冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
711 / 2,351

夕食前の一悶着

しおりを挟む
母の帰宅に合わせて家に戻ろうとしたのだが、ウッドデッキに未だ多くのセミが乗ったままになっている。死んでいる訳ではない、夜中は鳴かずにじっとしているらしい。ウッドデッキの上でじっとするな、木に行け木に。

「窓開けに行ったら絶対暴れる位置ぃ~……玄関回りましょパイセン」

「……だな」

何となく声を潜めて、足音も殺して玄関へと回るため家と塀の隙間を通る──背後でジジジッ! とセミの悲鳴が上がった。

《兄貴これ苦手なんだ、ふーん……》

「ア、アキ? セミさん離そっ、可哀想だよ、ねっ?」

「そ、そうだぞアキくん、老い先短いセミを虐めてやるな……」

「兄様、行きましょう」

振り返ってアキを見つめながら、彼を刺激しないようジリジリと後退していく俺達を置いて、セイカはホムラに手を引かれてさっさと玄関へ向かってしまった。

「うっ、裏切り者ぉ!」

《ほれほれ》

「イヤァアアアッ!?」

「アキくん! アキくん!? 話せば分かる! 話せば分かる! 話せばっアッアァッ来るなっ!」

「アァアーッ!? 虫は嫌虫は嫌ガサッとしてパリッとしてモニっとしてドロッときてォエッ」

《思ってたより大惨事》

セミを離したアキはケラケラ笑いながらウッドデッキに乗り、他のセミもウッドデッキから投げ捨てると窓を開けて中に入った。

「……吐いた?」

「喉までは来ました……出てはいませんぞ」

「一回ちゃんと怒った方がいいぞ」

「ですよな……」

俺達も窓から入り、食事用の机を拭いておくなどの準備を進めた。

「先輩はこの椅子使ってください」

「ありがとう」

そのうち母が帰宅し、俺は玄関まで彼女を迎えに行って荷物をキッチンに運んだ。

「えーっと、歌見くん? 久しぶりね」

「お、お久しぶりです……」

昼間俺に抱かれて散々喘いだくせに、ノンケ時代の癖は消えないものなのか歌見は母に微笑みかけられて赤面している。

「先輩、随分デレデレしてますなぁ」

「あぁ……お前に似てるからつい。俺女体化モノも割とイケるから」

「母親を息子の女体化呼ばわりするでないでそノンケ予備軍!」

ホムラがソファでセイカに勉強を教わっているのをいいことに、本来の口調で歌見と話していると、母がダイニングに置かれた机の足を指差した。

「昼間窓開けっぱなしにした?」

その机の足にはセミが止まっている。俺が昼間網戸を開けてしまった際に入ったのだろうか、それともさっきアキが開けた時?

「ミ゚ッ」

「水月っ!? しっかりしろ、意識を保て!」

「ほんと虫嫌いねぇ水月は……」

腰を抜かして歌見に支えられた俺は、母が躊躇なくセミを掴んで窓を開け、庭にセミを投げる姿を見た。

「一匹だけよね? さて、支度支度~」

「すごいなお前のお母さん……」

「…………ハッ!? お待ちくだされママ上セミを触った手で飯を作るなどおやめくだされ!」

「ちゃんと洗うわよ!」

「違うのでそ虫を触った手はもうその時点でダメなのでそぉ! もう切り落とすしかないのでそ!」

「ゾンビに噛まれたみたいな感じなのか?」

「あぁもううるさい! じゃあアンタは食わなくていいわよ!」

セミを掴んだ後まだ洗っていない手で頭をスパァンっと叩かれてしまった。坊主にしなきゃならないな、なんて言って笑う歌見と共にすごすごとダイニングに戻った。

「お前のママ上、俺とおそろいになるんだって?」

ソファに座っているセイカが右腕を振りながら笑いかけてきた。

「うわぁああ軽い気持ちで切り落とすとか言ってごめぇん! って、き、聞こえてたの……?」

既に手足を切り落としているセイカのことは頭の片隅にもなかった。この迂闊さが俺の短所だ、セイカが気にしていなさそうなのがせめてもの救いか。

「自分の声の大きさくらいは把握しろよ、あと俺別にそういうネタ平気だから普通に言ってくれていいぞ」

「そ、そう……?」

「ジョーク被せてお前が困るの面白いし」

「イジメっ子魂が抜けてねぇ!」

「…………ぇ? あ……ぁっ……嘘、ぁ、ごめ……ごめんなさい……ごめんなさいぃ」

「うわぁこっちは地雷!? ごめんなさいごめんなさい深い意図はないんですぅ! もうこっちのイジりもイケるかと思って……あっあっ泣かないでセイカぁ!」

慰めるには言葉だけでなくスキンシップも有用だ。撫でたり抱き締めたりするために手を伸ばしたが、その手はアキに払われてしまった。

「にーに、またスェカーチカ泣くするさせるです!」

楽しげに話していたセイカが突然泣き出したのだ、それも俺が大声を上げた直後に。そりゃアキからすれば俺はとても悪いヤツなのだろう。

《秋風? 違う、鳴雷は悪くないんだ、俺が勝手に……いつも、俺が勝手に泣くだけで》

《俺と話しても泣かないじゃん》

《こんな簡単に泣きたくないのに抑えが効かない、前は何があったって泣いたりしなかったのに……感情がちょっとブレただけで、こんな…………だからっ、鳴雷は悪くないから……》

《兄貴が悪くなかろうが兄貴と話すと泣くんだろ?》

《それは……うん…………鳴雷が、鳴雷が大好きだから……だからこそ泣いちゃうっていうか……えっと、とにかく…………お、俺をっ、鳴雷から取り上げないで……》

アキは深いため息をつき、舌打ちをしてセイカを抱えたまま立ち上がり、セイカを俺の方へ軽く突き飛ばした。当然俺はセイカを受け止め、俺にぎゅうっと抱きつく彼の背をぽんぽんと撫でた。

「アキ、乱暴だぞ。それにセミ! あんなに集めたことも、セミ持ってお兄ちゃん追いかけ回したことも、後でしっかり怒るからな」

アキはそっぽを向いたままだ、俺が話しかけているのは自分だということくらい分かっているだろうに。

「はぁ……セイカ、ごめんな。俺配膳手伝わなきゃ。ちょっと離れて……」

「僕がやります。鳴雷さんはどうか兄様をお願いします」

「え、そう? じゃあお願いしよっかな、ありがとうほむらくん。セイカ、席座ろっか」

よく痩せたセイカは硬い椅子に座るとすぐお尻が痛くなってしまうから、俺が座布団を結び付けた特別な椅子がある。彼をそこに座らせ、俺は彼の左隣に座った。

「アキくん、アキくんもそろそろ、座る、しないとな」

「…………」

「おいで?」

アキは歌見の手を取って立ち上がり、空いている席に向かった。

「……ななー、ぼく、左ー、得意するです。ぼく左座るする、なな、当たるするです」

「ん……? 俺の左に座りたいのか?」

アキは角の席に座り、歌見は不思議そうな顔をしながらアキの右隣に腰を下ろした。ホムラと母が料理を運び、いただきますと言う直前に義母が小走りでやってきた。

「いただきまーす」

箸を持ち、まずはサラダを食べようとしたその時、セイカと手の甲同士がぶつかった。俺は右利きでセイカは左手しか持たない、俺が右隣に座れば手同士がぶつかるのは当然のことだった。
さっき左がどうとか話していたのはそのことだったのかな、なんて思いながら左利きのアキを見つめた。
しおりを挟む
感想 549

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

処理中です...