冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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脅し合い

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セクハラ発言をかました直後の蹴りは、今までで最も強かった。車道まで蹴り出されてしまった。せめて端っこに移動しないと轢かれてしまう。でももう動けない。

「……気色悪い。レイがタイプじゃないのか?」

「けほっ、げほっ、はぁっ、はぁ……俺のっ、ストライクゾーンの広さ……甘く、見るなよ」

「…………そりゃすごい、俺は金髪ピアス以外はダメだ」

道端の石を蹴って遊ぶように蹴り転がされ、向かおうとしていた方とは反対側の車道の端に着いた。これでひとまず轢かれる心配はない。でも歩道の段差に引っかかっているから次に蹴られたら吹っ飛ぶことで衝撃を逃がせずに今まで以上のダメージを受けそうだ。嫌だな……と他人事のように考えていると、スマホが鳴った。俺のではない、元カレのだ。

「……もしもし」

まさかレイが見つかったのか。元カレもそう考えていたのだろう、スマホを耳に当てる瞬間までは俺に向けていた不快そうな表情が消えていた。

「…………? おい、どうした。何言ってる」

『ぎゃああぁああっ!?』

スピーカーにはしていないようだが、断末魔のような絶叫は俺にも聞こえた。相当な大声だったのだろう、元カレは顔を顰めて耳からスマホを離していた。

「……っ、何なんだ。おい、何があった、どうした、レイは……お前誰だ? は……? 英語……じゃない、何語だ。おい……」

この季節のアスファルトは熱いな、火傷しそうだ。犬の散歩は昼間には出来ないな。ネザメのところのメープルちゃんは庭を駆け回っているだろうからアスファルトの熱さなんて関係ないか、金持ちってすごいな……あぁ、まずい、意識が朦朧としている、今は全く関係のないことを考えている場合じゃない。

「…………お前は日本語が分かるみたいだな。一体何なんだ……何? あぁ、そいつらは…………そうか、分かった。すぐ行こう」

スマホをポケットに戻した元カレは酷く不機嫌そうに俺の首根っこを掴んで起き上がらせた、車道に寝転んだのも座ったのも初めての体験だ。

「……お前の彼氏に腕の立つヤツが居るらしいな、レイの捜索を頼んだ連中が全員やられた」

「ぇ……?」

「…………向こうの要求はたった一つ、お前を無事に返すこと。でなければ連中の手足を元の形に戻らないように折る……と、俺より悪どいな。だが……そこにレイも居るらしい。単純だな」

「なっ、ダ、ダメだ! レイっ、レイは渡さない、俺の彼氏達にも手は出させないっ……!」

「……じゃあ止めてみろ」

元カレは俺を見下し、軽く頭を蹴った後どこかへ向かって歩いていく。

「は……? お、おいっ、待て、俺が居ないと、お前の子分どうにかなるって……」

返事はない。どうでもいいのか? ワガママを聞いてくれる子分達を少しも可愛く思っていないのか? とんでもないヤツだ。

(考えてる暇があったら這いずってでも追うのでそ! 何が何だか分かりませんが、彼氏の誰かがレイどのと合流したのなら、彼らが逃げる時間をまた稼がなければ……! 子分達を潰せたのはナイスですが、アイツは無理でそ、生物としてのランクが違いまそ!)

ゴロゴロと転がって歩道に戻り、工場の敷地内に落ちている包丁を拾う。

(立てねぇ……四つん這いなら、何とか。ぁ、無理、右手痛ぇ)

左手で包丁を握ったまま四つん這いで元カレを追おうとしたが、踏まれ続けた右手に力が入らない。俺は仕方なく包丁の柄を咥え、左手をついて右手を浮かせ、四つん這いもどきで歩道を進んだ。

(包丁隠しとかないと、通行人とかに通報されちゃいますな……今んとこ居ないし、いいか。それより元カレさんを見失わないように……あぁ、ヤバい……意識飛びそう。全身痛い、わたくしなんでこんなことしてるんでそ……痩せて綺麗になったから、可愛い男の子達とイチャコラしたかっただけなのに、わたくし……何やって……なんでこんなことに)

