冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
802 / 2,300

最後の電話

しおりを挟む
食材やその他をカゴに入れ、レジに並ぶ。サングラスをかけた俺達兄弟は目立つようで周囲の視線を集めてしまう。

(うーむ目立ってますな。あんまり顔ジロジロ見られるのも嫌ですし、かけてない方がいいんでしょうか。ゃ、それじゃカミアどのの放送を見ていた方に気付かれてしまいまそ。マスクとかのが馴染めますかな、目元丸出しじゃ変装にならない気も……うぅむ、悩みますぞ。なんでわたくし有名人でもないのにこんな……超絶美形だから仕方ありませんなぁ! いやー辛い辛い)

おっと、今はレイ以外に悩んでいる場合ではない。

「ひっ……!? んゔぅっ!? んっ、んんっ……!」

悩みを消すためポケットに入っているリモコンを弄り、リュウに挿入しているディルドを稼働させた。突然の振動に驚き、快感を得て、慌てて声を押さえる彼の仕草には癒される。悩みが消えていく。

「母さんからもらった電子マネー結構余ったなぁ、お小遣いとしてもらっとくか。バイト休んでるしちょうどいいや」

「んっ、んんっ、ぅ……水月、水月ぃっ、止めっ、てぇ……」

「……あぁ、忘れてた。そろそろ止めないと歩けないな」

袋詰めの最中、リュウが俺の袖を掴んで限界を訴えてきたのでリモコンを操作し、ディルドの動きを止めてやった。もちろん「忘れてた」というのは嘘だ。

「荷物持ち、やってくれるんだよな?」

「んっ……ぅ、ん。持つ……」

《別に面白ぇもんなかったなー、昼間ちょくちょく行ってるとこみたいに試食させてくれたりしねぇし、その場で立ち食い出来ねぇし……退屈だったぜ》

「ごめんアキ、お兄ちゃんロシア語分かんない。そろそろ帰るするぞ?」

よろよろと歩くリュウに合わせて歩くスピードを落とし、店を出る。店の灯りや街灯があるとはいえ夜道は暗く、色の濃いサングラスをかけたままではろくに前が見えない。俺は仕方なくサングラスを外し、人目を気にしつつ帰路に着いた。

「晩飯作るから適当に待っててくれ。リュウかアキ、どっちでもいいけどシュカとセイカ呼んできてくれるか」

休憩はせずキッチンに立ち、調理を開始。フライパンから立ち上る熱気を浴び、額の汗を拭いつつダイニングの様子を眺める。

「水月達が買い物に行っていた数十分で英語への理解が深まった気がします。狭雲さんは教師に向いてますよ」

「そう……? よかった……ぁ、あのさ、俺の親ちょっと前に離婚したから、実は俺の苗字早苗になったんだ」

「……じゃあ早苗さん?」

「あっ、今は鳴雷の家に世話になってる訳だし、全然そんな、気にしなくていい……呼びやすい方でいいからっ、狭雲に慣れてたらそっちのままで」

「文字数も頭文字も同じですし、正直どっちでもいいですね……」

キッチンからダイニングを見られる我が家の構造、かなり好きだ。将来、彼氏達と住む家を建てることになったらこの造りを採用したい。

《しゅーかとよろしくヤってたみたいだなスェカーチカ。嫉妬しちまうぜ》

「秋風……俺、秋風と鳴雷にも勉強教えてるんだけどさ、二人とも微妙で……俺教えるの下手なんだと思ってた。鳥待が褒めてくれてすごく嬉しい」

《何話してんだよスェカーチカぁ、俺にも構え~》

「……やる気がない人に教えるのはそりゃ捗らないと思いますよ?」

「それだ! 鳴雷も秋風もやる気がないんだよ……! 鳥待はちゃんと説明聞いてくれるし、分かんないところ隠さなくてすごく教えやすい……なるほど、そっか、やる気……やる気ってどうやって出させたらいいんだろ。鳴雷はすぐセクハラ質問したり尻触ったりしてくるし、秋風は体動かしたがるし……ぅうぅ……」

