冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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席選びで敗北感

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アイスを食べながら俺はリュウにホムラが今日の夜にはこの家を去ってしまう頃と、そのお別れ会的なものとしてホムラが好きなチョコレートを買いに行こうと話していたのだと説明した。

「ほーん、チョコ……チョコなぁ、確かあの店チョコフェアやっとったで」

薬局やスーパーでお菓子を買い込むだけでは何だか物足りないと思っていたところに、思わぬ有益な情報が与えられた。

「どの店だ?」

「ケーキバイキングとかよぉやっとるカフェや。俺ん家の最寄り駅からちょっと行ったとこにあんねん」

「へぇー……流石、甘いのの情報持ってるんだな」

リュウは飴やラムネなどのお菓子を常に携帯している。今日持っているA4用紙くらいの大きさの鞄にもきっと何かお菓子が入っているのだろう。

「や、俺そういうんはあんま興味ない。効率良ぉ甘いもん摂りたいだけで、水月らが思とる甘いもん好きとはなんかちゃう気がすんねん」

「あ、そう……?」

食べるという行為において効率を求めておきながら、それも甘いものを大量摂取しているくせに太っていないとは何事だ。と俺の中のデブがお怒りだ。

「じゃあそこ行こっか、案内頼むよリュウ」

「……もう一声」

「え? あぁ……チンタラしてないで早く案内しろ、マゾ奴隷」

ホムラにはとても聞かせられない罵詈雑言をリュウの耳元で囁く。彼はゾクゾクと快感を覚えたらしく恍惚とした笑みを浮かべ、甘ったるい声で「はぁい」と返事をした。

「俺外出用に着替えてくるよ、ちょっと待ってて。すぐ終わるから靴とか履いててくれ」

自室で着替えてから玄関に向かう。靴を履き、車椅子を外に出す。義足に靴を履かせたセイカは車椅子を見て顔を曇らせた。

「さ、セイカ、座って」

「……駅までくらい歩ける」

「ダメだ、案外遠いんだぞ? 足痛めちゃうよ」

「でも、ちょっとくらい無理して歩かないと、いつまで経っても歩ける距離伸びないし……無理そうになったらちゃんと言うから、歩かせて」

「ダメだよ、座って」

出来る限りセイカが一人で出来ることは少なくしておきたい。ずっと俺を必要としていて欲しい。

「歩きたい言うてんねんから歩かせたったら? あかんようなったら乗せて押したったらええし、その方が水月も楽やろ。せーか、お医者さんなんて言うてはった?」

「えっ、と……無理しない範囲で運動はした方がいいって」

「アキに付き合って筋トレしてるんだから十分だろ」

「そこまでしてないし……」

「家の中でも結構歩いてるんだからそれで十分だ、やり過ぎはよくない。座れ」

「…………うん」

セイカはバツが悪そうに車椅子に腰を下ろし、振り返って俺を見上げた。

「行くぞ~」

車椅子の重みが心地いい、この先セイカが健康的に太ってこの重みが少し増えると思うと笑みが堪えられない。



電車に揺られてリュウの家のある最寄り駅へ。ここからはリュウを先頭にチョコレートフェアの最中だというカフェに向かう。

「ここや、まだ昼時ちゃうからそんな混んでへんな。前外から見た時はめっさ混んでてん」

「へぇー……中女の人ばっかりだなぁ」

俺がイメージするカフェよりもレストランに近い印象の店の中には女性客の姿しか見つからない。躊躇する俺を置いてリュウが扉を開け、傘を畳んだアキが続く。

「こちらの席へどうぞ」

出迎えた店員に人数を告げると窓辺の席へ案内された。太っていた頃は最奥の席にばかり案内されていた覚えがあるが、痩せてからというもの窓に近い席以外に案内されたことがない。

「ありがとうございます」

窓辺の席に座るのは超絶美形の義務、有名税に近いもの、客寄せになってやろうじゃないか。なんて勝ち誇った気分で店員に笑顔を向ける。

「あ、すいません。もうちょい奥の席にしてもらえません?」

リュウが店の奥を指してそう言った。

「この子光に弱いんですー、手間かけてすんまへんけど、あんまり陽の光来ぉへんとこにしてもらえると助かるんやけども……ええですか? ありがとうございますー」

自分の弟への気遣いで、負けた。たった今まで勝ち誇っていたのに敗北感で胸も頭もいっぱいだ。ボーッとしたまま奥の席へと案内され、店員に礼を言うリュウをただ見つめる。

《天正がお前のために席奥にしろって店員に言ってたぞ。礼しとけ》

「……! てんしょー、ありがとーです」

「ん? おぉ」

せめて窓辺の席に案内されることへの優越感さえ抱いていなければ「俺は気付けない男だな」程度で済んだのに……今からスイーツを楽しむ気にはとてもなれない。

「水月ぃ、どないしたん? 座りぃや」

「あ、うん……」

リュウはさりげなくアキに窓に背を向ける席を選ばせた、ガサツそうなのになぁ……と思いつつ俺も席に着いた。

「何頼むー?」

「チョコだけでも色々あるんですね……あの、天正さん。とろっとしたものはどれでしょう」

「とろっとしたのんがええのん? 生チョコ系やろか、これとか……これちゃう?」

《スェカーチカ、読んで》

《はいはい》

メニューを広げて和気あいあい、俺はまだそこに混ざるつもりには──

「水月、どれする~?」

──生チョコタルトにチョコドーナツ、エクレア、チョコパフェ……とにかくチョコ、チョコ、チョコ、流石チョコレートフェアだ。

「え~、俺何にしよ~」

リュウへの敗北感はどこへやら、すっかり俺も和気あいあいの輪の中へ。

《歯応えちゃんとあるのがいい、どろどろしたの好かねぇ》

《俺お菓子詳しくないんだよ、食感なんか分かんないぞ》

《じゃあ兄貴か天正に聞いてくれよ》

「……鳴雷、天正、あの……秋風、歯応えあるやつがいいって」

「トロトロじゃなくてザクザク系? んー……あ、クランチあるぞ?」

「あとはクッキーくらいちゃうかな、硬いのん。だいたい柔こいでチョコ系て」

ホムラは柔らかいもの、アキは硬いもの、味だけでなく食感にもそれぞれ好みがある。当然のことだけれど、その当然を実感しただけで俺は何だか嬉しくなった。
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