痛い。苦しい。暑い。意識が朦朧とする。筋肉どころか骨まで痛めた気がする、またどこかにヒビでも入ったんじゃなかろうか。

「ふぅっ……ふぅっ……」

痛い。痛い。苦しい。痛い。暑い。
よだれで柄が滑りそうだ、汗が目に染みて痛い、元カレは……まだ見える、一本道でよかった。



寂れた工場地帯の一角に狭い駐車場がある。その近辺には高校生くらいの男が何人も倒れていた、気絶させられているようだ。

「…………お前か? コイツらをやったのは」

体力が回復してきて立てるようになった。歩こう。急ごう。元カレはもう駐車場に着いた、入り口のところで誰かに話しかけている。

「そうや! 強いやろぉ俺、多勢に無勢や思われたところをパパパパーンとシバいたってなぁ、大したことあらへんかったわ。そんなコイツらの大将の自分も大したことあれへんねやろなぁ。ほいで、水月はどこや。自分の子分らと引き換えや言うたなぁ、俺」

「…………俺が話したのは関西弁じゃなかった気がするが……鳴雷なら自力で着いてきている」

元カレが近付いてくる。咥えていた包丁を左手に移し、振るう。

「……取引なんてする気はなかったが」

簡単に左手首を掴まれて止められてしまった。元カレは俺の手を背中に捻り上げて包丁を取り上げ、地面に捨てると俺を引きずり、駐車場の真ん中に投げた。

「痛っ、痛たた……」

ドンッと何か柔らかく温かいものにぶつかって止まる。投げられた痛みを押して身体を起こし、背後を見ると、元カレの子分達と見られる男が数人積み重なっていた。

「水月! 水月ぃ、大丈夫やったか? あぁボッコボコやんかぁ、可哀想に……せっかくのべっぴんさんがぁ……」

そんな男達の上に足を組んで座っていたリュウはすぐに俺を助け起こした。

「りゅ、う……? なんで、ここに」

「新しゅう彼氏んなった子に聞いてん! 水月がこのめん取り返しに行ったっぽいって。包丁持ってってんて? アホなことするやろぉ水月はホンマにもぉ!」

新しい彼氏……サンか。下の戸棚から取った包丁なら気付くのは遅れると思ったんだが、俺が出た後すぐにキッチンの整理でもしたのかな。

「…………これをやったのは、お前じゃない……だろ?」

「痛っ!? 痛たっ、痛いて! 頭割れてまう! やめてぇやかーくん!」

リュウが背後から頭を鷲掴みにされ、無理矢理立たされる。

「……お前は前に攫われてたし、今も俺に背を向けていた無警戒っぷり……コイツらをこんなに倒せるとは思えない。これをやったのは誰だ、どこに居る。レイはどこだ、一緒に居ると言っていたよな。嘘か?」

「おっ、俺や! コイツらやったん俺やて!」

「………………足りないな」

元カレはリュウの頭を掴んだまま俺の背後に積み重なった子分達を数えて呟いた。

「……俺に電話をかけてきたヤツはどこに」

「クニちゃん助けっ……ぎゃああっ!? やめっ、やめて! クニちゃん来たじゃん! 水月くん? も居るじゃん!」

この駐車場とは車道を挟んで反対側のシャッターが閉まった建物の前に、いつの間にか黒尽くめの少年が立っていた。彼は男の二の腕を踏みながら手首を掴んでいる。

《無事に返せっつったはずだぜ、ボコボコじゃねぇかクソッタレ。交換条件不成立だ、が、まぁ……半分ってとこだな、繋がりやすいように折ってやるよ》

「ひっ……!? ゃ、やめっ、ぃぎゃああああっ!」

悲鳴と共に男の腕が本来曲がるはずのない方向へ曲がった。
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