?」
「あるある。おひつ向こうに置いてあるから入れてきな。あ、卵はないな……すぐ焼くからちょっと待っててくれ」
箸を置いてキッチンに向かい、冷蔵庫から卵を取り出す。
「…………私ご飯だけでいいですよ」
「遠慮するなよ、らしくない。もう割っちゃったし」
「らしくないってあなたねぇ」
シュカはため息をついて話すのをやめ、飯櫃にしゃもじを突っ込んで軽くかき混ぜてから皿に盛った。
「……今日みんなにはアキの部屋で寝てもらおうと思ってるんだ、だからさ、俺の部屋で……しよう。二人きりでたくさん。ヤり疲れて寝て、起きたらすぐ学校、楽しそうだろ?」
「ええ、期待していますよ、水月」
その時までは数時間ある、今は意識したくないのかシュカは俺のボディタッチを拒絶して上品に微笑んだ。
「っと」
支えてやると彼は気恥ずかしそうに俯いた後、恐る恐る顔を上げて「ありがとう」と呟いた。可愛い。
「晩ご飯はちらし寿司とお刺身だぞ、セイカ生魚はイケる口か?」
「さぁ……」
「給食で生のお魚は出ませんからね。ちらし寿司は給食で食べた覚えがあります、塩梅のいい酸っぱさでした」
「俺食ったことないぞ、新メニューか?」
狭雲兄弟の会話を聞いて彼らが俺の想像するような食生活を送ってこなかったことを思い出し、内省した。
(逆に何なら食べてるんでそ……給食で出なさそうなヤツは全滅と考えてよろしいか?)
好きな物も嫌いな物も分からないんじゃこれから先献立を考えるのも大変だな、というところまで考えてから明日以降同居出来るか分からないのだと思い出して落ち込んだ。
「鳴雷一年生、支度を手伝うぞ。酢飯は力仕事だろう、鳥待一年生にでも手伝わせるか」
「ありがとうございます。酢飯は作って置いてるので大丈夫ですよ」
「む、そうか。準備がいいな、偉いぞ。では取り分けるだけか?」
「卵も作ってるし……あ、魚は短冊のままなので切らないとです」
人数分の皿を用意しながら数時間前の行動を思い返し、やらなければならないことを炙り出していく。
「では刺身は自分が作ろう、貴様はちらし寿司の取り分けだ」
「え、でも……」
「自分の方が包丁の扱いに長けている。任せろ」
「……じゃあ甘えちゃいます。お願いしますね、ミフユさん」
ミフユは背が低いから失念してしまいがちだが、俺の方が歳下なのだから甘えたり頼ったりすればミフユは喜んでくれるかもしれない。さぁ、どうだ?
「うむ! 任せておけ!」
喜んでいるみたいだ、背が低いから歳下にまで歳下扱いされてきた悲しい過去があったりするのだろう。
れんこんにニンジン、しいたけが混ざった酢飯を均等に皿に盛り、錦糸卵をかけていく。七夕だからと星型に切ったニンジンと薄焼き卵を皿の縁に並べ、綺麗に出来たなと一人頷いた。
《おぉ……和食は見た目も綺麗だな》
《ロシアの料理は見た目にこだわってないのか?》
《ババア料理クッソ下手だったから俺ろくなロシア料理食ってねぇと思うしアンタらが想像するロシア料理結構な割合でウクライナ発祥だぜ、ウィキ曰く》
《……前半スラング多過ぎてよく分かんなかった。後半は……そんなこと言ったら日本だって天ぷらはポルトガルだしカレーはインドだしラーメンは中国だぞ。つーか自分の国の情報をネットに頼るな》
《スェカーチカがロシアのこといっぱい聞いてくるから調べてんじゃん……俺外界と関わってこなかったから文化も特産品も分かんねぇのに》
《俺のため? そっか……ごめん》
《クソチョロ》
《……? もう少し簡単な言い方してくれ》
セイカとアキがぼそぼそ話し合っている。七夕やちらし寿司について説明してくれているのだろうか。
「みんな、そろそろ座ってくれ。刺身来たぞ」
ミフユが切って綺麗に盛り付けてくれた刺身の大皿が机の真ん中に運ばれてきた。マグロ、サーモン、ハマチ、タコ、イカ、貝柱、イクラ、などなど有名どころばかりだ。
「刺身は一人四切れずつ、イクラは……んー、スプーン二すくい。嫌いなのとか苦手なのがあったら隣近所と交換すること。一方的にあげたりするのは原則ナシな」
「イクラ一粒やるから刺身三切れずつ寄越せ、とかは?」
「もちろんカツアゲはダメだぞ~」
注意事項を説明し終える頃には全員に箸と飲み物が行き渡ったので、アキ以外の者はみんな「いただきます」と言って食べ始めた。
「卵星型に切られとるやん」
「一人一つずつだけどな、構想段階だと卵は全部星型だったんだけど、やっぱり面倒臭くて」
「俺イクラ無理なんすよね……他のならどれでもいいんで誰か交換してくれないっすか?」
「ではハマチかタコのどちらかと」
《これ何? 魚卵? これも生? うぉぉ……凝縮された鮭》
みんな美味しそうに食べてくれているし、会話も盛んだ。ちらし寿司にして正解だったな。
「酢の具合が優しくて美味い、この間自分で作ったら上手く粉を混ぜられなくてただの米と噎せる米の混合物になったんだ……」
「お酢って粉なのかい?」
「お酢は液体だけどすし粉は粉だぞ」
「すしこ……? あ、そうだ歌見さん。しいたけとれんこんを交換しないかい?」
「ほじくり返すのか? いや、遠慮しておく。面倒だし……お付きの者が恐ろしいんでな」
「…………ネザメ様! 全く嘆かわしい!」
酢飯に混ぜ込んだしいたけをほじり出して皿の端に並べていたネザメはミフユにたっぷり叱られた。
「水月、おかわりあります?」
「あるある。おひつ向こうに置いてあるから入れてきな。あ、卵はないな……すぐ焼くからちょっと待っててくれ」
箸を置いてキッチンに向かい、冷蔵庫から卵を取り出す。
「…………私ご飯だけでいいですよ」
「遠慮するなよ、らしくない。もう割っちゃったし」
「らしくないってあなたねぇ」
シュカはため息をついて話すのをやめ、飯櫃にしゃもじを突っ込んで軽くかき混ぜてから皿に盛った。
「……今日みんなにはアキの部屋で寝てもらおうと思ってるんだ、だからさ、俺の部屋で……しよう。二人きりでたくさん。ヤり疲れて寝て、起きたらすぐ学校、楽しそうだろ?」
「ええ、期待していますよ、水月」
その時までは数時間ある、今は意識したくないのかシュカは俺のボディタッチを拒絶して上品に微笑んだ。
1
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
どうしてもお金が必要で高額バイトに飛びついたらとんでもないことになった話
ぽいぽい
BL
配信者×お金のない大学生。授業料を支払うために飛びついた高額バイトは配信のアシスタント。なんでそんなに高いのか違和感を感じつつも、稼げる配信者なんだろうと足を運んだ先で待っていたのは。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる