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みんな心配してくれる
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歌見を抱くのは夜と考えていたが、今抱けるなら今抱きたい、それが男ってもんだろう。
「座るぞ」
「はいなパイセン、どこにでも」
酔っていた時とは違い、歌見はちゃんと断ってから俺のベッドに──いや、ベッドを背もたれに床に腰を下ろした。
「……パイセン? ベッドにお座りいただいて構いませんぞ」
「いや、少し話そう」
「ハッ……! 確かに即ベッドなんて品も情緒もない行為でしたな、申し訳ござりませぬ……ではトークでイチャコラ雰囲気高めて参りませう」
歌見の隣に腰を下ろし、緩く開いた足を伸ばして座っている歌見の太腿にそれとなく手を置く。いつもなら払われてしまいそうな行為だが、今日は手を重ねてくれた。
「はわわ……」
感動のあまり変な声が出た。
「……水月、俺にもう一度嘘をついたら別れると……最初の頃に言ったよな?」
あれ? なんか雰囲気高めていける雰囲気じゃなくない?
「は、はい……」
心臓が早鐘を打つ。嘘をついた覚えはないが、嘘つきだと糾弾される未来を思い描いてしまう。
「よし、これは確認だ。水月、俺に嘘をつかず正直に答えてくれ。どうしても話したくないことは……まぁ、答えなくてもいい。思い出すのも辛いこともあるだろうからな」
「は、はぁ……? あの、何をお答えすれば」
「…………狭雲と暮らしていて平気か?」
瞼が勝手に持ち上がっていく感覚があった、目を見開くのを自覚したのは初めてかもしれない。
「何を……言うかと思えば。毎日がエブリデイでそ」
「俺はお前が許しているなら何も言わないと以前言ったな。過去のイジメに関しては今も同じ気持ちだ、当事者同士の気持ちが一番大切だ……けど、今水月がストレスを受けていないかに関しては口出しさせてもらうぞ」
ハルもそうだったが、やはり元イジメっ子との同居は心配される事柄のようだ。
「ストレスなんて受けるはずがあろうございませぬ。かわゆい彼氏と同棲なうなのですよ? 毎日幸せはっぴっぴでそ」
「……お前、ストレスを溜め込むタイプだろ? 顔に合ったイケメン演じたり、おちゃらけて道化を演じたり……水月、水月……お前はきっと誰にも気付かれずに壊れるタイプの人間だ。昔自分を裏切ったイジメっ子と一緒に暮らして平気な訳がない、水月……俺はお前が大切だ、お前にもお前を大切にして欲しい」
「…………心配ありがとうございますでそ。でもわたくし本当に平気なんですよ、セイカ様入院してた時よりずっと調子が良くて、手間も負担もかからないので……パイセンが心配するようなこと、何もないのです」
「水月……昔、裏切られたんだろ? 仲良くしてたのに急に虐められたんだろ……なのに本当に平気なのか? 顔見てて辛くならないのか? たまには俺の家に泊まったりして、休息日を作れ。もちろん木芽や他の彼氏の家でもいいから逃げ場を用意しておかないと……」
「…………昔怖かったイジメっ子が弱々しくなってるのがたまらないんですよ。ですが! パイセンのお家にお泊まりは魅力的ですなぁ、未成年連れ込んじゃってくだされ~」
「水月、真面目に……」
「真面目ですよ、私はずっと真面目です。イジメの件はまぁ確かにちょっとしたトラウマですよ、でもね、だからこそ、今のセイカの世話を焼きたい。昔の恐怖を克服するチャンスなんです、勝ち戦から逃げ走すバカがどこに居ますか。それはそれとしてお泊まりは魅力的なので、是非お願いしますねっ」
ようやく心配を収めてくれたのか、歌見は項垂れて「あぁ」と返事をし、深いため息をついてから顔を上げて口元だけで微笑んだ。眉は困ったように顰められたままだ。
「……? わ……!」
その顔が表す感情が読めず困惑していると太い腕に抱き締められた。歌見はいつの間にか膝立ちになっており、俺をその両腕で強く抱き締めている。
「…………見くびってたみたいだな」
抱擁を緩め、腕の中に収まっている俺を見下ろして今度こそ顔の全てで微笑む。
「しかし狭雲はいつもあんな調子なのか? 身体がアレだから手伝いが出来ないのはいいとして、無愛想にも程があるだろ。お前が気を利かせて肉を切ってやったのに礼の一言もなかったしな」
「うむぅ……今日はパイセンが居て緊張してたのかもしれません。あんまり交流ないですし。それに、今朝に縛ってからずっとそのままなので……」
「縛って……?」
「緊縛でそ。セイカ様の服の下は麻縄でぎっちり締めてありまそ~。身体がきゅうきゅうなるのがお気に召したようで、ほどくかと聞いても首を振るのでそ。なんかポーっとしてるのはずっと股間ぐいぐい乳首すりすり状態だからでそ、きっと」
「…………なんか真面目に考えてたのが馬鹿らしくなってきたな」
「お肉の件に関しましては、セイカ様そういう気遣いをされると惨めになってしまうようでして……むしろ気付かない方がセイカ様の心の安寧のためですので、その辺は……ねっ?」
「うぅん……」
「気ぃ遣ってやってるんだ、世話してやってるんだ、感謝しろってのはよくないと思うんですよ。そりゃふんぞり返って世話され待ちなのもどうかとは思いますが……感謝は要求しちゃダメでそ。なかったらそりゃ寂しいもんですが」
「感謝しろとまでは……いや、言ったか。そんなにキツく考えてた訳じゃないんだが……」
「パイセンのお気持ちはとてもありがたいのですよ、わたくしを想ってのことですし」
「…………ちょっと厳しく見過ぎたか。水月を思うあまり……つい、な」
俺を思うあまりだって? 普段ならそんな歯の浮くような台詞言えないだろうに、別のことに集中しているとサラッと言ってくれるんだな。不意打ちは困る、動悸がする。
「そうですな、もう少し猶予をくだされ。この後セイカ様とお話しましょう、仲良くなればきっと見え方も変わってきますぞ」
歌見はまた眉尻を下げて微笑んだ。
「……だな。早速行くか」
「わたくしとのめくるめく初体験は後回しですかな?」
「ぅ……そ、そういうのは……その、日の高いうちからってのは、あんまり」
「さっきしたじゃあーりませんか!」
「酔ってたんだ!」
「今まで夜以外で何度してきたか数えてやりましょうか!」
「本番はまた別だろ! 夜がいいんだ、夜が! 分かったら行くぞ!」
先に立ち上がった歌見はさっさと部屋を出ていってしまった。夜になれば母も義母も帰ってくるのだが、歌見はその辺り分かっているのだろうか……
「座るぞ」
「はいなパイセン、どこにでも」
酔っていた時とは違い、歌見はちゃんと断ってから俺のベッドに──いや、ベッドを背もたれに床に腰を下ろした。
「……パイセン? ベッドにお座りいただいて構いませんぞ」
「いや、少し話そう」
「ハッ……! 確かに即ベッドなんて品も情緒もない行為でしたな、申し訳ござりませぬ……ではトークでイチャコラ雰囲気高めて参りませう」
歌見の隣に腰を下ろし、緩く開いた足を伸ばして座っている歌見の太腿にそれとなく手を置く。いつもなら払われてしまいそうな行為だが、今日は手を重ねてくれた。
「はわわ……」
感動のあまり変な声が出た。
「……水月、俺にもう一度嘘をついたら別れると……最初の頃に言ったよな?」
あれ? なんか雰囲気高めていける雰囲気じゃなくない?