「大変ですねぇ」

…………セイカを悩ませてしまっていたみたいだ、今度からお触りは控えよう。

「よし、晩飯出来たぞお前ら~。皿運ぶの手伝え!」

《秋風、飯運ぶの手伝えってさ》

「そろそろ怠けるのはやめますか。天正さん、立ちなさい」

「ちょお待って、はよ動いたらケツが……んぁんっ!? こっ、し……叩くなや、アホぉっ……軽ぅイってもた。あかん、足震えるぅ……」

シュカが多く食べるだろうから生姜焼きは山盛り作ったし、キャベツも一玉丸々千切りにした。彼氏達に手伝ってもらって運び終え、楽しい時間を過ごした。食事を終えて皿をまたキッチンに運び、洗っているとスマホが鳴った。

「……レイ!」

「このめんから電話来たん?」

「早く出てください、お皿は私達が……天正さんが洗っておきますから」

「なんで俺だけに言い直してん!」

「私手怪我しちゃったので」

「あぁ……ほな俺がやっとくわ」

濡れた手を拭いてキッチンから数歩離れ、スマホを耳に当てる。

「もしもし、もしもし、レイ?」

『もしもし……』

「レイ! あぁ……レイ、あのさ……えっと、元気か? ちゃんとご飯食べてるか?」

『食べてるっす、食べてたせいで……何でもないっす。あの……めっちゃ電話かけてきてたっすよね、なんか用っすか?』

何か用か、だって?

「……っ、お前が、別れたいなんてメッセ送ってくるから! アレは、ぁ……そ、送信ミスか? なんか、仕事関係のとか……? そうだよな、レイ……俺と別れたいなんて、そんな」

『…………ごめんなさい。急でホント申し訳ないんすけど……俺と別れて欲しいっす。合鍵は今度ポストに入れておくっす。クマちゃんは適当に捨てて欲しいっす、中身は複雑で……ガワは可燃っすかね』

「は……? えっ、ま、待って……待って、レイ。本気なのか? 本当に、別れるって……言ってるのか? 今日は四月一日じゃないぞ?」

『本気っすよ。別れてくれるっすよね?』

「……理由を聞かせてくれ」

足に力が入らなくなってきた。ソファにでも座ろう。

『理由……理由、なんか……どうでもいいっしょ。理由話しても俺の意見は変わらないっすし、別れたがってる俺と無理に付き合っててもいいことないっすよ』

「納得出来ないんだよ! 俺の納得なんかどうでもいいって言うのか? ついこの間まで俺に好きって言ってくれてたレイが、将来の約束までしてたお前がっ、こんな何の前触れもなくメッセや電話で別れてくれなんて……おかしいよ、何があったんだよレイ! 会って話したい、明日にでも、頼むよ。時間作ってくれ」

『……嫌っす。もうせんぱいとは会わないっす』

「なんでっ……!?」

ぐす、と鼻を鳴らしたような声が聞こえた。スマホを離したようで微かな音だったが確かに聞こえた、レイは泣いている。

「レイ……? 泣いてるのか? どうしたんだ、なぁ……本当に、俺何かしたかな? 俺の何が嫌になったんだ? 話してくれ、悪いとこ直すから考え直してくれ! 頼むよ……別れたくない、好きだよ、大好き……レイ、愛してるんだ。こんな別れ方嫌だよ、もう会わないなんて言わないでくれ、レイ……」

『……っ、しつこい! 別れるったら別れるの! もう二度と電話してこないで!』

涙混じりの絶叫の後、一方的に通話が切られた。その後何度電話をかけても出てくれず、メッセージを送っても反応は返ってこなかった。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

二本の男根は一つの淫具の中で休み無く絶頂を強いられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...