冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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凶器攻撃はいけない

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扉を開け、殴られる痛みを想像しながら身構える。

「よっす~、えーっとぉ……」

顔と手以外が刺青で覆われた、タンクトップ姿の男。彼の黒髪には二本の白いメッシュが入っており、その端正な顔立ちはガーゼや絆創膏によって隠されていた。フタという名らしいサンの腹違いの兄はデニムの尻ポケットからメモ用紙を取り出し、眉間に皺を寄せた。

「口、鳥……んだこれ、ごちゃごちゃしたの……えー、水! 水は読める、ぁ、月も読める。よしよし、えーっと……くちとり……なんとか、みずつき……さん?」

メモ用紙を見せてもらうと「鳴雷水月を連れてこい」と書いてあった。達筆だ、彼の更に兄のヒトという男が書いたのだろうか?

「鳴雷水月ですねこれ……俺の名前です」

「なるかみみつき……へー、難しい名前だなぁー。書くの大変だろ。ま、いいや。えー、てめぇを連れてこいって言われててぇ……なんでだっけ。まぁ多分ヒト兄ぃかサンちゃんのワガママだろ。車乗れ」

「……準備する時間をくれませんか?」

「んー、早めによろ」

シュカやアキと争った時とは違う穏やかな様子に困惑しつつも部屋に入り、ダボッとしたダンスジャージに着替えた。鞄にゴムとローションと玩具を詰め、まだ付き合ってもいないのにこんなものを持参してしまう自分の気持ち悪さに辟易しつつ、部屋を出るも玄関にフタの姿はない。

「……っ!?」

俺は慌ててダイニングに向かった。予想通りフタはそこに居た、セイカを背に庇ったアキと椅子を挟んで向かい合っている。

《性懲りもなくまた来やがったなジャパニーズマフィアが! 兄貴をどうし……兄貴! 兄貴無事か!》

「な、鳴雷っ、大丈夫かって」

「えっ? ぁ、うん、大丈夫!」

アキは当然ながらフタを危険人物と認識しているようだ。セイカは困惑しながらも翻訳をした後、不安そうな顔でアキのシャツを掴んで振り払われ、今にも泣き出しそうになった。

「白いの……ぁー、てめぇ強かったなぁ確か。んだよやんのか? こちとら指折れてんだぞ」

フタの左手の小指と薬指はギプスに包まれている。アキは指を折るような真似はしていないはずだ、ヒトによるか?

「鳴雷……この人、友達か? 秋風……なんか、日本の同志って」

「同志……?」

「……同志? 同志って、なんかアレだろ? 仲間! なんかのドラマで見たわ。んだてめぇいっぺん殴り合ったら仲良くなれるタイプか? 俺割とそうだぜ。いぇーい外人の友達初めて~、よろしくぅー」

どう見ても警戒態勢、いや、迎撃態勢? のアキに対し、フタはセイカの翻訳だけを根拠にずかずかと近寄り──アキの躊躇ない椅子での殴打によって倒れた。

「うわぁあああーっ!? 殴っ、死っ!? ころっ、殺人!? ス、スコップ、スコップ! 庭に埋めなきゃっ……!」

「いってぇ……」

「生きてたよかった! 起きちゃダメです頭思いっきり入ってましたから! じっとして! 頭揺らしちゃダメ!」

《どけや兄貴ソイツ殺せねぇ!》

「アキ落ち着け! 止まれ! どーどー……セイカ、翻訳! 翻訳ぅ! 俺事情説明セイカ翻訳ぅ!」

俺はフタの前に立って彼がもう敵ではなくなったことを、以前彼が何故襲ってきたのかも含めて詳細に説明し、その全てをセイカに翻訳してもらった。

「ふぅ……翻訳量多くてちょっと疲れた。しっかしお前とんでもないことしてたんだな」

「人探しには探すのを頼んだ人間の顔写真も必要だって知った……あの人の兄弟だって分かってれば俺逃げ回らなかったしシュカもアキも蹴られなかったんだよ」

「その節はごめん」

「い、いえ……頭大丈夫ですか? 本当すいません……凶器攻撃はダメだぞアキ」

「…………場にある全てを利用することこそシステマの本懐だってさ」

「嘘おっしゃい! 合気道みたいなもんって俺こないだ聞いたぞ! 凶器攻撃が許される格闘技があってたまるか!」

意外にもフタが相手の立場に立って考えられる人間だったため、以前襲ってきた相手が無遠慮に近付いてきたらそりゃ殴るだろうと正当防衛を認めてもらえたが、椅子を使ったのはダメだと俺がしっかり叱った。アキは叱られたことに納得がいかないようでむすっとしている。

「後さぁ、今調べたんだけど……」

セイカは翻訳を終えた後、何故か俺のスマホを使いたがったので貸していた。

「同志ってマフィアとかギャング的なヤツ指すこともあるらしい……語源っていうか、隠語っていうか、スラングっていうか……勉強不足でごめん」

「セイカのせいじゃないよ、ちゃんと翻訳出来ててもアキそのうち殴ってそうだったし……」

「黒幕の語源が歌舞伎のやつ的な感じ? こないだテレビで見たぜ」

「ぁ、多分そうです……革命とか崩壊とか色々あったからかなぁ、武装集団の主義がしっかりしてて同志って呼び合ってたとか……? 鳴雷、もうちょいスマホ借りてていい?」

「いいぞ」

こんなところでも勉強熱心なんだな。

「金目的で集まってるオレオレ詐欺会社とかじゃねぇんだからよぉ、マフィアとかギャングっててめぇら同士じゃ普通に同志じゃね? かくめーとか主義とか関係なしによぉ」

「家族とか身内とか言いますもんね」

「ねー。さてと、そろそろ頭のクラクラも収まったしぃ」

フタは俺の静止を聞かずに立ち上がり、また無遠慮にアキに近寄った。アキは何も持たず構えもしていないが、一瞬後にフタの顎を蹴り上げる準備と覚悟が済んでいる目をしている。

「こないだは俺が悪かったしさぁ、今回のもまぁ俺が考えなし過ぎたしぃ、まぁ謝るし兄貴にもボコられたからさぁ、許してくんね? 仲直りしよーぜ。友達んなろ友達。えっと……かたわくーん、翻訳頼めるー?」

「俺の名前はセイカですけど……」

セイカが翻訳したフタの言葉を聞いたアキは鋭い眼光はそのまま、フタの左手を掴んだ。握手……と考えていいのだろうか。

「よしよしこれで仲直り。今日から友達な! 名前なんての?」

「秋風、あだ名はアキです」

「アキくんね。俺フタ、よろしくぅー。アキくんこないだアレ、俺の刺青見たがってたよな。銭湯とかサウナで一緒なった外人だいたい刺青見たがるからさぁ、アキくんもそうかなーって思って騙し討ち使っちゃってさぁ、ごめんなー? 今見る? 何もしねぇよ?」

「銭湯とかサウナ入れるんですか!?」

「ヒト兄の弟分がやってる店でさぁ、刺青おーるおっけーなの」

「へぇ……」

レイがタトゥーを入れるかどうか迷っていると言っていたな。もし入れた時のために刺青の先輩としてフタ達に色々聞いておくのもいいかもしれない。
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