「は、はい……」
心臓が早鐘を打つ。嘘をついた覚えはないが、嘘つきだと糾弾される未来を思い描いてしまう。
「よし、これは確認だ。水月、俺に嘘をつかず正直に答えてくれ。どうしても話したくないことは……まぁ、答えなくてもいい。思い出すのも辛いこともあるだろうからな」
「は、はぁ……? あの、何をお答えすれば」
「…………狭雲と暮らしていて平気か?」
瞼が勝手に持ち上がっていく感覚があった、目を見開くのを自覚したのは初めてかもしれない。
「何を……言うかと思えば。毎日がエブリデイでそ」
「俺はお前が許しているなら何も言わないと以前言ったな。過去のイジメに関しては今も同じ気持ちだ、当事者同士の気持ちが一番大切だ……けど、今水月がストレスを受けていないかに関しては口出しさせてもらうぞ」
ハルもそうだったが、やはり元イジメっ子との同居は心配される事柄のようだ。
「ストレスなんて受けるはずがあろうございませぬ。かわゆい彼氏と同棲なうなのですよ? 毎日幸せはっぴっぴでそ」
「……お前、ストレスを溜め込むタイプだろ? 顔に合ったイケメン演じたり、おちゃらけて道化を演じたり……水月、水月……お前はきっと誰にも気付かれずに壊れるタイプの人間だ。昔自分を裏切ったイジメっ子と一緒に暮らして平気な訳がない、水月……俺はお前が大切だ、お前にもお前を大切にして欲しい」
「…………心配ありがとうございますでそ。でもわたくし本当に平気なんですよ、セイカ様入院してた時よりずっと調子が良くて、手間も負担もかからないので……パイセンが心配するようなこと、何もないのです」
「水月……昔、裏切られたんだろ? 仲良くしてたのに急に虐められたんだろ……なのに本当に平気なのか? 顔見てて辛くならないのか? たまには俺の家に泊まったりして、休息日を作れ。もちろん木芽や他の彼氏の家でもいいから逃げ場を用意しておかないと……」
「…………昔怖かったイジメっ子が弱々しくなってるのがたまらないんですよ。ですが! パイセンのお家にお泊まりは魅力的ですなぁ、未成年連れ込んじゃってくだされ~」
「水月、真面目に……」
「真面目ですよ、私はずっと真面目です。イジメの件はまぁ確かにちょっとしたトラウマですよ、でもね、だからこそ、今のセイカの世話を焼きたい。昔の恐怖を克服するチャンスなんです、勝ち戦から逃げ走すバカがどこに居ますか。それはそれとしてお泊まりは魅力的なので、是非お願いしますねっ」
ようやく心配を収めてくれたのか、歌見は項垂れて「あぁ」と返事をし、深いため息をついてから顔を上げて口元だけで微笑んだ。眉は困ったように顰められたままだ。
「……? わ……!」
その顔が表す感情が読めず困惑していると太い腕に抱き締められた。歌見はいつの間にか膝立ちになっており、俺をその両腕で強く抱き締めている。
「…………見くびってたみたいだな」
抱擁を緩め、腕の中に収まっている俺を見下ろして今度こそ顔の全てで微笑む。
「しかし狭雲はいつもあんな調子なのか? 身体がアレだから手伝いが出来ないのはいいとして、無愛想にも程があるだろ。お前が気を利かせて肉を切ってやったのに礼の一言もなかったしな」
「うむぅ……今日はパイセンが居て緊張してたのかもしれません。あんまり交流ないですし。それに、今朝に縛ってからずっとそのままなので……」
「縛って……?」
「緊縛でそ。セイカ様の服の下は麻縄でぎっちり締めてありまそ~。身体がきゅうきゅうなるのがお気に召したようで、ほどくかと聞いても首を振るのでそ。なんかポーっとしてるのはずっと股間ぐいぐい乳首すりすり状態だからでそ、きっと」
「…………なんか真面目に考えてたのが馬鹿らしくなってきたな」
「お肉の件に関しましては、セイカ様そういう気遣いをされると惨めになってしまうようでして……むしろ気付かない方がセイカ様の心の安寧のためですので、その辺は……ねっ?」
「うぅん……」
「気ぃ遣ってやってるんだ、世話してやってるんだ、感謝しろってのはよくないと思うんですよ。そりゃふんぞり返って世話され待ちなのもどうかとは思いますが……感謝は要求しちゃダメでそ。なかったらそりゃ寂しいもんですが」
「感謝しろとまでは……いや、言ったか。そんなにキツく考えてた訳じゃないんだが……」
「パイセンのお気持ちはとてもありがたいのですよ、わたくしを想ってのことですし」
「…………ちょっと厳しく見過ぎたか。水月を思うあまり……つい、な」
俺を思うあまりだって? 普段ならそんな歯の浮くような台詞言えないだろうに、別のことに集中しているとサラッと言ってくれるんだな。不意打ちは困る、動悸がする。
「そうですな、もう少し猶予をくだされ。この後セイカ様とお話しましょう、仲良くなればきっと見え方も変わってきますぞ」
歌見はまた眉尻を下げて微笑んだ。
「……だな。早速行くか」
「わたくしとのめくるめく初体験は後回しですかな?」
「ぅ……そ、そういうのは……その、日の高いうちからってのは、あんまり」
「さっきしたじゃあーりませんか!」
「酔ってたんだ!」
「今まで夜以外で何度してきたか数えてやりましょうか!」
「本番はまた別だろ! 夜がいいんだ、夜が! 分かったら行くぞ!」
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